目次
求職者が内定を辞退する理由とは?
筆者の経験上、求職者が内定を辞退する主な理由として、「自社よりも志望度の高い企業からの内定が得られた」ことや「内定後に発生した心理的な不安」といったことが挙げられます。ここではそれぞれの理由についての詳細を解説します。
自社よりも志望度の高い企業からの内定を得られた
求職者は、確実に就職をしたい、一日も早く就職先を見つけたいとった気持ちから、志望する企業から内定をもらえなかった場合に備えて複数の企業に応募し、内定を得ることがあります。そのため、「自社よりも志望度の高い企業からの内定を得られた」ことを理由に内定を辞退されることがあります。
内定後に発生した心理的な不安
筆者の経験上、求職者が志望度の高い企業から内定を得られた場合であっても、入社するまでの間に不安が募り、内定を辞退したくなる心理状態に陥ることがあります。こうした心理状態に陥る原因として、応募期間中にネガティヴに感じたことを内定後に思い出したり、内定後にネガティヴな情報を知るといったことが挙げられます。
応募期間中にネガティヴに感じたこと
応募期間中にネガティヴに感じたこととして、「面接時や内定を得るまでのやり取りにおける企業担当者の態度が悪かった」「職場見学をしたときに社風が自分には合わなさそうに感じた」といったことがあります。
内定後にネガティヴな情報を知る
内定後に知るネガティヴな情報としては、インターネットやSNS上で「労働環境が悪い」「離職率が高い」といった書き込みを目にすることなどがあげられます。
内定辞退防止策
企業が行うことのできる内定辞退防止策に関して、選考期間中と内定オファー後それぞれの段階で取り組めることを解説します。
選考期間中の辞退防止策
選考期間中の辞退防止策には、求職者からの好感度を上げるための取り組みと求職者に判断材料を提供するための取り組みがあります。
求職者からの好感度を上げるための取り組み
仮に自社が第一志望の企業でなかったとしても、求職者からの好感度を上げることで自社への志望度を向上できる可能性があります。自社の好感度を上げる要素には、たとえば、経験の浅い従業員でもさまざまな仕事を任される「チャレンジ機会」がある、キャリアアップへの支援制度がある、充実した福利厚生制度があるといったものがあげられます。このような会社の魅力を、具体的に伝えていきましょう。また、求職者のことを心から歓迎しており必要としていると、口頭で伝えるのも志望度を上げる要素となります。
求職者に判断材料を提供するための取り組み
残業の多い月や休日出勤があったり、転勤が多いことなど、求職者にとってのデメリットはあらかじめ伝えておくことで、求職者があとからネガティヴな情報を知り、自社の印象が悪くなり過ぎるのを防止できる可能性があります。このようなネガティヴな情報をインターネット上の書き込みなどで知るよりも、直接採用担当者から求職者へ伝えることで、誠実な印象を与え、信頼感を醸成する後押しにもなります。
内定オファー後の辞退防止策
内定オファー後の辞退防止策のポイントは、求職者とのコミュニケーションを密にする、求職者に入社後のイメージを持ってもらうの2点になります。
コミュニケーションを密にする
前述したように、求職者は内定を得たあともさまざまな理由で不安に陥ることがあります。こうした不安を解消するために、内定オファー後には小まめに連絡するのがポイントです。不安に対して丁寧に説明するほか、配属先の従業員との交流会を設定するなどして、求職者が入社するまでの期間を安心して過ごせるような状況を築いてきましょう。
入社後のイメージを持ってもらう
人はイメージできないことに不安を感じるものです。そのため、求職者が入社後のイメージを具体的に持てるようサポートすることで、不安を解消し、内定辞退を回避する可能性が高まります。具体的には、職場見学会や入社前研修を実施する、入社前にキャリアアップ面談を設けるなどの取り組みが可能です。
内定辞退連絡への対応方法
内定辞退の連絡があった場合に企業が留意すべきことは、印象を悪くするような対応を避けること、翻意を促すための話し合いの機会を設けることです。
電話連絡の場合
求職者から電話で内定辞退連絡があった場合、内定辞退への対応が決まっていないと、即座に対応できないこともあるでしょう。このような場合、必要以上に電話を長引かせると求職者からの印象が悪くなる恐れがあります。そのため、以下のように連絡をくれたことに対する礼を述べたうえで、後日企業から連絡を行うことを申し出るようにしましょう。引き止めに関しては、求職者と直接会ったうえで行うほうがよいでしょう。
返答例
この度は、お電話にてご連絡をいただき、ありがとうございました。
この件に関しましては、後日弊社から改めてご連絡したうえでお話を伺わせていただきたいのですが、よろしいでしょうか。
〇日(2~3日中が望ましい)までには必ずご連絡を差し上げます。
メール連絡の場合
求職者からメールで内定辞退連絡があった場合も、速やかに返信することが重要です。時間が経てば経つほど、求職者の自社に対する気持ちが離れていくからです。引き止める場合は、以下のように、求職者がデメリットに感じていることに対して譲歩可能なことは譲歩することを伝えたうえで、直接会って話をすることを申し出るようにしましょう。
面談依頼の返信文章例
この度は、内定辞退に関する連絡をいただき、ありがとうございます。
差し支えなければ、再度詳しくご辞退の理由などをお聞かせ願えないでしょうか。
〇〇様のご希望をお伺いしたうえで、可能な範囲での対応を検討させていただきたいと考えております。
よろしければ面談のお時間を頂戴したいと思っております。
ご都合のよい日時をお知らせいただけますと幸いです。
ご検討いただけますよう、お願い申し上げます。
また、内定辞退を受け入れる場合には、以下のようにその旨を伝えたうえで、今後の求職者の健闘を応援する気持ちを伝えることが大切です。
辞退を受け入れる返信文章例
この度は、内定辞退のご連絡をいただき、ありがとうございました。
誠に残念ではございますが、〇〇様の御意思を尊重して内定辞退のお申し出を承ることといたしました。
弊社への応募に際して提出いただいた履歴書などの書類に関しましては弊社にて破棄させていただきますことをご了承ください。
最後になりますが、今後の○○様のご活躍を心よりお祈り申し上げます。
内定辞退が起きた後の対処法
内定辞退は自社の採用計画に影響を及ぼします。内定辞退の申し出が学生の就職活動期間の終わりに近い場合、通常の採用活動の延長では人材を採用できなくなる可能性もあるからです。このような場合の対処法として、人材紹介サービスや送客サービスの利用があります。ここでは、それぞれについての詳細を解説します。
人材紹介サービスの利用
人材紹介サービスのなかには新卒採用を対象としたものが存在します。人材紹介業者が、企業の人材要件や採用ニーズに合った新卒人材を紹介するサービスであり、料金は基本的に成功報酬となっています。そのため、企業は自社の求める要件に合った新卒人材を納得のいくまで探すことが可能です。内定辞退が発生することを見越したうえで、あらかじめ新卒採用を対象とした人材紹介を行うエージェントと良好な関係を構築しておくことも大切です。
※人材紹介サービスに関しては、以下の記事をご参照ください
人材紹介・転職エージェントの料金・手数料は?契約の前に知っておくべきこと
送客サービスの利用
人材紹介業者のサービスの一つに送客サービスがあります。これは企業の人材要件や採用ニーズに合った人材を、就職説明会や選考へ動員するサービスです。
人材紹介業者に登録している学生の中から就職先が決まっていない学生や今後就職活動を行う学生を動員するもので、事業者やサービスによって料金体系はさまざまです。一例として、「動員一人当たり●万円」「予約一件につき●,000円」といった形で動員してくれます。採用に関する母集団を再度形成するための手段として活用することができます。
内定辞退を防止する際の注意点
内定辞退の引き止めを行う場合、対応が適切でないと求職者のその後の就職活動に支障をきたしてしまう恐れがあり、企業イメージの低下にもつながりかねません。
引き止めに関しては、「素早く対応する」「ハラスメント的な対応は行わない」「しつこい対応は行わない」ことに注意する必要があります。ここでは、それぞれのポイントについて解説します。
素早く対応する
内定辞退者は、辞退の申し出を行ったあとに、自身の意に沿った就職を実現するための活動を行います。そのため、求職者への返答が遅くなったことで内定辞退に関するトラブルが発生した場合、その後の求職者の就職活動に支障をきたし、迷惑をかけてしまう可能性があります。こうした事態を防止するために、内定辞退の連絡を受けた場合には素早く対応し、最終的な結果を一日も早く確定させるようにしましょう。
ハラスメント的な対応は行わない
昨今、企業が内定を出した学生に対して就職活動を終えるように圧力をかける「オワハラ(就職終われハラスメント)」の存在が問題視されています。オワハラとは学生からの内定辞退を防止するために強引な引き止めを行ったり、過度に連絡をするといった行為の総称です。このような行為を行った場合、自社の企業イメージ印象を悪化させ、結果的にさらなる内定辞退にもつながりかねません。また、脅迫や強要という刑法上の罪に問われるリスクもあります。そのため、企業には紳士的な態度で内定辞退の防止に努めることが求められます。
しつこい対応は行わない
オワハラのような対応でなかったとしても、しつこく内定辞退に対する引き止めを行うこともおすすめしません。就職先の選択は求職者の自由であり、本人の意思に反してしつこく引き止めを行うことは迷惑行為に該当します。また、こうした行為は企業イメージの低下につながる恐れがあります。内定辞退が撤回される可能性がないと明らかになった場合、企業は求職者に了承したことを速やかに伝えることが大切です。
少子化による人口減少が加速している現代社会において、内定辞退はどの企業にも起こり得ることです。今回解説したように、内定辞退に対して不適切な対応を行ってしまうと企業イメージが悪化し、その後の採用活動に支障が生じる可能性もあります。人事部門ではこのようなリスクについて十分に理解したうえで、内定辞退に適切に対応できる体制を構築することが不可欠といえるでしょう。