採用担当者から、求人情報をさまざまな求人媒体に載せているのに求職者からの応募が集まらないなどといった悩みをよく聞きます。実際、求人票の書き方には守るべきルールやポイントがあります。
この記事では、株式会社リクルートが実施した「転職活動者調査」をもとに、求人募集で応募が来ない原因と解決策を、人事組織コンサルティングSeguros、代表コンサルタントの粟野友樹氏が解説します。

求人募集で応募が来ないのはなぜ?【転職活動者調査を解説】

求人募集で応募が来ない原因の1つに、転職者が「不安を感じていること」や「より詳しく知りたいこと」に応えられていないからということが考えられます。そこで、まずは株式会社リクルートが転職活動中の求職者1,040人を対象に実施した「転職活動者調査 第2弾」を参考に、応募が来ない理由と解決策を解説します。

調査結果から、転職者が転職活動中に何を不安に感じ、何をより詳しく知りたいと考えているのかを押さえましょう。

【調査結果】転職者が転職活動中に不安だと感じること

いずれの年代においても不安の上位にあがったのは、「希望する年収を得られる仕事が見つかるかどうか」「転職したいと思える仕事が見つかるかどうか」でした。背景としては、コロナ禍が自らのキャリアを見つめ直す機会となり、自らの望む仕事や年収、働き方を実現させたいと思う人が増えたことが考えられます。

年代別で見た場合、20代、30代では、「勤務場所や勤務時間等、希望の勤務条件で働ける仕事が見つかるかどうか」の回答割合が、40代、50代と比較して多いという結果が出ています。他の年代と比較して、ライフスタイルも加味して就労条件を見ている可能性があると考えられます。

一方、40代、50代では、「年齢によって不利になるのではないか」の回答割合が、20代、30代と比較して多いという結果が出ています。

グラフ_転職者が転職活動中に不安だと感じること

【調査結果】転職者が転職活動で企業に提示してほしいこと

「転職活動中に不安だと感じること」への回答全体では、「募集している職場の具体的な仕事内容やミッション」が群を抜いて多くなっています。こちらも、コロナ禍を経て、自らの望む仕事や年収、働き方を実現させたいと思う人が増えたためではないかと考えられます。

年代別で見た場合、20代、30代では、「勤務時間や休日休暇、リモートワーク実施率等の働き方に関する詳しい情報」の回答割合が、40代、50代と比較して多いという結果が出ています。

グラフ_転職者が転職活動で企業に提示してほしいこと

一方、50代で、「募集している職場の具体的な仕事内容やミッション」の回答割合がほかの年代と比較して群を抜いて多いという結果が出ています。

出典:株式会社リクルート「転職活動者調査 第2弾(2023年6月6日)」

募集で応募が来ない原因と解決策の一覧表

求人募集で応募が来ない原因と解決策を一覧にしました。

項目原因解決策
年収記載している想定年収が曖昧給与の内訳や各種手当・年収事例なども記載する
仕事内容仕事内容が不明瞭仕事内容やミッションを具体的にイメージできるよう心掛ける
勤務条件(雇用条件)雇用条件面で他社との差異がある雇用条件を見直す 働き方に関する詳しい情報を提供する
年齢どれくらいの年齢の人が活躍している組織かわかりにくい組織構成や採用実績など活躍年代がわかる表現を心掛ける
求人媒体求める人材にマッチしていない求人媒体を利用している求人媒体の特徴を理解し自社に最適な媒体を選択する

求人募集で応募が来ない原因と解決策1:年収に関して

本章では、応募を踏みとどまらせている年収表記の原因と応募に結び付く解決策を解説します。

原因:記載している想定年収が曖昧

年収が要因で応募が来ない場合、『記載している想定年収が曖昧』である可能性が考えられます。
先ほど紹介した株式会社リクルート「転職活動者調査 第2弾」の調査内容にもある通り、いずれの年代においても、求職者が転職中に不安だと感じる項目として「希望する年収を得られる仕事が見つかるかどうか」が上位に位置しています。

求人票に記載している年収情報が曖昧で、入社後の想定年収がわかりづらい場合、応募を見送ることも想定されます。

解決策:給与の内訳や各種手当・年収事例なども記載する

求人票の給与欄には、応募者が入社後の自分の年収をイメージできる表記を意識するとともに、給与の内訳に関しても詳細を記述することが大切です。

具体的には、次の3つのポイントを意識してみましょう。

  • 想定年収を具体的にイメージできる年収例を記載する
  • 基本給以外の年収に関わる項目も記載する
  • 手当・昇給・賞与の内訳も詳細を記載する


中途採用は、経験の有無によって年収が大きく変わることもあります。そのため、求職者が入社後に受け取れる年収額を具体的にイメージできるよう、給与欄には月収例や年収例も併記しておきましょう。

【月収例・年収例 記載イメージ】
■月収例
  • 30万3000円 内訳:固定給(25万円/月)+歩合(5万3000円)(中途採用・未経験 2年目:営業職・役職なし)
  • 全営業社員の平均月収40万5600円(20XX年X月実績)

■年収例
  • 年収400万円(25歳 中途採用・未経験 2年目:役職なし)
  • 年収550万円(32歳 中途採用・経験者 5年目:プロジェクトチーフマネージャー)
  • 年収600万円(35歳 中途採用・経験者 7年目:プロジェクトマネージャー)

また、下記項目に関する具体的な金額や想定額について記載することで、求職者は入社後の給与額や給与の内訳をよりイメージしやすくなるでしょう。

賃金形態日給・時給・月給・年俸制 など
基本給正社員募集の場合は原則月額を記載 ※基本給に固定残業代を含む場合は、『固定残業代(○時間分、○万円)を含む。超過分は全額支給』と併記する
定額的に支払われる手当役職手当、技能手当、資格手当、地域手当など
固定残業代「あり」「なし」を表記(「あり」の場合は、時間外労働の有無にかかわらず固定的に支給される手当である旨を明記)
個人の状態、実績に応じて支払われる手当家族手当、皆勤手当など
賞与「あり」「なし」を表記(「あり」の場合は、支給回数、年間の支給合計月数または支給金額(従業員の平均)を明記)
昇給「あり」「なし」を表記(「あり」の場合は、1ヶ月あたりの金額または昇給率を明記)

各種手当や昇給・賞与の内訳も詳細を記載するとよいでしょう。

【各種手当・昇給・賞与 記載イメージ】
  • 昇給年1回(直近実績〇円)
  • 賞与年2回(6月、12月)※昨年度実績:基本給2.5ヶ月分
  • 住宅手当(2万円/月を支給)※1人暮らしもしくは世帯主のみ
  • 結婚祝金(最大5万円※規程有)

求人募集で応募が来ない原因と解決策2:仕事内容に関して

本章では、仕事内容の記載方法が要因となって応募が来ないケースについて原因と解決策を解説します。

原因:仕事内容が不明瞭

応募が集まりにくい要因の1つとして、具体的な仕事内容が伝わっていないことが考えられます。業務内容や労働条件の説明が冗長、社内用語や専門用語が使われており、わかりにくい内容では、応募者は集まりにくいでしょう。

求人情報を作成する担当者と配属部署の担当者が異なるのはよくあることですが、両者の連携がうまくいっていないと、業務の説明が具体性に欠け、仕事内容が伝わりづらくなってしまいます。短時間でも良いので打ち合わせを行い、説明文を現場担当者がチェックするなどのステップを入れ、業務内容や労働条件について、求職者が簡単に理解できるような内容にすることが大切です。

解決策:仕事内容やミッションを具体的にイメージできるよう心掛ける

仕事内容が不明瞭で応募が来ないと想定される場合は、次の2つを意識してみましょう。

  • 仕事内容を具体的にイメージできるようにする
  • 求職者の目に留まるようなタイトルをつける

仕事内容を具体的にイメージできるようにする

まずは、仕事内容や業務ミッションを具体的にイメージできるよう、誰と何をする仕事なのか可能な限り詳細を記載することを意識してみてください。

【業務の記載例】
スマホアプリの仕様書や設計図を作るディレクター、音楽・キャラクター等の素材を作るデザイナーとチームを組み、プログラムを作成してスマホアプリを完成させます。
アプリはiPhone・Android両方で動きますので、開発ツールは「Visual Studio」となります。

他にも営業職であれば、取り扱い商材や顧客層、営業スタイルを記載すると業務に対するイメージが湧きやすくなるでしょう。また、文字数が許せば下記項目についても併記しておくと、求職者はさまざまな観点から業務についてのイメージを描きやすくなります。

  • 配属予定先部署の人数・年齢層・雰囲気
  • 入社後の流れ
  • キャリアプラン
  • 職場の様子がわかる写真

ミッションの訴求については、募集背景に触れる内容を盛り込むのも1つの方法です。募集背景を明記することで、求職者は求められている能力や経験をイメージしやすくなるでしょう。

【募集背景の記載例】
■ 営業職
市場シェアの拡大と新規○○事業の立ち上げを目指す当社では、全国展開を視野に入れた営業力の強化が急務となっています。特に、BtoB営業の経験を持つ方を求めており、顧客との信頼関係を築きながら売上向上に貢献していただける方を募集します。
■ 人事職
急速な組織拡大に伴い、組織全体の人材戦略の見直し・強化に取り組んでいる弊社では、社員のキャリア開発や成長をサポートするために、新たに人事ポジションをお任せできる方を募集します。特に、研修プログラムの企画・運営に関心のある方を歓迎します。

求職者の目に留まるようなタイトルをつける

求人募集を掲載する際は、求職者の目に留まるようなタイトルをつけることも大切です。魅力的なタイトルをつけるポイントは、下記のようなものがあります。

  • 採用したいターゲット(人物像)を明確にする
  • 自社の魅力・強みを明確にする
  • 求職者のニーズを考える
  • 求人募集へ至る背景と目的をまとめる

限られた文字数にすべての項目を組み込むのは難しいですが、タイトルによって求職者への訴求に差が生じる場合もあります。求職者の視点を意識しながらタイトルを考えてみましょう。

求人募集で応募が来ない原因と解決策3:勤務条件(雇用条件)に関して

本章では、勤務条件(雇用条件)が要因となって応募が来ない場合の原因と解決策について解説します。

原因:雇用条件が他社と比較すると自分の希望に合わない

求職者は労働条件(給与・手当、休暇、福利厚生など)など、さまざまな観点を比較検討し、自分の希望条件に合った企業に応募しようと考えるでしょう。

数多くの企業の中から自社を選んでもらうためには、求人媒体(Webサイト)や求人情報誌などを用いて他社の求人情報を把握し、自社の募集条件が他社に比べて求職者に魅力的に見えるか確認する必要があります。

解決策:雇用条件を見直す・働き方に関する詳しい情報を提供する

求人募集を行っている企業は多数あります。そうした中で求職者からの応募を集めるために雇用条件は重要な要素となります。

求職者は、職種や業務内容で求人募集を探し、さらに複数企業を絞り込む場合、給与・賞与、各種手当、勤務条件、福利厚生などを比較検討して募集条件が良いものから応募していくことが想定されます。他社の雇用条件などと比較しながら条件を決定していくと良いでしょう。

また、株式会社リクルート「転職活動者調査 第2弾」では、「転職活動において企業に提示してほしいこと」を問う設問において、「勤務時間や休日休暇、リモートワーク実施率等の働き方に関する詳しい情報(全体:14.1%)」という回答が2番目に位置しました。特に20代に関しては、およそ4人に1人(23.5%)と他の年代と比較して高い回答率を示していました。

働き方などの情報は求人広告などでは詳細が伝わりきらない場合もあるため、応募を見送られてしまう可能性もあるでしょう。そのため、企業は、働き方に関する詳しい情報を採用サイトや面談、広報などさまざまな場や機会を通じて提供する姿勢も必要だと考えられます。

求人募集で応募が来ない原因と解決策4:年齢に関して

本章では、年齢がネックとなり応募をためらう原因と解決策を解説します。

原因:どれくらいの年齢の人が活躍している組織かわかりにくい

どれくらいの年齢の人たちが活躍している組織なのかわかりにくい場合、求職者は応募をためらう可能性もあります。
株式会社リクルートの「転職活動者調査 第2弾」の調査内容でも全体の約8.4%の求職者が「年齢のよって不利になるのではないか」と懸念を抱いています。特に、年齢層が高くなるにつれ、その割合は高くなる傾向が見られます。反対に若年層の場合、自分と同年代の社員が在籍しているのか気になる方も多いかと思います。

本調査では、40代・50代は、自身の年齢が応募意向に影響している様子がうかがえます。また、若年層に関しては、活躍社員の年齢層や組織構成が不明瞭なことで、組織の雰囲気がわかりにくくなっている点が不安材料となり、応募を見送る・ためらうことになっていると予想されます。

解決策:組織構成や採用実績など活躍年代がわかる表現を心掛ける

上記原因を取り除き、求職者の不安を取り除くためには、組織構成や採用実績など活躍年代がわかる表現を心掛けることが大切です。また、採用ターゲットに合わせて、ターゲットに近い層をいつ頃採用したのかを記載するのも1つの方法です。

他にも、活躍している社員のインタビュー記事や写真などを記載するなど、活躍している年代がわかる情報を公開するのも良いでしょう。

なお、雇用対策法では、「事業主は労働者の募集及び採用について、年齢に関わりなく均等な機会を与えなければならない」と定められており、長期勤続によるキャリア形成を図る観点から、若年者等を期間の定めのない労働契約の対象として募集・採用する場合等例外事由に該当する場合等をいて原則として、年齢制限の禁止が義務化されています。
年齢に関する表記は、年齢差別に該当する表現にならないよう、注意しましょう。

参考:厚生労働省のホームページ(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/topics/tp070831-1.html)

求人募集で応募が来ない原因と解決策5:求人媒体に関して

応募が来ない理由には、利用中の求人媒体の選定が影響している可能性があります。本章では、求人媒体が要因となって応募者が集まらないケースについて原因と解決策を解説します。

原因:求める人材にマッチしていない求人媒体を利用している

求人媒体によっては、特定の業界に特化した求職者を集めるものがあり、媒体ごとに集まりやすい求職者層が異なることがあります。
特定の求職者層を集める求人媒体は、求職者が自分の希望に合った企業を見つけやすく(発見しやすく)、求職活動を進めやすいというメリットがあります。

そのため企業は自社が求める採用ターゲットをもとに、最適な求人媒体を選択する必要があります。

解決策:求人媒体の特徴を理解し自社に最適な媒体を選択する

自社が求める採用ターゲットから効果的に応募を募れる媒体を選ぶためには、各求人媒体の特徴を理解することが大切です。
求人媒体は、主にWeb媒体と紙媒体の2つがあります。
Web媒体は、インターネット上に公開されている求人広告サイトなどに自社の求人情報を掲載するスタイルです。多くの求職者の目に留まりやすく、掲載手続きもインターネット上で完結できる手軽さが魅力です。
一方紙媒体には、求人情報誌やフリーペーパー、折り込みチラシ、新聞の求人広告枠などがあります。特定の地域に居住する人材にアプローチしたい時、効果が期待できるでしょう。

Web媒体・紙媒体どちらにも、募集職種やエリア、年齢層、ポジションなど特定の求職者・企業に限定しない総合型と、一部の領域やレイヤーに限定した特化型があります。

専門性の高い職種の採用に取り組む場合は、特定の業界や職種に特化した媒体の利用がおすすめです。また、若年層の採用に取り組む場合は、20代や第二新卒の登録者・読者が多い媒体を探してみましょう。

このように、一口に“求人媒体”といっても、媒体ごとに特徴が異なります。各媒体の特徴を把握・理解した上で、採用ターゲットにマッチした媒体を選択しましょう。

応募や内定辞退をされてしまう場合の対応策

求人募集をしてようやく応募や内定があっても途中で辞退をされてしまう場合は、歩留まりを上げることも検討してみましょう。辞退する理由は、下記の通りさまざまな理由があります。

  • 採用担当者(面接担当者)の対応を悪く感じた
  • 採用担当者からの連絡が遅い
  • 先に他社から内定が出た
  • 志望度が高まらなかった
  • 入社への不安を感じた

せっかくの応募や内定を採用につなげるためには、丁寧かつスピード感のある対応を心掛ける必要があるでしょう。

応募者は、複数の企業からアプローチを受けている、複数企業の選考を同時に進めている、などの可能性も考えられます。そのため、こまめに連絡を取り、状況に応じて選考期間を長引かせない選考フローにすることも検討してみるとよいでしょう。

内定者に対しては入社前に研修や社内見学会、親睦会など、会社のことを知れたり、社内のメンバーと交流できたりする機会を設けるのもよいでしょう。
不安が払しょくされたり、入社意欲が高まったりすることで、辞退する可能性を軽減できるかもしれません。

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*厚生労働省「人材サービス総合サイト」における無期雇用および4ヶ月以上の有期雇用の合計人数(2021年度実績)2022年6月時点
**登録者数:約135万4,000名(2021年度実績:2021年4月1日~2022年3月31日の間に申し込みをいただいたサービス登録者数)

監修者
社会保険労務士法人 岡 佳伸事務所
岡 佳伸(おか よしのぶ)氏
大手人材派遣会社、自動車部品メーカーなどで人事労務を担当した後に、労働局職員(ハローワーク勤務・厚生労働事務官)としてキャリア支援や雇用保険給付業務、助成金関連業務に携わる。現在は開業社会保険労務士として活躍。各種講演会講師および記事執筆、TV出演などの実績多数。特定社会保険労務士、キャリアコンサルタント、1級ファイナンシャル・プランニング技能士。

アドバイザー
組織人事コンサルティングSeguros / 代表コンサルタント
粟野 友樹(あわの ともき)氏
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。

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