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採用力とは
「採用力」とは明確な定義があるわけではありませんが、著者の見解としては、一般に企業が求める人材を採用するための包括的な採用計画や実行力のことを指します。自社の魅力を明確にしたうえで、求職者に向けて情報を発信し、積極的にアピールすることが重要となります。人材戦略に基づく採用計画の立案、採用活動、人材の受入れから育成、定着化施策など、さまざまな知識や技術が必要となります。
採用力が高い企業の特徴
採用力が高い企業にはどのような共通点があるのでしょうか。以下に筆者の考える3つの特徴を紹介します。
採用の目的・目標が明確
採用力が高い企業は、採用の目的と目標が明確です。採用の目的とは、たとえば、既存業務の人員が不足しており、その補充のために採用するのか、新規事業や業務を担う即戦力人材を採用したいのか、将来の幹部候補生や新卒採用など、育成を前提とした採用なのかといったものがあります。
これらの目的は将来の事業展開・ビジョンなど、長期的な視点に基づいている必要があります。採用力が高い企業は、この点も明確です。さらに、これらの人材を、どの部署にいつまでに何名採用するかなど、具体的な目標が決まっている点も特徴といえます。
求める人材像が明確
採用力がある企業は、採用したい人材の要件や人物像を明確に具体化できている特徴があります。自社にはどのようなスキルを持った人材が必要なのかを事業計画と現状を把握して、求める人材の具体的な人物像を言語化しておくことが必要です。
自社の強み・魅力の発信
採用力がある企業は、仕事内容や待遇面だけではなく、競合他社にはない自社独自の魅力を発信しています。まず自社の強み・魅力を整理し、言語化すること、次にアピール方法を工夫することが必要です。
強み・魅力の言語化には、全社横断のプロジェクトを立ち上げ数カ月の時間をかけて実施するケースが多いようです。採用活動に活用するには、ホームページ、SNSなどの媒体を使って発信することはもちろん、発信方法も画像や動画、投稿へのコメントなどを使って、多様な方法を試行錯誤しています。これらの活動を地道に続けることで、求職者にまずは自社への興味・関心を持ってもらうことが大切です。
採用力を高める際のチェックポイント
採用力を高めるための方法について、段階ごとに8つのチェックポイントを紹介していきます。
採用手法の見直し
人材がなかなか集まらない、母集団形成ができない場合には採用基準の見直しを行い、高すぎる合格基準や本当に必要な要件を改めて検討し直しましょう。また、採用方法もさまざまありますが、メリット、デメリットもあるため採用したいターゲットに合わせて自社に最適な手法を検討してみるとよいでしょう。
採用市場・競合他社の分析
常に変化していく採用市場の動向に目を向けておく必要があります。条件がよい労働条件を提示している競合他社の求人情報と比較検討し、自社の訴求ポイントを設定することも必要です。企業イメージ、強み、知名度など競合他社の魅力を分析して継続的な取り組みを行っていきましょう。
職場環境の改善
企業への入社を決めるとき、求職者が重視するポイントは給与、待遇、福利厚生、勤務条件などの労働条件があります。また、近年広まってきたリモートワークを活用した勤務体系なども大切なアピールポイントとなります。職場環境の改善に取り組むことで、働きやすい環境が実現し、自社全体のイメージアップが期待できます。
採用計画の立案
採用計画を立てる際に重要なのは、採用の目的を明確にすることです。採用によって、何をどう実現したいのかを具体的に考えることで、必要な人材の人物像が浮かび上がってきます。次にどのようなスキルを持った人材をいつまでに何名採用する必要があるのかを明確にします。実際に採用した人材が働く現場に十分なヒアリングを行いましょう。現場と連携を取りながら採用担当者と意見をすり合わせることが重要です。採用の目的・人物像を十分に確認しすり合わせをしておくことで、採用後のミスマッチを防ぐことに繋がります。
母集団形成
母集団形成とは自社の求人に対して選考を希望する人材を集めることです。自社に興味関心を持つ人材を広く集めることで、自社が求める人材を確保できる可能性が広がります。
主な方法として、人材紹介、求人広告、合同企業説明会、マッチングイベント、SNS、リファラル採用と母集団形成にはさまざまな手法がありますが、メリット・デメリットを十分に検討し、自社に合った手法で行いましょう。
※母集団形成に関しては、以下の記事をご参照ください
※リファラル採用に関しては、以下の記事をご参照ください
リファラル採用が失敗する、ありがちな理由。成功させるポイントを紹介
書類選考
書類選考では策定した採用戦略に沿って書類の見るべきポイントをあらかじめ確定し共有しておきましょう。誰が選考しても同じ結果になるように、採用したい人物像の具体的な必須条件、経験やスキルの選考基準を決めておくことが重要です。書類選考はあくまで最低限の選考過程として捉え、候補者と会う機会を作りましょう。
面接
書類選考と同様に面接官が複数いても、面接官によって結果が異ならないように、同じ選考基準、評価項目で面接に臨みましょう。面接の目的によって、1次面接は人事担当者、2次面接は実際に配属される受入れ部署や現場担当者に設定する方法もあります。書類選考では分からない求職者の傾向や特徴なども見ることができるでしょう。
コロナ禍でオンライン面接が普及し、1次面接はオンライン、2次面接は対面と求職者の負担を考慮しつつ、オンラインでは確認できなかったポイントを対面の面接で判断する方法を取っている企業も多いようです。
内定者フォロー
内定者フォローの目的は企業によりさまざまですが、共通しているのは「入社後の意欲喚起」を行うことです。内定を出してから入社までの期間、自社に対して高い志望度を維持してもらうための施策といえるでしょう。
具体策としては人事との面談、先輩従業員との面談、内定者懇親会などを実施している企業が多いようです。また、定期的に電話やメールで連絡することもあるようです。いずれにしても、企業が内定者に入社して活躍してもらいたいという意思表示をして心理的安全性を担保する目的があります。
労働力人口の減少が続くなかで、企業が求める人材を確保するためには、自社の存在価値を明確に表現し、企業価値を高めることが重要です。採用力は企業の大きさに関係なくどのような企業でも高めることができます。ポイントは定期的に採用活動の成果や手法について検討を重ね、採用戦略の見直しをすることです。そこで挙がってきた課題や改善点を洗い出し、次の採用活動に活かします。このPDCAサイクルを続けることで、企業の採用力がブラッシュアップされ、よいサイクルが生まれるはずです。