企業が人材を採用する手法の1つに「人材紹介」があります。
人材紹介とは、企業が求める人材を人材紹介会社が紹介するサービスのことを指します。
今回は、人材紹介のサービスの仕組みや利用にあたって発生する手数料、利用することで得られるメリットなどを人事組織コンサルティングSeguros、代表コンサルタントの粟野友樹氏が解説します。

人材紹介の仕組み

人材紹介は、求職者と人材を採用したいと考える企業との間に介在し、双方の活動を支援するサービスのことを指します。
求職者に対しては、希望にマッチする求人の紹介や応募書類の添削、面接選考対策など、転職活動に関するサポートを提供します。人材を採用したいと考える企業に対しては、人材紹介会社が保有するデータベースの中から企業が求める人材にマッチする求職者を紹介するほか、選考日程の調整など、採用にまつわる支援を提供します。

人材紹介の種類

ここでは、人材紹介に代表される次の3種のサービス形態について解説します。

種類1. 登録型

登録型(一般型)とは、サービスに登録した求職者の中から、企業が求める人材に近い求職者を紹介するサービスを指します。採用に至った後に費用が発生する成功報酬型を採用している場合、企業は初期費用なしで採用活動を始めることができます。

種類2. サーチ型

サーチ型は、「ヘッドハンティング型」とも呼ばれる人材紹介の一種です。人材紹介会社が持つ独自の人脈やデータを活用し、企業が求める人材を探し出し興味を喚起させた上で、紹介から転職実現までを支援します。
人材紹介会社が提供するサービスに登録した求職者に限定せず、全てのビジネスパーソンがサーチの対象になる点が大きな特徴です。そのため、広い範囲から求める人材をサーチできる利点があります。登録型(一般型)と同様、成功報酬型を導入しているサービスが大半ですが、サーチ型は人材を探す手間などが発生するため、利用にあたって着手金が必要になることがあります。
また、「スカウト型」のサービスもサーチ型に含まれる場合があります。スカウト型は、スカウト型転職サイトなどに登録している求職者の中から、企業が採用したいと考えている要件にマッチする人材に対して直接、もしくは人材紹介を利用してスカウトを送付し、採用につなげるサービスを指します。

種類3. 再就職支援型

再就職支援型は、倒産や事業縮小など、企業側の都合で退職を余儀なくされた求職者を別の企業に紹介する人材紹介のことを指します。
費用は、求職者が以前に在籍していた企業が負担するため、新しく人材を採用する企業は、採用コストを削減できるメリットがあります。

人材紹介の手数料

人材紹介の手数料は、「紹介料」と呼称されることもあります。一般的には人材紹介会社から紹介された人材が採用に至った場合に発生します。
なお、一般的に手数料は次の計算式を用いて算出されます。

手数料:理論年収×料率(%)

理論年収とは、入社後1年間勤務した場合に得られる想定年収額のことを指し、一般的に基本月給に加えて賞与や各種手当も含まれます。料率は人材紹介会社ごとに異なります。たとえばリクルートエージェントでは料率35%と定められています。
また、人材紹介会社から紹介された人材が入社後に早期退職した場合、在籍期間に応じて返戻金が発生する場合もあります。

(返戻金例)
  • 1カ月以内の退職:手数料の80%
  • 1カ月~3カ月以内の退職:手数料の50%
  • 3カ月~6カ月以内の退職:手数料の10%

人材紹介を利用するメリット

本章では、人材紹介を利用することで得られると考えられる、5つのメリットについて、解説します。

メリット1. 人材要件に合う求職者を採用しやすい

人材紹介を利用するメリットの1つとして、人材要件に合う求職者を採用しやすい点が挙げられます。
人材紹介は、人材紹介会社が保有するデータベースの中から企業が提示する人材要件にマッチする人材を探し出し、紹介してくれます。人材紹介会社に登録がある人材は、転職意向も比較的高く、その中で人材要件に適合している人材もいることも考えられるため、採用実現につながる可能性も高まるでしょう。

メリット2. 成功報酬であるため導入リスクが低い

成功報酬型の人材紹介の場合、採用が決まった段階で手数料が発生するため、採用に至らなかった場合、費用は発生しません。「費用はかかったが採用できなかった」ということにはならないため、導入のリスクも低いと言えるでしょう。また、1人あたりの採用予算を管理しやすい側面もあります。

メリット3. 採用担当者の工数削減につながりやすい

人材紹介を利用することで、採用担当者の工数削減につながる可能性が期待できます。
求職者に提示する求人票の作成や求職者の選定、面接日程の調整、面接前後のフォロー、合否連絡など、人材紹介会社は企業に代わってさまざまな採用業務を代行します。

メリット4. 非公開で採用活動を行うことができる

人材紹介の中には、募集要項にマッチした人材だけにしか求人情報を開示しないサービスもあります。このようなサービスを利用することで、競合他社に求人情報を通じて自社の事業戦略が知られてしまうリスクを低減できるでしょう。

メリット5. 採用するまでの時間を短縮できる

人材紹介を利用することで、求める人材に近い求職者を紹介してもらえるため、対象者がいれば早い段階で面接まで進められることもあるでしょう。突発的な採用需要が発生しても採用までの時間を短縮できる可能性があり、事業活動への影響も最小限で留められるかもしれません。

人材紹介を利用するのに効果的なケース

ここでは、採用活動に人材紹介を利用することで高い効果を期待できる次の4つのケースについて解説します。

ケース1. これまで行っていた採用活動で成果が出ない

現行の採用活動では、人材を採用できない場合、人材紹介を利用して新たな活路を見出すのも方法の1つです。
人材紹介会社は独自の人材データベースを保有しており、その中から求める人材に近い求職者を紹介してくれます。ほかの採用手法では出会えなかった層に対してもピンポイントでアプローチできることもあり、採用の確度を高められる可能性が期待できます。

ケース2. 自社に採用活動のノウハウやリソースが十分ではない

人材紹介は、自社に採用活動のノウハウやリソースが十分でないと悩む企業にとっても有効な採用手法になり得る可能性があります。
募集要件を設定する際も市場動向を加味したアドバイスを提供してくれるほか、人材の選定や面接日程の調整など、採用活動の一部を代行し、サポートするケースもあります。

ケース3. 希少性が高いポジションの人材を採用したい

高度な専門知識やスキル、経験が求められる職種やポジションに就く人材を採用したいと考える場合、そもそもの人材の母数が限られており、求人情報を公開したとしても十分に応募数が募らない懸念があります。
その点、人材紹介会社の中には特定のスキルや経験を持つ人材が登録するデータベースを保有しているサービスもあり、希少なスキルを持つ人材に対してもアプローチする機会を得られることがあります。

ケース4. 急ぎで欠員補充をしたい

人材紹介は転職意欲の高い求職者が利用登録しているケースもあり、その中から募集要件に該当する人材を紹介してくれます。ほかの採用手法と比較して面接までにかかるリードタイムを短縮できる可能性の高い手法であることから、突発的な退職によって、急ぎで欠員補充をしたいニーズに応えてくれるでしょう。

人材紹介を利用する手順

ここでは、人材紹介を利用する手順を、下記一例に沿って解説します。

手順1. 人材紹介会社に問い合わせ、基本契約を締結する

まずは、人材紹介会社に問い合わせ、基本契約を締結しましょう。
自社の採用ニーズを満たしてくれる可能性が高いと考えられる人材紹介会社に問い合わせを行います。問い合わせの後、サービス概要や利用までの流れ、手数料(率)について説明を受けるとともに、採用したい人材の要件を伝え、人材紹介会社が保有する人材データベースの中から要望にマッチする人材の紹介が可能かを確認します。その後、利用までの流れや手数料、サポート内容などに納得できる場合、契約締結に至ります。

手順2. 自社の求める人材の希望を伝え、求人票を作成してもらう

契約締結後は、人材紹介会社の担当者に改めて募集要件を伝え、求人票を作成してもらいます。人材紹介会社によっては、求人票作成のために取材やインタビューを実施することもあります。
募集要件を共有する時は、転職市場で探すには難易度が高そうな条件であったとしても、まずは自社の希望をそのまま伝えましょう。希望の募集要件がそのまま通ることもあります。採用目標期間や人数、求めるスキルなど、条件の緩和が必要な場合は、人材紹介会社の担当者からのアドバイスを参考に可能な範囲で条件を緩和を検討しましょう。

手順3. 人材紹介会社が、候補となる求職者に求人情報を案内する

続いて、人材紹介会社は、募集要件にマッチすると思われる求職者に対して求人情報を案内します。求職者が紹介求人に対して興味を示し応募を希望すれば、人材紹介会社は求職者が応募書類を作成するサポートに移ります。

手順4. 紹介理由とともに、人材紹介会社から紹介を受ける

企業側には、人材紹介会社経由で応募者から預かった応募書類が共有されます。その際、人材紹介会社から紹介理由が伝えられることもあるでしょう。

手順5. 書類/面接選考を行い、採否の結果を通知する

応募者を紹介された後は、自社で書類選考を進めます。
各選考の結果は、人材紹介会社経由で応募者に伝えられます。一般的に応募者に採否結果を直接伝えることはありません。また、選考日程の調整も人材紹介会社が応募者との間に介在し、調整を進めてくれます。

手順6. 採用条件を確認し内定、応募者が入社する

最終選考まで進み内定に至った場合は、人材紹介会社から応募者に対して入社の意思確認が行われます。応募者が内定を承諾した場合は、人材紹介会社経由で入社日の調整や入社後の雇用条件の確認などが行われます。
万が一、応募者が内定を辞退した場合は、辞退理由を確認するとともに、次の求職者を紹介してもらうかどうか、社内ですり合わせを行いましょう。再度人材の紹介を求める場合は、人材紹介会社の担当者に伝え、新たな紹介を待ちます。

手順7. 人材紹介会社へ手数料を支払う

応募者が内定を承諾し、入社に至った場合は、人材紹介会社に手数料を支払います。
手数料の額や手数料を支払うタイミングは、人材紹介会社によって異なります。人材紹介会社が定める規定に則り手数料を納めましょう。

人材紹介を利用する際の注意点

ここでは、人材紹介を利用する際に留意したい次の2つの注意点について解説します。

注意点1. 自社への採用ノウハウの蓄積を意識する

人材紹介は企業にとって頼りになる採用手法ですが、採用活動自体を丸投げするのは避けましょう。なぜなら、任せっきりになってしまうと、自社に採用ノウハウが蓄積されない恐れがあるからです。たしかに採用活動の手間を省くといったメリットはありますが、定期的にノウハウや知見を共有するよう心掛け、自社にノウハウが蓄積できるよう工夫しましょう。

注意点2. 状況確認や打ち合わせを定期的に行う

提示する募集要件によっては、人材をすぐに紹介できないこともあります。自社の採用計画に遅れが生じていないか、自社内の状況に変化はないのかなど常に確認することが求められます。また人材紹介会社と定期的に打ち合わせを行って、互いの状況をすり合わせましょう。
採用活動の進行状況によっては、条件の緩和を検討することも必要でしょう。こうした対応を取るためにも、人材紹介会社との定期的な打ち合わせは重要です。

人材紹介と他の採用手法との違い

ここでは、人材紹介と次の5つの採用手法との違いについて解説します。

人材紹介と人材派遣の違い

人材紹介は紹介された人材を直接雇用することを目的に人材を紹介してもらうサービスであるのに対して、人材派遣は従業員を一定期間派遣してもらうことを目的に人材を紹介してもらうサービスです。
人材派遣会社から紹介された人材は、派遣会社と雇用契約を結んでいる点が大きな特徴であり、繁忙期など期間限定で人手を確保したい場合などに有効なサービスと言えるでしょう。

人材紹介と業務委託の違い

人材紹介と業務委託は、企業と応募者との間で交わされる契約が異なります。
人材紹介で紹介された応募者が採用に至った場合、企業と応募者は「雇用契約」を交わします。一方、業務委託の受注者として採用に至った場合は、一般的に「業務委託契約」が交わされます。雇用契約を交わした場合は労働に対して報酬が支払われますが、業務委託契約を交わした場合は成果物に対して報酬が支払われます。

人材紹介と採用代行の違い

人材紹介と採用代行の違いは、提供されるサービス内容が異なる点だと考えられます。
人材紹介は、企業が求める人材を紹介し応募者を内定や入社まで導く支援を提供するサービスですが、採用代行は企業の採用活動にまつわる業務を代行するサービスです。採用代行業者にもよりますが、採用代行が提供する支援内容は、採用活動の業務全般もしくは一部業務の代行や採用コンサルティングなど多岐に渡ります。

人材紹介と求人広告の違い

人材紹介と求人広告の違いは、人材紹介は人材紹介会社が保有するデータベースの中から募集要項にマッチする人材を紹介してもらう採用手法であるのに対し、求人広告は自社の求人情報を広告媒体に掲載し、応募を募る採用手法のことを指します。
求人広告は、自社の求人情報を求人に特化した広告媒体に掲載し、不特定多数の求職者に向けて自社の求人情報を広く発信する手法です。さまざまな求職者に広くリーチしやすいという利点があります。一方、人材紹介は人材紹介会社が募集要項にマッチする人材を選定してくれるため、応募に至る人材は求める人材に近い可能性が期待できます。

人材紹介とヘッドハンティングの違い

人材紹介とヘッドハンティングは、アプローチ対象の範囲が異なる点が違いとして挙げられます。
人材紹介は保有するデータベースの中から企業の募集要件に合った人材を紹介するサービスですが、ヘッドハンティングは、全ビジネスパーソンがアプローチ対象となります。ですから転職意欲を持たない人材や転職市場に登場しない人材にもアプローチすることもあります。ただし、調査や採用に至るまでの支援などにも費用が発生するため、人材紹介と比べて費用が高くなるケースが多いようです。

人材紹介会社を選ぶポイント

ここでは、人材紹介会社を選ぶ際に意識したい次のポイント2つのポイントを紹介します。

ポイント1. どの職種、業界に強いのか、紹介実績を確認する

人材紹介会社を選ぶ際は、人材紹介会社の実績を確認しましょう。紹介実績が多い人材紹介会社は社内に知見も豊富なことが多く、自社に適した人材を紹介してもらえる可能性が期待できます。
また、人材紹介会社にはそれぞれの特色があり、特定の職種や業界の採用に長けているケースもあります。実績を確認する際には、どの職種・業界に精通しているのか、支援実績があるのかも確認しておきましょう。
自社が属する業界や採用したいポジションの採用支援に精通していたり、特定の職種や業界に限定した人材データベースを保有していたりする場合、求める人材を採用できる確度が高まるかもしれません。

ポイント2.複数社の契約内容を比較して選ぶ

複数社の手数料などの契約内容を比較して選ぶことで、自社に合った、費用対効果の高いサービスの選定が期待できるでしょう。契約内容を比較する際は、返戻金の有無やサポートの細やかさや範囲・内容も確認しておくことが大切です。
費用面だけではなく、さまざまな観点から比較し、自社にとって高い有効性が期待できるサービスを選びましょう。

アドバイザー
組織人事コンサルティングSeguros / 代表コンサルタント
粟野 友樹(あわの ともき)氏
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。

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