料金を支払い自社の採用に関する業務をアウトソーシングする、採用代行(RPO)というサービスがあります。適切に活用することで、採用担当者が採用活動以外のコア業務に専念できるなど多くのメリットがあります。
本記事では、採用代行(RPO)のメリット・デメリット、委託の流れなどについて、人事組織コンサルティングSeguros、代表コンサルタントの粟野友樹氏が解説します。

採用代行(RPO)とは?

採用代行(RPO)とは、採用に関する業務の一部もしくは全体を、第三者に委託することです。
委託する業務の範囲には注意が必要です。「募集や選考に関する最終的な対応」も含めて委託する場合、法律上「委託募集」に該当することとなり、職業安定法の定めに基づいて、委託する側とされる側の双方が厚生労働大臣や都道府県労働局長の許可を得る必要があります。

採用代行(RPO)とは何か

採用代行(RPO)では、採用に関わる煩雑な業務を求人企業に代わって行います。また採用に関する豊富なノウハウを活用し、求人企業の採用活動の成果を高めるためのサービスを提供します。

なぜ採用代行(RPO)が注目されているのか

採用代行(RPO)が求められる理由としては「企業の採用業務が煩雑化している」「企業の採用業務の難易度が向上している」などが挙げられます。
現在、人口減少にともない企業間での人材の奪い合いが激しさを増しています。またWebやSNSの発展による採用手法の多様化によって求人企業の採用活動に関わる業務も多様化しています。このような変化を背景に採用業務が煩雑化しているのです。さらに求める人材の採用には応募者に対する的確かつタイムリーな対応や内定後のフォローなどが求められており採用業務の難易度が向上しています。

採用代行(RPO)に委託できる6つの業務

本章では、採用代行(RPO)に委託できる次の6つの業務について解説します。

  • 採用計画の策定
  • 求人広告掲載
  • 応募者管理
  • 応募者書類選考(スクリーニング)
  • DM配信
  • 選考日程調整

採用計画の策定

自社の経営計画や経営戦略を実践するために適切な採用計画の策定を依頼することができます。どのような時期に、どの部門に、どのような能力や経験などを有した人材を、どの程度の人数配置することが望ましいのかといった観点から採用計画の策定が行われます。
採用計画に関しては、以下の記事を参照ください。

求人広告掲載

求人広告の作成を委託することができます。求人企業の魅力や人材要件が適切に伝わり、ターゲット人材から応募が来るような形で作成されます。また作成した求人広告をターゲット人材の採用に適切な求人媒体に掲載することを委託することもできます。

応募者管理

求人媒体ごとに、応募の受付や応募者への必要事項の連絡、応募者との対応の記録といった「応募者管理の業務」を委託することができます。

応募者書類選考(スクリーニング)

あらかじめ書類選考の基準を採用代行(RPO)に伝えておくことで、多くの応募者の中から条件に合った人材を抽出する「応募者書類選考に関するスクリーニングの業務」を委託することができます。

DM配信

ターゲット人材に対して直接スカウトメールを送信するダイレクトリクルーティングを実施する場合に、適切なスカウト文章を作成したうえで送付する「DM配信の業務」を委託することができます。スカウト文章の作成は、採用代行(RPO)が対応可能な場合、依頼できます。

選考日程調整

応募者との間で面接の日程を調整したうえで、面接に関する事務連絡や最終確認連絡といった「選考日程調整の業務」を委託することができます。

採用代行(RPO)の費用相場

ここでは、採用代行(RPO)に関する費用相場について、次の2つの観点から解説します。

  • 費用の算出パターン
  • 業務別費用相場

採用代行(RPO)の費用の算出パターン

採用代行(RPO)に関する費用の算出パターンは、「定額型」「業務ごとの課金型」「成功報酬型」などがあります。
定額型とは、業務内容に応じた1カ月、3カ月などの一定期間ごとの費用が設定されている形です。
業務ごとの課金型とは、業務内容とボリュームに応じて個別に費用が設定される形です。
成功報酬型とは、あらかじめ双方で合意した採用の成果が実現されるまでは費用は発生せず、採用決定時などの成果が生じた段階で費用が発生します。

採用代行(RPO)の業務別費用相場

採用代行(RPO)の業務別費用相場は、下記の通りです。
下記は一例となるため、詳細は利用を検討している採用代行(RPO)に確認しましょう。

採用代行(RPO)の業務別費用相場

業務名業務内容費用(目安)
採用プロセス 全般の代行応募~内定までのプロセス・もしくはプロセスの一部を企業カスタマイズで代行月額固定  
スカウトメール送信ターゲット人材に該当する求職者に対するスカウトメール送信スカウト送信数:50件/月 5万円~
応募受付応募者から履歴書や職務経歴書を取り寄せ、情報登録を行い、必要に応じた追加書類を回収する応募処理数:50件/月 4万円~
書類選考一次スクリーニング求人企業の選考基準に則った書類選考上の合否判定、結果の登録応募処理数:50件/月 4万円~
お見送り連絡代行選考不合格者に対する通知連絡お見送り処理数:50件/月 2万円~
採用媒体管理採用媒体ごとの応募者とのやり取りなどの管理月額5万円~70万円
選考日程調整応募者との面談日程の調整月額5万円~
面接代行応募者との面接の代行月額30万円~

採用代行(RPO)の4つのメリット

採用代行(RPO)を利用することで生じる、次の4つのメリットについて解説します。

  • 人事担当者の人件費の削減
  • 人事担当者が採用業務以外のコア業務に専念できるようになる
  • 採用活動の精度を高めることができる
  • 採用に関するノウハウを蓄積することができる

メリット1:人事担当者の人件費の削減

採用代行(RPO)を利用することで、人事担当者が対応する採用に関わる工数を削減できる場合があります。そのため人事担当者の人件費も削減され、採用に関するコストパフォーマンスの向上が期待できます。

メリット2:人事担当者が採用業務以外のコア業務に専念できるようになる

採用代行(RPO)を利用することで、人事担当者が採用活動に関する繁雑な業務から解放されます。それにより人事戦略の策定や人事制度の運用、社内教育の充実化といった人事に関するそのほかのコア業務に専念することができるようになります。

メリット3:採用活動の精度を高めることができる

採用代行(RPO)を利用することで業務に余裕が生まれ、応募者に対するタイムリーかつきめ細かい対応が可能になる場合があります。また採用プロセスごとの成果の分析に基づいた対応の改善が期待できる場合もあります。このような理由から、自社の採用活動の精度を高めることができる可能性があります。

メリット4:採用に関するノウハウを蓄積することができる

採用代行(RPO)は「応募者への対応」「採用業務の管理」「採用成果の分析に基づく対応」といった採用に関するノウハウを保有しています。
採用代行(RPO)を利用することで、こうしたノウハウが自社に蓄積される場合があります。

採用代行(RPO)を利用する時の4つの注意点

採用代行(RPO)を利用する際は、次の4つの注意点に対し留意が必要なケースもあります。

  • 採用コストが高くなる場合がある
  • 採用代行(RPO)企業との間で綿密な調整が必要になる
  • 応募者や内定者との関係が築きにくくなることがある
  • 人事担当者の採用に関するスキルが向上しないことがある

本章では、上記4つの注意点について、解説します。

注意点1:採用コストが高くなる場合がある

自社で対応可能な業務も含めて採用代行(RPO)に採用に関する業務を任せすぎてしまうと、採用代行(RPO)に支払う費用が増大します。結果的に自社の採用活動における採用コストが高くなり、採用に関するコストパフォーマンスが悪化してしまうことがあります。

注意点2:採用代行(RPO)との間で綿密な調整が必要になる

採用代行(RPO)が自社の求める人材像や採用に関するニーズを的確に把握しきれていなかった場合、採用ミスマッチが生じてしまう場合があります。こうした事態を防ぐためには、採用代行(RPO)との間で綿密な調整が必要になります。
採用ミスマッチに関しては、以下の記事をご参照ください。

注意点3:応募者や内定者との関係が築きにくくなることがある

採用代行(RPO)に任せる範囲を広げた場合、求人企業が応募者や内定者と接する機会が減少し、求職者に対して自社の考え方などを正確に伝えることができなくなってしまう場合があります。それにより採用者が入社後にミスマッチを感じてしまい、早期離職につながってしまう可能性があります。

注意点4:人事担当者の採用に関するスキルが向上しないことがある

採用業務を採用代行(RPO)に任せすぎてしまうと、人事担当者と採用代行(RPO)の間でのコミュニケーションが希薄化し、採用に関するノウハウが自社に蓄積されない場合があります。その結果、人事担当者の採用に関するスキルを磨く機会があまり得られない状態が続いてしまう可能性があります。

採用代行(RPO)の利用に向いている企業

採用代行(RPO)の利用に向いている企業として、下記3つの採用課題に悩む企業を例に紹介します。

  • 社内に採用リソース・ノウハウが不足している企業
  • 採用予定人数が多い企業
  • 特定のポジションの採用がうまくいっていない企業

社内に採用リソース・ノウハウが不足している企業

社内に採用リソース・ノウハウが不足している企業の中には、最適とはいえない方法や非効率な方法で採用活動を進めている可能性があります。
そのため、採用活動に関する知見が乏しい企業は、人材採用に精通した採用代行(RPO)の利用を検討してみましょう。中でもただ採用業務を代行するようなサービスではなく、改善アドバイスを提供してくれるコンサルティング要素を含む採用代行(RPO)がおすすめです。
自社の採用課題や状況、ターゲットに合わせて1から採用戦略を設計してくれるため、採用ノウハウに乏しい企業でも、効率的かつ成果を期待できる採用活動へと導いてくれるでしょう。

採用予定人数が多い企業

採用予定人数が多い企業も、採用代行(RPO)を活用することで採用活動にかかる労力を軽減できます。
採用予定人数が多くなると、その分1つの選考プロセスに割かれる工数や時間も増えます。応募者に対して丁寧な応対ができなくなったり、採用担当者がコア業務に注力できなくなったりする可能性もあるかもしれません。
もしある程度の採用ノウハウを持っているのであれば、業務単位で委託できる採用代行(RPO)を利用してみましょう。一部の採用業務を採用代行(RPO)に委託することで、採用担当者は、本来注力すべき採用業務に集中できる環境を作れるようになるでしょう。
また委託する業務を一部に絞ることで、採用代行(RPO)の利用費用を押さえられる場合もあります。

特定のポジションの採用がうまくいっていない企業

特定のポジションの採用がうまくいっていない企業にも、採用代行(RPO)の活用をおすすめします。この場合、採用したいポジションや職種の採用に長けた採用代行(RPO)を探してみましょう。
採用代行(RPO)には、エグゼクティブや管理職ポジションの採用支援を得意とするサービスや、エンジニアや営業職など人気職種の採用に強いサービスもあります。
特定のポジションや業種の採用に特化していたり、強みを持っていたりする採用代行(RPO)は、そのポジションや業種の採用において押さるべきポイントや転職活動の傾向を熟知しています。これまでの支援経験から、採用ターゲットの興味・関心を惹く戦略を展開してくれるでしょう。

採用代行(RPO)サービスの種類

ここでは、採用代行(RPO)サービスの種類について、下記3つに分けて説明します。

  • 正社員メインの採用代行(RPO)
  • 業務委託メインの採用代行(RPO)
  • フリーランスメインの採用代行(RPO)

種類1:正社員メインの採用代行(RPO)

正社員メインの採用代行(RPO)では、採用活動にまつわるアドバイスから日々の採用業務の代行まで、採用活動に関する様々な支援を受けられます。
チームで支援を提供してくれたり、業界・職種に精通した担当者がアサインされたりすることもあり、自社の採用課題に適した応対をしてもらえる点が特徴です。また、企業の採用課題に対し伴走型の支援を提供するサービスも多く、根本から採用課題の改善に取り組んでもらえることもあるでしょう。
ただし、依頼にかかる費用は比較的高額になりやすく、予算に応じて依頼する業務や内容を精査する必要があります。

種類2:業務委託メインの採用代行(RPO)

業務委託メインの採用代行では、採用業務の一部を切り取って依頼するケースが大半です。データ収集やスカウトの送付、応募者対応など、日々のルーティン作業や簡易な業務を依頼するのに活用される傾向があります。
正社員メインの採用代行(RPO)と比較して、費用は抑えられるものの、自社の方向性や方法に則って作業を進めてくれているか、都度チェックやすり合わせが必要になるでしょう。

種類3:フリーランスメインの採用代行(RPO)

フリーランスメインの採用代行は、依頼先となるフリーランスの力量によって依頼できる業務内容が異なります。
もし、採用代行(RPO)の知見や経験に長けているフリーランスであれば、コンサルティング要素を含む支援も依頼できるでしょう。正社員メインの採用代行(RPO)と同等レベルの支援を受けたとしても、費用を抑えられるメリットがあります。
一方で、採用代行(RPO)に関する知識が乏しいフリーランスの場合、依頼内容を細かく擦り合わせなくてはなりません。この場合、かえって採用担当者の負担が増えることもあるでしょう。また、求めるスキルを兼ね備えたフリーランスがなかなか見つからない、フリーランスに採用代行(RPO)を依頼したものの、スキル不足で期待する成果が見込めない、といったトラブルも散見されます。
正社員メインの採用代行(RPO)と比較して依頼費用は押さえられるものの、自社の需要に合ったフリーランス探しが難しい点や依頼後のトラブルに注意が必要です。

採用代行(RPO)を委託する際の流れ

採用代行(RPO)を委託する場合の一般的な流れは、以下の通り4つのSTEPを踏みます。

  1. 委託する業務を決定する
  2. 採用代行(RPO)と打ち合わせをする
  3. 契約を締結し採用活動をスタートする
  4. モニタリングを実施する

STEP1:委託する業務を決定する

採用に関して、どの業務を採用代行(RPO)に委託するのかを決定します。

STEP2:採用代行(RPO)と打ち合わせをする

採用代行(RPO)との打ち合わせを行い、自社の採用に関する課題や要望、求める人材像などを採用代行(RPO)に伝え、認識にズレがないことを確認します。そのうえで、採用代行(RPO)から受けられるサービス内容を確認し、採用代行(RPO)へ委託することを正式に決定します。

STEP3:契約を締結し採用活動をスタートする

採用代行(RPO)との間で、採用代行(RPO)サービスの内容や費用、法的な責任の範囲などを明確にした契約を締結します。契約内容に双方が合意したあとに、採用活動をスタートさせます。

STEP4:モニタリングを実施する

採用活動を開始したあとも、採用代行(RPO)業務に関して採用代行(RPO)に任せっきりにするのではなく、定期的に状況を確認し、今後の対応に関して要望がある場合は明確に伝えます。

採用代行(RPO)の委託先を選ぶ時の5つのポイント

採用代行(RPO)の委託先を選ぶ時は、次の5つのポイントに注目しましょう。

  • 対応範囲
  • 過去実績
  • 運用方法
  • 見積もり
  • 担当者

ポイント1:対応範囲

あらかじめ採用に関するどの業務を委託するのかを十分に精査したうえで、採用代行(RPO)に委託する業務範囲を決定しましょう。自社で容易に対応できる業務は自社で行い、自社で行うことが非効率な業務のみを委託することで、採用活動のコストを最適化できます。

ポイント2:過去実績

職種や業務経験などの人材要件によって、採用活動のポイントとなる部分が異なります。そのため、自社と似た業界業種や似たニーズに関して実績があるかどうかも、採用代行(RPO)を選ぶ際の重要なポイントとなります。

ポイント3:運用方法

採用代行(RPO)に委託した場合であっても、相手に任せきりにしてしまうと採用のミスマッチが生じるリスクが高くなります。そのため進捗状況の確認や情報共有の方法などについてもあらかじめ決めておき、気になったことがあればその都度確認するなどして、認識合わせを丁寧に行っていきましょう。これらのやり取りを通じて丁寧に対応してくれる採用代行(RPO)を選ぶことも大切です。

ポイント4:見積もり

採用活動では想定外の業務が生じることがあり、採用代行(RPO)から想定以上の費用請求が発生することで予算内での採用活動ができなくなるリスクが存在します。そのため採用代行(RPO)から委託する業務内容と費用が具体化された書面での見積もりを取得するようにしましょう。

ポイント5:担当者

採用代行(RPO)を利用する目的は、採用代行(RPO)のノウハウを活用し採用に関するコストパフォーマンスの最適化を図ること、そして必要な人材を採用することです。そのため、自社の要望に真摯に耳を傾け積極的に進捗報告や情報共有を図るなど、自社に寄り添った対応をしてくれる担当者かどうか十分に見極めることが必要です。

複雑化した採用業務に対応するために採用に関するノウハウを有した採用代行(RPO)のサービスを利用することは大変有意義なことです。しかし採用活動は今後の自社の経営に大きな影響を及ぼします。そのため採用代行(RPO)に任せっきりにするのではなく自社が主体的に採用業務に関わることが重要です。

また、優秀な人材や自社の採用ターゲットにマッチした人材を採用するためには、状況やターゲットに適した採用手法を用いることも大切です。
下記記事では、中途採用に用いられている採用手法について解説しています。
採用手法について理解を深めたい採用ご担当者様は、ぜひ下記記事も参考にしてみてください。

アドバイザー
組織人事コンサルティングSeguros / 代表コンサルタント
粟野 友樹(あわの ともき)氏
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。

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