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ダイレクトリクルーティングとは
ダイレクトリクルーティング(Direct Recruiting)とは、企業が第三者を介さず求職者に直接アプローチする採用手法を意味する和製英語です。海外ではダイレクトソーシング(Direct=直接、Sourcing=調達)と呼ばれて、採用手法としてはすでに一般的なものとなっています。
ダイレクトリクルーティングの概要
求人媒体や人材紹介では、媒体運営会社や人材紹介会社を通じて母集団を集めて選考を行う、いわゆる「待ちの採用」が一般的で、どうしても企業は母集団の質や量についてのコントロールが難しくなります。対してダイレクトリクルーティングは、第三者を介さず、企業が直接、求職者にアプローチしていく「攻めの採用手法」といわれています。人材データベースを持つ企業のダイレクトリクルーティングサービスを利用するほか、FacebookやTwitterなどのSNSを活用し自社で行うソーシャルリクルーティングと呼ばれる手法や、社員の紹介を活用するリファラル採用、自社ホームページを活用しての採用も、ダイレクトリクルーティングに含まれます。
ダイレクトリクルーティングが広がっている背景
少子高齢化とそれにともなう労働人口の減少が進むなかでは、採用難が今後も続くことが予想されます。また、直近での人員不足の解消や将来を見据えた人員体制づくりなどのような、採用背景を持つ企業では、従来からの手法だけでは人材の確保がすでに難しくなっています。IT技術が進化し、ビジネス環境が急激に変化していくなかで、自社が必要としている人材をどれだけスピーディに採用できるかが事業戦略においてより重要となっています。
このような環境の下での新しい採用手法として、従来の「待ちの手法」ではなく、企業主導で求める人材にアプローチできる「ダイレクトリクルーティング」を取り入れる企業が増えてきました。ITツールやSNSの発達により、企業と個人が直接コミュニケーションできるようになったことも、こうしたサービスの普及を後押ししています。
従来の手法とダイレクトリクルーティングの違いとは
従来の採用手法は、求人媒体への広告掲載や人材紹介の利用など、専門業者や公的機関が提供する求人関連のサービスを利用して、採用活動を行うものがほとんどで、基本的には応募を待つ受け身の姿勢にならざるを得ませんでした。
これに対して、ダイレクトリクルーティングは、SNSの利用や採用目的にこだわらない各種イベントの開催、さまざまな関係者からの個別紹介などによって、自社の人材要件に合致する人材との接点を作ることができます。求める人材に対して企業から直接アクションをおこすことで、人材の志向や希望に合わせた細かな対応ができるため、自社への志望度を高めて採用につながる確率の向上が期待できます。
ダイレクトリクルーティングのメリット・デメリット
ダイレクトリクルーティングに関して、従来からの採用手法と比較したメリットとデメリットには、以下のような内容があげられます。
4つのメリット
1.採用コストが抑えられる
求人媒体は掲載するたびに広告掲載費が、人材紹介は採用時に比較的高額な成功報酬が発生するケースが多くあります。一方ダイレクトリクルーティングでは、無料あるいは比較的低価格のSNSなどを利用して人材にアプローチするため、従来の手法に比べて採用コストを抑えることができます。媒体やデータベースを使用する場合でも、ほとんどの作業を自社内で行うので費用を抑えることができ、総合的に採用コストの削減が期待されます。
※求人広告の費用に関しては、以下の記事をご参照ください
求人広告の費用は?新卒・中途・アルバイト媒体の費用一覧まとめ
2.多様な人材に出会える
従来の手法では、実際に転職活動を行っている人材しか接点を持つことはできませんが、ダイレクトリクルーティングでは、自社の求人情報を見ても自ら応募しなかった人材や、紹介会社から推薦される人材とは違った人材、転職潜在層にもアプローチできるというメリットがあります。
3.ミスマッチが少なくなる
ダイレクトリクルーティングでは、自社で選んだ候補者に対して自社やポジションの魅力を直接伝え、応募から選考、入社までフォローしていきます。一貫して自社から直接メッセージを伝えることができ、選考過程で候補者とのコミュニケ―ションを深めることができます。こうした特徴からミスマッチを少なくすることが期待できます。
4.自社で採用ノウハウを習得でき、採用力が高まる
候補者の選定から入社まで、自社で採用プロセスのすべてを行っていくため、活動上の問題が起こっても素早く柔軟に対応することができ、問題解決を早めることが期待できます。常にPDCAをまわしていくことで、活動の精度を高めながら、社内にノウハウを蓄積することが可能になります。
4つのデメリット
1.作業負荷が大きい
ダイレクトリクルーティングでは、SNSなどを通じた継続的な情報発信や、コネクションの取れた人材との細やかなコミュニケーション、スカウトメールの作成や送信、応募者管理や面接日の設定、入社意欲の醸成など、採用活動に関する多くの業務を自社で行うため、採用担当者への作業負荷が増す懸念があります。運用体制などへの配慮が必要と考えられます。
2.ノウハウを確立するまで、ある程度の時間がかかる
ダイレクトリクルーティングで接点を作る人材は、必ずしも転職意識が高いとは限りません。このため、場合によってはすぐに結果に結びつかないこともあります。また、比較的新しい手法ということもあり、課題がどこにあるのか見極め、検証し、改善を繰り返して自社のノウハウを確立するためには、ある程度の時間が必要になってきます。
3.人材の転職意欲が低い場合がある
一般的な転職活動は、求職者が自ら企業を探して応募しますが、ダイレクトリクルーティングでは企業側からのアプローチがきっかけになるため、転職意欲や志望度が低い人材もいることが考えられます。特に自社が欲しい人材だった場合、この接点を利用して、入社意欲を高めてもらうよう工夫していくことが大切です。
4.大量採用にはあまり向かない
ダイレクトリクルーティングは一人ひとりの人材に直接アプローチして、それぞれの志向に合わせた丁寧な対応が必要になるなど、採用工数が増える傾向があります。そのため、人事のマンパワーに余裕がある場合を除いて、一時期に多人数を採用するような大量採用にはあまり向かない手法と考えることができます。
ダイレクトリクルーティングの費用
ダイレクトリクルーティングを行うにあたっての費用は、従来の手法と比較すると以下のような形となります。社外のサービスを利用する場合、金額設定や課金条件などは提供する会社によって異なるので、事前に確認するようにしましょう。
従来の採用手法の場合
求人媒体への広告掲載では、掲載記事の大きさや文書量、掲載期間などに応じた掲載料がかかります。また、人材紹介の利用を行った場合は、求職者の採用時に高額な成功報酬が発生するケースが多くあります。
ダイレクトリクルーティングの場合
ソーシャルプラットフォームを利用する際には、無料のものや、費用がかかっても比較的低価格のものがあるため、従来の手法に比べると費用は全般的に低くなる傾向があります。
求人媒体でのスカウトメール機能や、人材データベースサービスを使って対象人材を探すような場合は、その利用期間に応じたシステム使用料が発生します。あわせて応募時、内定時、入社時など、段階によって成果報酬が課金されることもあります。スカウトメールについては、送付するメールの数によって料金が異なることがあります。
ダイレクトリクルーティングが向いている企業
「ダイレクトリクルーティング」は、どのような企業が効果的に活用できる手法なのでしょうか。効果的に活用できる企業の条件を以下に解説します。
従来の方法では、なかなか採用できない企業
たとえば専門性の高いスキルをもったエンジニアなどは、人数が限られているうえに、転職活動の時間が持てないといった理由から、従来の転職市場には現れにくい傾向にあります。そんな転職潜在層にも企業から直接アプローチできるダイレクトリクルーティングの手法は、専門人材を採用できる突破口となることが期待できます。
※エンジニア採用に関しては、以下の記事をご参照ください
【最新】エンジニア採用を成功させるポイント、手法を詳しく解説
自社の採用ノウハウを蓄積したい企業
ダイレクトリクルーティングでは、自社で採用のすべての工程を行うので、自社の魅力の整理、人材要件の設定、人材の選定、メールやメッセージの文面作成、面接日程の調整、内定から入社までのフォローなど、採用のノウハウすべてを自社で蓄積でき、採用力を高めることが期待できます。
ダイレクトリクルーティングサービスの選び方
ダイレクトリクルーティングで活用できるサービスや媒体には、無料で使用できるソーシャルプラットフォームや、求人媒体など従来の手法に追加されたスカウトメール機能、対象を特定職種や高度専門人材に特化したものなど数多くの種類があり、その使い勝手や料金体系もさまざまです。
自社の採用活動でどのような使い方をするのか、実施するうえでの作業負荷はどうなのか、かけられる予算はどのくらいかなど、要件を十分に検討したうえで、自社に合ったサービスを選定することが好ましいでしょう。
ダイレクトリクルーティングを始める際のポイント
ダイレクトリクルーティングを始めるにあたって、その際のポイントを解説します。
採用対象となる人材をリストアップする
使用するサービスおよび媒体を選定し、そこから対象となる人材を検索してリストアップします。さまざまな検索条件で調査をおこない、自社の採用対象となり得る人材かどうかを確認していきます。
メッセージおよびメールを作成、送信する
リストアップした人材に対して、スカウトの意思を伝える、またはコミュニケーションのきっかけとなるメールやメッセージを作成、送信します。
自社に興味を持ってもらい、返信してもらう確率を高めるためには、誰にでも当てはまる画一的な内容でなく、その人材に合わせたメール文面を工夫して、自社に来てほしいという気持ちを伝えることが重要と考えられます。
それぞれの人材の経歴や保有スキルなどを確認し、その内容に応じた文面を個別に作成することが望ましいでしょう。
返信があった際には面談や面接日程などの調整を行う
リストアップした人材からうまく返信をもらうことができた場合、その対応はできる限り早く行い、可能であれば面談や面接日程などの調整を行います。志望意思が低いと思われるような場合には、情報交換などの名目で、面接よりも気軽な対面コミュニケーションの場を設定してもよいでしょう。人材が他社からもアプローチを受けている可能性があるため、できるだけ早く接点を広げて、面接までつなげる動きを取ることが重要だといえます。
ダイレクトリクルーティングのスカウトメールを作成するときのポイント
ダイレクトリクルーティングでは、スカウトメールが重要な役割を持つことが多くあります。その作成にあたって、ポイントとなる項目は以下の通りです。
送付対象となる人材像を明確化する
まず、スカウトメールを送付する対象となる人材像を明確にすることが大切です。経験してきた職種や業種、転職を考えている理由など、個別の要件によってそれぞれが重視しているポイントは異なるため、メールの内容もそれに合わせて変えていく必要があります。
人材の興味を引く「メール件名」を工夫する
送ったメールを開封して読んでもらうためには、「メール件名」の内容が大きく影響します。長すぎたり、わかりづらかったり、目に留まりにくかったりする件名では、内容を読まれずに削除されてしまう場合があります。
できればメール件名のプレビューで見える前半部分に、相手の興味を引くアピールやメリットなどの文言を入れるとよいでしょう。
本文は適切な文字数で簡潔な内容にする
1分程度で読める文字数は、一般的に500~600文字程度といわれており、スカウトメールもこれと同程度の分量を考慮することが好ましいと考えられます。会社紹介などをすべて記載すると冗長になりがちなため、メール本文には必要最低限の情報にとどめ、ホームページのURLを記載するなどして、別途確認してもらう形が好ましいです。
「自分が選ばれた」という特別感を持たせる
スカウトメールで重要なポイントの一つに、送付した人材に「自分は選ばれた」という特別感を持ってもらうことがあります。評価している点などを相手に合わせて具体的に記載するなど、一部の選ばれた人材だけに送った特別なメールということを伝えて認識してもらうことが大切です。
※スカウトメールの書き方に関しては、以下の記事をご参照ください
スカウトメールの書き方のコツや例文付き!効果の出る件名・文面を一挙紹介
ダイレクトリクルーティングを成功させるための運用のポイント
ダイレクトリクルーティングを成功させるうえでのポイントとして、以下のような項目があげられます。
自社の魅力向上と情報発信に注力する
ダイレクトリクルーティングでは、自社をあまり認知していない人材から目を向けてもらえるように、自社の魅力を向上させ、それを発信していくことが大切です。
企業全体としては、職場環境の改善や社内の人間関係など、さまざまな角度で魅力を高める取り組みを進めることが必要になります。またSNSなどを使う際には、日常的な業務風景などを継続的に発信することが重要です。こうした取り組みには、全社的な協力が必要になるため、事前に協力体制を整えておくとよいでしょう。
自社のこれまでの採用活動状況から、ダイレクトリクルーティングの有効性や運用の可否などについても確認していくことが必要と考えられます。
関連する情報を一元管理する
活動の効率化やそれぞれの人材の状況を細かく管理するためには、関連する情報をまとめて一元管理する必要があります。人材のスキルや職歴に関する情報、選考の進捗状況や選考過程での評価などのデータを蓄積、分析することで、課題発見や改善を効率的に進められ、採用力を高めていくことが可能になります。さまざまな管理ツールやシステムなども提供されているので、これらの活用を検討してみてもよいでしょう。
細やかで素早い対応を徹底する
ダイレクトリクルーティングは、それぞれの応募者に合わせた細やかな対応が行いながら、採用につなげることができるのが特徴です。
前章でも述べた通り、メールやメッセージは定型化したものを使い回すのではなく、その人ごとの内容で送りましょう。また、相手が自社に興味を持ってくれている間にすばやく返信することで、相手からの興味も冷めにくく、面接にスムーズにつなげられるでしょう。
長期的視点でPDCAを回してノウハウを蓄積する
ダイレクトリクルーティングでは、対象人材が志望動機を形成する前の段階から相手との関係作りから始めるため、採用につながるまでには一定の時間を要することが多くなると考えられます。また、採用活動のノウハウを蓄積することでも、同じく一定の時間がかかります。
長期的な視点でPDCAを回して状況を検証しながら、採用活動に取り組んでいくことが重要だといえます。
ここまで見てきた通り、企業が人材と直接接点を持つことができるダイレクトリクルーティングは、従来の手法では得られない効果が期待できます。その一方で、短期的な成果にはつながりにくいことや、作業負荷が増大するといった課題もあります。これらの特徴をよく理解し、自社の活動に合った形で実践していくことが重要になります。
課題を軽減する方法の一つとしては、社外の人材データベースから対象人材を選んで、直接やり取りができる「リクルートダイレクトスカウト」のようなサービスを利用することも考えられます。
効果的なダイレクトリクルーティングの取り組みを考え、自社の要件にあった人材の採用につなげていきましょう。