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リファラル採用とは
身近な人を介した出会いだからこそ、より深くお互いを理解して決断できる
リファラル採用とは、自社で働いている社員に知人・友人を紹介してもらう採用方法のことです。身近な人を介すからこそ本音やリアルな情報のやり取りができ、企業・個人の双方にとって納得のいく採用になりやすいのが特徴です。入社後のミスマッチも少なく、知人が社内にいることで職場に馴染みやすいなど、採用だけでなく人材の定着~早期活躍にも効果があるといわれています。
一般的な手法ではリーチしづらい人にも関心を持ってもらえる
株式会社リクルートが2019年に調査した結果では、リファラル採用で選考を受けた人のうち約7割が「その会社や事業に興味があった訳ではなかった」と回答。つまり、知人から声をかけられたことが、自分では想定していない選択肢との出会いになったことが示されています。
出典:株式会社リクルート「リファラル採用で声をかけられた人の実態調査」2019年3月調査
この結果から見えるのは、社員を通して自社の採用を広報することで、一般的な採用広報手段では興味を持たれにくい人たちにもリーチできる可能性があることです。「知人が勤めていなければ転職先として考えもしなかった」「転職すること自体を考えていなかったけれど、興味が湧いた」など、出会いの可能性が拡がっていることもリファラル採用が注目されている理由のひとつです。
エンジニア採用が難しい理由
必要なスキル・経験を持つ人が限られている
では、リファラル採用が特にエンジニア採用やIT企業で重宝されているのは、なぜでしょうか。それは、IT人材に求められるスキル・経験の特殊性も一因です。例えば、システムエンジニアやプログラマーとして働くには、システムを動かす仕組みやプログラミング言語などの知識が必須です。また、一口にシステムエンジニアといってもアプリエンジニア、インフラエンジニアなどのように役割は細分化しており、それぞれに求められる能力は異なります。
また、近年ではビッグデータやAI活用に携わるエンジニアや企業のデジタルトランスフォーメーションを推進するための人材など、次々と新しい役割も生まれています。そのため、経験者を採用しようとすれば対象者は非常に限られてしまうこともあります。応募者を選考する以前に、出会うこと(応募者を集めること)の難易度が高い領域です。
エンジニアならではの「見極め」「口説き」が必要
採用活動は、「集める(母集団形成)」「見極める(相手の能力を評価する)」「口説く(相手にあわせて自社の魅力を伝える)」の3つのプロセスが重要とされています。エンジニア採用は、集める難易度が高いだけでなく見極めや口説きが難しいのも特徴です。というのも、専門性の高い人材であるため、採用に携わる人にも相応の知識が求められます。
候補者の能力が現場で通用するのかを評価したり、仕事内容や職場環境をアピールしたりするには、現場を深く知っていることが何よりも重要です。現場の社員があらかじめ見極めと口説きを行うプロセスであることには、大きな意義があります。
エンジニアをリファラル採用するときの確認ポイント
制度は周知されているか
人材紹介や求人媒体(求人メディア)を活用する場合、それらサービスの提供事業者が、求職者に積極的に広報をしてくれますが、リファラル採用は社員が動かなければ何もはじまりません。だからこそ、人事はリファラル採用の制度を設けるだけでなく、社員への積極的な働きかけが必要になります。
社内広報の担当者と協力しながら制度を周知してもらうためのメール配信を行ったり、リファラル採用に関する情報をまとめた特設サイトや冊子を準備したりして、認知・理解を深めていきましょう。制度のスタート時だけでなく、採用成功事例を紹介するなど、継続的な広報も重要です。
また、エンジニアのリファラル採用に積極的な企業では、社外からの参加を歓迎する社内イベントを開催しているところもあります。エンジニアが集まる勉強会やコンテストなど、社員が知人を誘いやすいきっかけをつくることも効果的です。
紹介者への配慮はできているか
認知が高まったとしても、社員にしてみれば声をかけるのは家族や友人など大切な存在ですから、心からすすめたいと思えなければ話をしようとはならないでしょう。その意味では、採用以前に社員のエンゲージメントが向上できていないと上手くいきません。加えて、現場の社員は採用がメインのミッションではありません。内発的な動機付けや、行動を阻害するような壁を取り除く配慮が必要です。
<紹介者への配慮の一例>
- 業務の一部として、活動の成果を評価する
- 成果に応じてインセンティブを支給する
- ツールの導入などで業務負荷を極小化する
- 制度の詳細や採用情報をオープンにする
- 専用の相談窓口を設置するなどホットラインをつくる
不採用時の対処は適切か
リファラル採用は、社員とのつながりを通じて採用確度を高める手法ではあるものの、採用を確約するものではありません。そのため、選考の結果不採用になることも当然ありえます。この点は誤解のないように社員へ広報する際も明示しておく必要があります。応募者が不採用になり、その事実が応募者から紹介者に伝えられた場合、応募者だけでなく紹介者のモチベーションにも悪影響を与えかねないことに注意しましょう。今後、リファラル採用に協力してもらえないだけでなく、エンゲージメントが著しく下がり離職につながる恐れもあります。
会社に不信感を抱く火種とならないためには、不採用となった理由は、応募者の方に真摯に伝えることが大前提です。応募者からすれば、友人を介していることで高い期待値で選考に臨んでいることも十分考えられます。なぜ採用を見送ったのかを丁寧な言葉選びで伝えるようにしましょう。
また、自社に興味を持ってもらえたこと、選考に参加してもらえたことへの謝意を添えることも大切です。たとえ今は採用に至らなかったとしても、自社を深く知る機会によって将来的な顧客やパートナー予備軍になることや、別の機会に再度選考に臨んでもらえるなど、長い目で良好な関係性を継続することにもつながります。
リファラル採用をするメリット・デメリット
リファラル採用のメリット
ここまでの内容を踏まえ、リファラル採用の長所・短所を整理します。現場社員の視点が入ることで職務内容や自社のカルチャーにフィットする人材に出会いやすいのが大きな特徴です。エンジニア同士の横のつながりによって、専門スキルを持つ人材に効率的にアプローチできます。また、外部コストがほとんどかからないため、採用コストが高騰しているエンジニア採用で注目が集まっている手段のひとつです。
- スキル・タイプの両面で自社にマッチした人材に出会いやすい
- 採用コストを抑えられる(外部コストがほぼかからない)
- 既存社員のリアルな意見を聞いた上で応募してくれる
- 転職潜在層にもアプローチできる
- 入社後のミスマッチが少ない
リファラル採用のデメリット
一方、リファラル採用のネックになるのは、声をかける対象が社員の人脈次第でもあり、すぐに採用したいようなニーズには応えづらいこと。外部コストは抑えられる反面、現場社員や人事の業務負荷が高くなる傾向にあり、社員の協力体制をどう構築・維持するかなど、ケアすべきポイントが多岐に渡ることです。また、どうしても似た者同士が集まりやすいため職場の多様性が低くなり、知り合いばかりが集まると「慣れ合い」になってしまうリスクがあることも理解しておきましょう。
- 不確実性が高く、急ぎの採用やピンポイントの採用には向かない
- 現場に負荷がかかる
- 社内調整など、人事の負荷も上がる
- 成果が社員のエンゲージメントに左右される
- 社員のタイプが偏る
リファラル採用を成功させるポイント
社員の高いエンゲージメントが大前提
リファラル採用の成功には、既存社員の会社への貢献意欲が欠かせません。意欲の源泉となるのは、今の職場を気に入っていること。もちろん、オフィス環境や待遇面、フレックスタイム・リモートワークなどの人事制度などがエンジニアにフィットしていることも大切ですが、エンゲージメント向上に寄与するのはそれだけではありません。経営・サービスの理念や戦略に共感できるか、自分が目指すキャリアを実現できるか、実力が正当に評価されるかなど、社員との良好な関係性を築き上げていることが、最も重要なポイントです。
社員が魅力を伝えるための情報はあるか
また、いくら社員がリファラルに意欲的だとしても、社員は普段から採用に携わっている人事ほど自社を語るための言葉や技術が備わっていません。自分の体験談は語れても、会社としての一般論で話せなかったり、経営戦略の詳細までは分からなかったり。そのため、紹介する際に必要な情報を整理・集約して社員が話しやすいようにサポートしておくことが大切です。また、エンジニアの場合はテクノロジーを起点に話が広がりやすいのも特徴ですので、社員接点をフックに先輩エンジニアとの交流会や、自社のトップエンジニア主催の勉強会に招待するといった手法で魅力を伝えていくのも有効です。
ここまでご紹介したように、リファラル採用は他の採用チャネルにはいない人材にもアプローチしていくものです。専門性の高いエンジニア採用だからこそ、エンジニア同士の人脈を活用できれば、求める人材に出会える可能性は高まります。ただし、採用スピードや業務負荷などデメリットもありますので、他の採用手法と組み合わせながら自社の採用活動の全体像を設計されることをおすすめします。