目次
第二新卒の意味や既卒採用との違い
そもそも第二新卒とはどのような人材を指しているのか、詳しく解説します。
第二新卒採用とは何か
「第二新卒」とは、一般的に大学・短大・専門学校・高校などを卒業後、企業に就職したのち3年以内に転職を考えている人材を指して使われる言葉で、明確な定義がある言葉ではありません。
厚生労働省においても、「それぞれの企業の中で第二新卒の定義がある場合にはその定義によるものとし、特に定義がない場合は、学校(高校、専門学校、短大、高専、大学、大学院)卒業後、おおむね3年以内の者(学校卒業後すぐに就職する新卒者は除く。また、職務経験の有無は問わない)」としています(※)。
人材採用には大きく「新卒採用」「中途採用」の2つがあり、第二新卒は中途採用に分類されますが、即戦力を期待する一般的な中途採用とはやや異なり、新卒採用と同様にポテンシャル重視で採用し育成するケースが多い傾向にあります。
なお、第二新卒の捉え方は企業によって異なります。卒業後4~5年までを第二新卒と考える企業もあれば、卒業後の年数をもう少し長く捉え、ある程度のビジネススキルが身についている人材を指すこともあります。
第二新卒採用と既卒採用の違い
第二新卒と似たような言葉に「既卒」がありますが、「既卒」は卒業後、「国家資格取得や公務員を目指していた」「望んでいた企業からの内定が得られなかった」など、さまざまな理由で一度も就職せずに、就職活動を継続している人材のことを指す場合が多く、第二新卒と既卒は、就業経験のある・なしで区別されていることもあります。
既卒採用の場合は、就業経験はないものの、目標に向かって努力していた意欲や熱意に注目し、ポテンシャルを評価する企業もあるようです。
第二新卒を新卒扱いで採用する企業も
厚生労働省では、青少年の雇用機会の確保を目的に、「卒業後3年間は、新卒枠で応募可能にすることを企業の努力義務とする」という指針を示しており、新卒と同じフローで第二新卒の採用を行っている企業もあります。
新人研修を新卒入社者と一緒に行えたり、入社後も新卒入社者と関係が築けたりするなど、早期離脱防止の効果も期待できるようです。
出典:厚生労働省のホームページ( https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000000wgq1.html)
第二新卒採用が注目されている背景
少子化が進み、構造的な人手不足で新卒採用の充足難易度が上昇しており、第二新卒の採用を拡大する企業が増えています。
実際に、第二新卒の求人は増加しています。リクルートエージェントにおける「第二新卒歓迎と記載がある求人」(※1)の推移を見ると、2009年から2013年度の平均を1とした場合、2022年度は63.5にまで達しています。5年前の2017年度と比べても、5.4倍に拡大しています。
また、26歳以下のZ世代に「現在在籍する会社でどれだけ働き続けたいか」と質問したところ、「定年・引退まで働き続けたい」と回答した人は約2割(20.8%)にとどまっており、キャリア形成の選択肢として転職を意識している若手ビジネスパーソンが増えていると考えられます。
一方、就業観の変化や就活時のミスマッチが新卒者の早期離職に繋がり、離職率は20年間、30%以上で推移しています(※2)。「新規学卒者の離職状況」によると、令和3年3月に卒業した新卒のうち3年以内に離職した人は34.9%に上り(※3)、新卒入社した社員の約30%以上が3年以内に退職しています。その多くが転職市場に流入しており、「第二新卒採用」は人材が確保できる有効な手段の一つとなっています。
※2 出典:厚生労働省のホームページ( https://www.mhlw.go.jp/content/11805001/001318971.pdf)
※3 出典:厚生労働省のホームページ( https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000177553_00007.html)
第二新卒採用のメリット
新卒採用や一般的な中途採用と比べたときの、「第二新卒採用」のメリットについて解説します。
基本的なビジネスマナー・ビジネススキルが身についている
就業経験のある第二新卒は、新卒入社した企業で新人研修を受け、基本的なビジネスマナーなど社会人としての基礎は身につけているケースが多いため、新入社員研修の手間・コストが削減でき、場合によっては即戦力としての活躍も期待できるでしょう。
通年採用できる
第二新卒は、中途採用と同様の扱いにしている企業が一般的には多いようです。したがって、新卒採用とは異なり通年での採用が可能となるでしょう。
そのため、企業のニーズに応じて、第二新卒も採用ターゲットにすることで、必要なタイミングで人材を採用できる可能性が高まります。また、選考も通常の中途採用と同じ流れであれば、応募から数週間~2カ月ほどで内定・入社とスピーディに採用できるかもしれません。
柔軟性があり、職場に馴染みやすい
就業経験のある第二新卒の場合、他社での就業経験が浅いため、前職の仕事の進め方や習慣などに染まりきっていないことが特徴の一つです。
第二新卒採用が向いていると考えられる企業の特徴
第二新卒採用が向いていると考えられる企業の特徴をご紹介します。
幹部候補生を育てたい
新卒で優秀な人材を確保し、幹部候補生として育成したいと考える企業は多いと思います。新卒採用の充足難易度が高まっている今、ポテンシャルが高く伸びしろがあり、自社のカルチャーに早く馴染みやすいとされる第二新卒は、新卒と同様に「幹部候補生」となり得ます。
第二新卒で採用した人材の中から、自社によりフィットし活躍が期待される人材を選抜し、中長期視点で幹部候補生として育成する方法が考えられます。
社内の教育・サポート体制が整備されている
就業経験のある第二新卒は、短いながらも他社での社会人経験があり基本的なビジネスマナーやスキルなどを身につけてはいますが、業務に関する手厚い教育・研修は必要です。
したがって、ある程度育成体制が整っている企業のほうが第二新卒を受け入れやすく、スムーズに早期戦力化が図れると考えられます。
第二新卒者を採用する方法
第二新卒を採用するための方法をご紹介します。
人材紹介(転職エージェント)の活用
転職エージェントなどの人材紹介サービスを使って採用するという方法です。
人材紹介サービスには、たとえば「リクルートエージェント」などの総合型の転職エージェントや、20代・第二新卒に強みを持つ特化型転職エージェントなどがあり、一般的にはそれぞれ専任の担当者が付き、企業の求める要件に合う人材を紹介してくれます。
人材紹介は成功報酬型が多く、その場合は初期費用が発生しないというメリットがあります。採用コストは、入社した人材の想定年収の約35%が一般的ですので、通常の即戦力を求めるキャリア採用よりはコストが抑えられることが多いようです。
なお、リクルートエージェントの登録者は、一般的に第二新卒採用の対象層に該当する25歳までの割合が最も多いのが特徴です。
求人媒体(求人メディア)
求人媒体、特にWeb媒体は、若手ビジネスパーソンとの相性がいいとされているようです。「リクナビNEXT」などの幅広い業界・職種を網羅した転職サイトなどにも、第二新卒特集が設置されていますし、20代の転職者を対象にした転職サイト、会員数の9割以上が20代の第二新卒特化型媒体もあります。
転職イベント
転職イベントとは、企業がブースを出展して会社説明や面談などを行います。転職フェアとも呼ばれています。求職者からすれば、一度にさまざまな企業に出会えることから、多くの来場が期待されます。
「第二新卒」や「経験が浅い人材」に特化したイベントが開催されるケースも多く、そういうイベントを選ぶことで人材との出会いを増やせるでしょう。求職者に直接、自社の魅力や仕事のやりがいなどを伝えることができるのもメリット。イベントによっては、その場で面接まで進めることも可能です。
リファラル採用
リファラル採用とは、自社社員の知人・友人を紹介してもらう採用手法です。自社の企業文化や仕事内容をよく理解した社員からの紹介になるためマッチ度が高い傾向があり、近年多くの企業が取り入れています。
第二新卒採用を目指す場合は、特に自社の若手社員に協力を仰ぐといいでしょう。
大学・キャリアセンターの利用
大学のキャリアセンターは、学生の就職支援やキャリア支援を目的とした部署です。在校生がメインではありますが、多くの大学が卒業・修了後に就職活動を継続する既卒者も対象にしています。採用に際しての費用は発生しないため、これまでに採用実績のある大学などに求人情報を出し、ネットワークを作っておくのもいいでしょう。
第二新卒者を採用するときの注意点
メリットの大きい第二新卒採用ですが、入社後、定着し活躍してもらえる人材を採用するためには、注意したほうがいい点もあります。
スキル・経験だけでなくポテンシャルも評価する
中堅~ベテラン層の採用も並行して行う場合、第二新卒のスキル・経験が浅く、「もう少し経験が欲しい」「即戦力となり得る人に来てほしい」など、徐々に採用のバーが上がってしまうケースがあるようです。
第二新卒の魅力はポテンシャルが高く柔軟性もある点であり、次世代を担ってくれる人材であるということを、採用選考前に改めて理解しておくことが重要です。
面接では退職理由やキャリア観など多角的に話を聞く
第二新卒採用の応募者は、比較的短期間で勤務先を退職した、もしくは退職しようとしている人たちが多くなるでしょう。
第二新卒で転職を志す人が、必ずしも「忍耐力がない」「ストレス耐性が低い」とは言えません。前職入社時はまだ学生で、就業経験がないため実際に働かないとわからなかったことも多くあるでしょう。ただ、売り手市場の今、転職先がミスマッチだと感じた場合、すぐに次に移ってしまう可能性はあります。再び短期間で離職してしまわないように、面接時にできる限り応募者との相互理解を深め、ミスマッチを防ぐことが大切です。
そのためには、退職理由やキャリア観など、多角的に質問して応募者の意向を知ることがポイントです。たとえば、新卒で入った会社での経験をどう受け止めているか、何を学び、何を今後に活かそうと考えているのか、実際に働いてみてキャリア観はどのように変化したか、自分の強みや向き・不向き、やりがいの源泉などは何か、働く上で何を大事にしているのか…などを確認しておくと、自社とのマッチング度合いを測りやすくなります。
第二新卒者を受け入れるポイント
実際に第二新卒者を受け入れるにあたり、対応しておきたいポイントをご紹介します。
人材要件を明確に設定する
第二新卒採用においても、人材要件の設定は重要です。「ある程度スキルが備わっていればいい」など、人材要件が不明瞭だったりブレていたりすると、希望に合った母集団が形成しにくいだけでなく、選考担当者の足並みが揃わず、ミスマッチを生む恐れがあります。
自社のバリューやクレドなどを明文化している場合は、社風へのマッチ度合いを基準にしたり、適性検査などを用いて自社社員のタイプを数値化・可視化して参考指標としたり、配属予定部署の社員と面談の機会を設けて相性を確認したりする、などの工夫も必要です。
第二新卒向けに育成計画や処遇を設計しておく
第二新卒は新卒とも、中堅・ベテラン層とも異なる経験・スキルを持っているため、第二新卒向けの育成計画や処遇などを考え、受け入れ態勢を整えておくといいでしょう。
入社後は、メンター制度や1on1などで、不安や懸念点をこまめに拾って払拭しつつ、職場の人間関係構築支援や、キャリア形成に関する相談や支援などを行い、サポートし続けることも大切です。
アドバイザー
組織人事コンサルティングSeguros / 代表コンサルタント
粟野 友樹(あわの ともき)氏
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。