目次
エグゼクティブサーチとは
エグゼクティブサーチとは、主に経営・上級管理職を中心とした重要ポジションに合致する人材をピンポイントで発掘する採用手法です。
人材の流動化やグローバル化などを背景に、ハイクラス層の採用手法として注目されています。また昨今では、ミドルマネジメント層や、DXなど先端事業を推進するための人材獲得のためにエグゼクティブサーチを活用するケースも増えつつあるようです。
エグゼクティブサーチとヘッドハンティングの違い
エグゼクティブサーチとヘッドハンティングは、高いスキルや専門性、豊富な経験を持つ優秀な人材を、非転職活動者を含めピンポイントで採用する手法という点で共通しています。
その中で、エグゼクティブサーチは主に、経営陣や上級管理職などといった高度なスキルと経験を持つ、いわゆる「エグゼクティブ層」を対象としているケースが多いようです。
一方、ヘッドハンティングでは、エグゼクティブ層だけでなく、例えばエンジニアなど専門性が高く希少性も高いスペシャリスト職も対象となることがあるようです。
エグゼクティブサーチと人材紹介の違い
エグゼクティブサーチと人材紹介は、「企業のニーズに合わせ、求める条件に沿った人材を探し、紹介する」という点では共通しています。ただ、人材の探し方やサーチ対象に違いがあります。
登録型の人材紹介の場合、データベースに多くの求職者を集めておくことで、クライアント企業から依頼があった時に、登録者の中からマッチングして候補者を紹介する仕組みを作っています。候補者発掘にはそれほど手間がかからないとされているため、リテイナーフィー(着手金)はかからず、候補者が採用に至った場合のみ紹介手数料が発生する成功報酬型を採用している人材紹介会社がほとんどです。そのためメンバー層の採用や、比較的候補者数が多いミドル層の採用には登録型の人材紹介が適している場合が多いです。
一方エグゼクティブサーチは、転職市場全体から候補者をサーチするだけでなく、時に独自の人脈やネットワークを駆使しながら時間をかけてサーチするケースもあります。候補者発掘には、相応の手間やコストがかかるため、着手金と成功報酬がかかる「リテイナー型」が多く取られています。トップマネジメント層や、発掘難易度の高いマネジメント層の採用において有効な手段の一つです。
エグゼクティブサーチが注目されている背景
背景としてまず挙げられるのは、管理職採用拡大の動きです。
グローバル化やDX推進、サステナビリティ強化など、急速な事業環境の変化に伴い、多くの企業において事業変革の推進が急務となっています。その中、先頭に立って変革を推進する経験豊富な管理職クラスを、外部から採用する動きが顕著になっています。
リクルートエージェントに寄せられる求人データによると、2022年度の管理職求人は増加傾向にあり、2016年度の3.67倍に拡大しています(※)。
この動きを受け、エグゼクティブ層のみならず、重責を担えるマネジメント層の採用もエグゼクティブサーチに任せたいと考える企業が増えているようです。人材不足の深刻化に伴い、中途採用の難易度が高まっていることも、エグゼクティブサーチの活用を後押ししています。
また、ガバナンス強化に対する企業の意識の高まりも、理由として挙げられます。自社の規則や管理体制を見直すためには、経験豊富なエグゼクティブ人材やリスク管理に詳しい専門人材が必要であり、理想的な人材を紹介してくれるエグゼクティブサーチを採り入れる企業が増えています。
エグゼクティブサーチへの依頼が効果的なケース
エグゼクティブサーチへの依頼が効果的と考えられるケースを、理由と共にご説明します。
幹部や経営層などの重要ポジションに相応しい候補者が社内に見つからないケース
エグゼクティブサーチでは、経営層・幹部層といったエグゼクティブ層にアプローチできる人的ネットワークやノウハウを保有しており、採用難易度が高い需要ポジションでも採用実現につながりやすいと考えられます。
そのため、事業が急速に拡大している企業や、株式上場を目指している企業、グローバル展開をする企業などで、「成長をけん引してくれる幹部人材が社内にいない」「企業の成長フェーズが変わり従来の人材では対応できない」などのケースに有効です。
組織力強化に向けて外部からリーダーとなる人材を迎えるケース
デジタル化、グローバル化、ガバナンス強化など専門性の高い領域をリードできる希少な人材を採用するにあたって、転職顕在層だけではなく潜在層含めてアプローチできる点がエグゼクティブサーチの魅力です。
したがって、DX化を推進したい企業、グローバル対応が急務な企業、ガバナンスを強化したい企業、組織や事業の再編・再生が必要な変革期にある企業、急成長する組織をリードする人材を必要とする企業など、各領域で豊富な経験を持つスペシャリスト人材を採用したい企業においては、エグゼクティブサーチが効果を発揮しやすいでしょう。
新規事業の立ち上げや事業承継、後継者問題などの課題解決に向けて必要な人材を採用するケース
募集を競合他社に知られたくない場合や、検討中の新規事業領域に精通した人材や将来の幹部候補となる人材が社内に見当たらない場合などにも、有効な採用方法として期待できます。
例えば、新規事業領域に詳しい人材が不足している企業、責任者クラスの人材がいないスタートアップ・ベンチャー企業、後継者が不在の中小企業・老舗企業などが当てはまると考えられます。企業の将来を担う人材採用になるため、より高いマッチング精度が期待できるエグゼクティブサーチは効果的といえるでしょう。
エグゼクティブサーチファームの2つの種類
エグゼクティブサーチファームとは、クライアント企業からの依頼を受けて、提示要件に合う人材を探し出し、スカウトしてマッチングを図った上でクライアントに紹介を行う企業のことを指し、ヘッドハンティング会社とも呼ばれます。
エグゼクティブサーチファームには、主に次の2種類があります。
リテイナーファーム
企業と一定期間にわたり継続的な契約を結び、固定報酬型でターゲットとなる人材を探すエグゼクティブサーチです。
募集ポジションや採用難易度などによって異なりますが、主にトップマネジメント層を探す場合に利用されるケースが多く、求める人材が見つかるまでサーチ活動を続け、長い場合は1年以上の期間に及ぶケースもあります。
候補者を探し出すのに相応の手間やコストがかかるため、採用活動開始時に着手金(リテイナーフィー)が発生し、報酬は成立の可否にかかわらず支払われます。さらに、人材獲得に成功した際には、採用ポジションの年収の数十パーセントを報酬として支払う場合もあります。
コンティンジェンシーファーム
完全成功報酬型のエグゼクティブサーチで、ターゲットとなる人材を採用できた段階で成功報酬を支払うことになるため、依頼の段階では費用は発生しません。初期費用を抑えられるため、リテイナーファームが対象とするトップマネジメント層以外にも、メンバー層やミドル層など広範囲のポジションの採用に利用されています。
エグゼクティブサーチを依頼するメリット
エグゼクティブサーチに採用を依頼するメリットについて解説します。
転職市場に出ていない人材にアプローチできる
非転職活動者を含め、高い専門性や高度なスキルを持った人材を広く探し出せる点が、エグゼクティブサーチの特徴です。
多くのエグゼクティブサーチファームでは、独自の業界内ネットワークや、経営者層とのネットワークを駆使して人材をリストアップしています。この情報収集能力を強みに、自社では探すのが難しい希少な人材でもピンポイントでサーチしてくれます。
採用難易度の高いトップマネジメント層の採用を進められる
各エグゼクティブサーチファームが持つ独自のネットワークは、「プロ経営者」を含めたトップマネジメント層にも及びます。
候補者が企業の採用要件に合う人材かどうかを多角的に見極める力も有しており、数あるトップマネジメント層の候補者の中から、スキルや経験、資格のみならず、既存の経営陣との相性やリーダーシップ性などを総合的に判断した上で紹介してもらうことができるでしょう。
自社の採用課題の言語化力が高い
エグゼクティブサーチファームはスクリーニング力が高く、候補者の情報だけでなく、自社の情報から今の課題や採用ステップを言語化する能力にも優れています。
候補者のこれまでのキャリアだけでなく、クライアント企業にマッチした価値観や人柄を備えた人物かどうか、求めているポジションに適性があるかどうかなど、面談などを通じて多面的に見極めます。そのため、ミスマッチの可能性を極力抑えられる点も特徴です。
エグゼクティブサーチに依頼する流れ
エグゼクティブサーチへの依頼の流れについてステップを追ってご説明します。
1.採用ターゲットの明確化、採用手法の検討
まずは、採用ポジションの人材要件(求める経験・スキル・資格)や人物像、期待する役割などを具体的に言語化しておくことが大切です。採用の目的や案件の難易度によって、最適な採用手法は異なります。リテイナーファームかコンティンジェンシーファームか、会社によっても得意な分野が異なりますので、何社かのファームで比較検討することをおすすめします。
2.エグゼクティブサーチファームとの打ち合わせ
エグゼクティブサーチファームに相談をすると、まず専門の担当者が今回の求人概要やターゲット像、経営課題や採用課題などを詳細にヒアリングした上で、サーチ活動費用を算出し、見積もりの検討を行います。人材サーチ方法やスケジュール、面談方法などの細かなすり合わせも行い、問題がなければ契約を締結します。
エグゼクティブサーチにおいてはヘッドハンターの力量が採用成功の鍵となる場合が多いです。担当ヘッドハンターのこれまでの実績や得意分野を確認し、納得した上で依頼することも重要になります。
3.エグゼクティブサーチファームによるリサーチ・リスト提出
契約締結後は、エグゼクティブサーチファームによるサーチがスタートします。リサーチャーやヘッドハンターが業績・実績・キャリア等の情報をベースに作成した候補者リストを提示しますので、企業側で絞り込みを進めていきます。
4.候補者へのアプローチ
企業側で絞り込んだ候補者リストをもとに、エグゼクティブサーチファームで候補者へのアプローチを進めます。ヘンドハンターが候補者と信頼関係を構築し、採用ポジションとのマッチングを見極めるために、何度か面談を行うことが一般的です。候補者側がオファーされた企業との面談の意思を固めたら、秘密保持契約を締結した上で企業名を開示し、オファー内容の詳細を説明していきます。
5.候補者との面談・オファー
候補者・企業で面談の意向が合致したら、エグゼクティブサーチファームを含めた三者で面談を実施します。相互理解が深まり、企業と候補者の双方が入社に向けて前向きとなれば、エグゼクティブサーチファームが間に入って、入社に向けた細かな条件面の調整や交渉に入ります。
6.内定・フォロー
候補者が入社を決めた段階で、採用に向けた準備を進めていきます。トップマネジメント層の場合、現職での退職交渉や引き継ぎに時間がかかるケースも多いため、無事に入社するまでエグゼクティブサーチファームがフォローするのが一般的です。入社後も定着して活躍できるよう、ヘッドハンターが定期的に候補者に連絡をしてアドバイスを行うケースもあります。
エグゼクティブサーチファームに依頼するときの注意点
エグゼクティブ層やスペシャリスト採用において効果的なエグゼクティブサーチですが、実際にエグゼクティブサーチファームに求人を依頼する場合には注意したほうが良い点もあります。
あらかじめ十分な採用コストを確保しておく
まず注意しておきたいのは、採用コストが高い点です。通常では探すことのできない優秀な人材を発掘できる分、エグゼクティブサーチファームへの依頼料は高額になるケースが多いです。また。リテイナーフィー(着手金)は、採用の可否に関わらず発生する報酬である点にも留意しましょう。
採用決定までにかかる時間に余裕を持たせる
採用決定までに時間がかかる点も、注意が必要です。潜在層を含めたサーチにはそれなりの手間がかかる上、アプローチ後に実際の面談や入社交渉に至るまでに時間を要するケースもあります。
エグゼクティブサーチの場合、平均しても最初のアプローチから内定まで4~6カ月程度の期間が必要といわれており、急募のポジションの採用においては、その点を考慮する必要があります。
全てのポジションの採用を依頼しようとしない
採用ターゲットや採用難易度に合わせて、最適な採用手法は変わります。
エグゼクティブサーチファームは、採用難易度の高い優秀な人材の採用において有効な手段とされますが、その他のポジションにも有効とは限りません。
エグゼクティブサーチファームに依頼する前に、このポジションはエグゼクティブサーチの手法が適しているか否か、メリット・デメリットも考慮した上で検討することをおすすめします。
リクルートグループのエグゼクティブサーチサービス
リクルートグループ内で展開しているエグゼクティブサーチサービスについてご紹介します。
リクルートエグゼクティブエージェント
経営層・エグゼクティブ層(社長・取締役、CEO・COO・CFOなどの経営執行責任者、事業部門責任者、社外取締役)に特化した人材紹介・エグゼクティブサーチを展開しており、事業のライフサイクル、企業ステージを意識し、次の成長・発展に向けた経営改革を実現できる人材を紹介しています。
リクルートエグゼクティブエージェント:https://www.recruit-ex.co.jp/
RGFエグゼクティブ サーチ ジャパン
主にバイリンガル人材向けのエグゼクティブサーチファームで、リテイナーファームとコンティンジェンシーファームの両方を備えています。日本国内のみならず、アジア諸国を中心にグルーバルにサーチパートナーを有しており、より広範囲でグローバル人材市場をリサーチしています
RGFエグゼクティブ サーチ ジャパン:https://www.rgf-executive.com/ja/
人材採用にはリクルートエージェントの利用もオススメ
ハイクラス転職に強みを持つ人材紹介会社を利用するという方法もあります。
リクルートエージェントでは、ハイクラス・高年収領域専門の転職支援サービスも展開しており、多くのハイクラス層が登録しています。
エグゼクティブ・ハイキャリアのマッチング実績も豊富であるため、エグゼクティブサーチファーム以外の選択肢としてお勧めです。
リクルートエージェント:https://www.r-agent.com/executive/
アドバイザー
組織人事コンサルティングSeguros / 代表コンサルタント
粟野 友樹(あわの ともき)氏
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。