SNSを活用した人材採用や、新卒採用で一般化したインターンシップ、オンライン面接など、採用活動は複雑化しています。採用担当者が、さまざまな新しい採用手法に精通することも容易ではありません。そのため、「採用コンサルタント」を検討するのも一法でしょう。
今回は、採用コンサルタントの概要や利用する際のメリット・懸念点などについて人事組織コンサルティングSeguros、代表コンサルタントの粟野友樹氏が解説します。

採用コンサルタントとは?

本章では、「採用コンサルタント」にまつわる下記3つの項目について、解説します。

  • 採用コンサルタントの概要
  • なぜ採用コンサルタントが注目されているのか
  • 採用コンサルタントと採用代行の違い

採用コンサルタントの概要

「採用コンサルタント」とは、一般的に人材採用に関するコンサルティングサービスを提供する企業や人(職種)を指します。
企業の採用担当者に対してノウハウの提供や最適な戦略・プロセスの提案、一部の業務サポートなどを行っています。一口にコンサルティングといってもサービスメニューは多岐にわたります。コンサルティング会社や採用コンサルタントによって得意領域や経験、スキルなどにも違いがあるため、自社のニーズにあったコンサルティング会社や採用コンサルタントを選ぶことが大切です。

なぜ採用コンサルタントが注目されているのか

採用コンサルタントが注目されている背景には、下記2つの要因があると考えられます。

  • 少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少
  • 採用手法の多様化

厚生労働省の『令和6年版厚生労働白書』によると、15歳~64歳の人口は令和2(2020)年7,509万人となっており、その後も減少が続けば、令和27(2045)年には5,832万人にまで減少すると試算されています。

少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少によって、人材の採用が難しくなっていることから、企業は人材を採用するためにより高度な戦略が求められるようになりました。その結果、採用ノウハウに長けた採用コンサルタントの需要が増し、注目されるようになったと推察されます。
また、採用手法が多様化しており、企業の採用担当者の知見だけでは、適切な採用手法を見極められなかったり、適切に運用できなかったりする場合もあり、採用に関する知見に富んだ採用コンサルタントに力を借りる企業もみられるようになりました。そのような実情も、採用コンサルタントの注目が高まる要因になったと思われます。

参考:厚生労働省のホームページ(https://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/kousei/23-2/dl/01.pdf)

採用コンサルタントと採用代行(RPO)の違い

採用コンサルタントは、採用に関するコンサルティングサービスを提供する人や職種、サービスのことを指します。一方、採用代行は、採用活動に関連する業務を外部サービスに委託すること、もしくは委託を受ける企業のことを指します。

採用コンサルタントが採用活動にまつわるノウハウを提供するサービス(もしくは人、職種)であるのに対し、採用代行(RPO)は企業の採用活動に関連する業務の一部もしくはすべてを代行するサービスです。ただし、2つのサービスは完全に区分されているわけではなく、採用コンサルタントや採用代行事業を運営する企業によって定義や提供するサービスの範囲が異なることもあります。

採用コンサルタントのサービス

採用コンサルタントのサービス内容は、採用戦略の立案から一部業務のサポートまで多岐にわたります。ここでは代表的な下記6つのサービスについて紹介します。

  • 採用戦略立案
  • 採用プロセス設計
  • 母集団形成
  • イベント企画・運営
  • 採用事務サポート(一部業務のアウトソース)
  • 活動報告・フィードバック

サービス1:採用戦略立案

最新のマーケット環境、想定される採用競合情報、採用ターゲットの動向など、幅広い情報を提供しながら、採用担当者と一緒に採用の目的を実現するための戦略を練り上げていきます。客観的な視点で採用活動を支援するため、自社では気づきにくい採用課題を発見し、本当に自社にあった人材の提案を行うなど、採用の根幹を担う部分にも深く介在していきます。

サービス2:採用プロセス設計

戦略に基づいて適切な採用プロセスを組み上げていきます。採用予定人数や予算を踏まえてベストな母集団形成手段を選定します。内定までの効果的な選考プロセスを定める上でもコンサルタントの知見は有効活用できるでしょう。また、採用プロセスにおいてキーパーソンとなる面接担当者やリクルーターなどにレクチャーするためのマニュアル作成や、研修・トレーニングを担ってくれる場合もあります。

サービス3:母集団形成

コンサルティング会社によっては、求職者を集めるための採用広報を担う企業もあります。コンサルティング会社によっては、広告代理店や求人媒体(求人メディア)から派生しているサービスもあります。その場合、求職者を集めるため採用広報も行えることが多いようです。採用ブランディングの提案や各種広報物のメッセージに一貫性を持たせるようなコミュニケーションのマネジメントも担います。

サービス4:イベント企画・運営

会社説明会やインターンシップ、社員座談会・懇親会の実施などのイベントの企画・運営を行います。採用イベントというと新卒採用に多いイメージがあるかもしれませんが、近年は採用環境の激化や相互理解を深める目的で中途採用でもイベントを開催するケースが増えています。あくまでも主催は自社という形ですが、コンテンツの企画や当日の運営などを依頼できる場合もあります。

サービス5:採用事務サポート(一部業務のアウトソース)

応募書類の受付や面接日程の調整、合否連絡などの実務をアウトソースできるコンサルティング会社もあります。大量採用や複数の職種・ポジションを募集している場合、各種連絡や手続きだけで採用担当者の手がまわらなくなってしまうこともあるため、自社のリソースが少ない場合は社外の力を借りるのも手段の一つです。煩雑な業務をいかにミスなく効率的に進めるか、プロセスを設計するところから相談できます。

サービス6:活動報告・フィードバック

コンサルタントにとってはクライアントに成果を報告するために必要不可欠な業務です。採用担当者にとっても、自社の採用活動における現状の分析、振り返りはきわめて重要です。ただ、自社だけで活動していると「実務に追われて振り返りがおろそかになってしまう」ことも起こりがちです。採用活動のPDCAを回し続けて、採用目標を実現していくためにも、自社の採用を客観的な視点で定期的に評価する役割をコンサルタントに担ってもらえるのは有効でしょう。

採用コンサルタントの費用相場

採用コンサルティングの費用相場は、依頼内容や期間などによって異なります。本章で紹介する費用相場はあくまでも一例のため、実際の発生費用とは大きく異なる場合があります。これは参考程度にとどめ、実際に利用する採用コンサルタントに詳細を確認するようにしましょう。

ここでは、採用コンサルタントを利用する際の下記2種の費用相場について解説します。

  • 業務単位で都度支払いが発生する料金形態
  • 複数の業務を含んだ定額プラン

業務単位で都度支払いが発生する料金形態の費用相場

業務単位で採用コンサルタントを利用する場合の費用相場の例は、次の通りです。

  • 選考フロー設計・改善:20万円〜
  • 評価基準の策定:40万円〜
  • 採用スケジュールの設計:30万円〜
  • 採用ブランディング: 50万円〜
  • 内定者フォロー:30万円〜
  • 入社前後の研修:3万円〜
  • 採用業務代行:3万円〜

上記は、あくまでも相場の一例です。そのため、採用コンサルタントを利用する場合は、利用を検討している採用コンサルタントに費用の詳細を確認するようにしましょう。

h3 複数の業務を含んだ定額プランの費用相場
複数の業務が含まれた定額プランを利用する場合の費用相場の例は、次の通りです。

  • 月額:20万円〜/月
  • 年額:100万円~/年

中には、最低契約期間を定めている採用コンサルタントもあるため、利用の際は期間についても確認しておくとよいでしょう。

採用コンサルタントを利用する3つのメリット

本章では、採用コンサルタントを利用する際に得られる、下記3つのメリットについて解説します。

  • 専門家の知見を取り入れられる
  • 客観的な視点で自社の採用を評価できる
  • アウトソースによって社内の業務負荷を軽減できる

メリット1:専門家の知見を取り入れられる

採用コンサルタントを利用するメリットとして専門家の知見を取り入れられる点が挙げられます。採用コンサルタントが保有しているレベルの知見を企業の採用担当者が自力で得ようとすると、書籍を読んだり、人事カンファレンスに参加したり、横のつながりで情報収集をしたりと労力や時間がかかります。
しかし、採用コンサルタントに支援を依頼すれば、専門家の知見を取り入れた採用活動を実現できるでしょう。

メリット2:客観的な視点で自社の採用を評価できる

客観的な視点で自社の採用を評価できる点も採用コンサルタントを利用するメリットと言えるでしょう。
これまで多くの企業の採用活動を支援してきた採用コンサルタントは、さまざまな事例を知っています。自身の支援経験をもとに、自社の採用活動や採用力を客観的な視点で評価してくれるため、自社では気づきにくい課題を発見できたり、自社の魅力や強みを気づかせてくれたりすることも期待できます。

メリット3:アウトソースによって社内の業務負荷を軽減できる

採用コンサルタントを利用すれば、アウトソースによって社内の業務負荷を軽減できる場合もあります。
採用担当者の経験が短い場合は、採用戦略や採用計画の立案をアウトソースすることで、専門家の知見を活かした戦略や計画の遂行が期待できます。また、採用活動にかかわる人手が不足している場合は、業務の一部を外部に委託することで業務負荷が軽減され、本来注力したい業務に取り組めるようになるでしょう。

採用コンサルタントを利用する3つの懸念点

採用コンサルタントを利用する際は、下記3つの点に留意しましょう。

  • コンサルティング費用が、全体の採用コストに追加される
  • かわる人が増えるため、コミュニケーションのコスト・リスクが上がる
  • 会社によって得意分野が異なり、選定が難しい

懸念点1:コンサルティング費用が、全体の採用コストに追加される

採用コンサルタントを利用すると、今までの採用活動コストに加えコンサルティング費用が加算されます。今まで以上に採用コストがかかる場合もあるでしょう。

懸念点2:かかわる人が増えるため、コミュニケーションのコスト・リスクが上がる

採用コンサルタントを利用する場合、採用活動にかかわる人が増えます。そのため、コミュニケーションのコストやトラブルを招くリスクが高まる懸念もあります。採用コンサルタントと適切な連携が取れないと、採用活動にマイナスな影響を及ぼす恐れもあるでしょう。

懸念点3:コンサルティング会社によって得意分野が異なり、選定が難しい

サービス提供の範囲や得意分野は、コンサルティング会社によって異なります。そのため、自社に合った会社を選定することが難しいと感じる場合もあるかもしれません。また、自社との相性次第でコンサルティングの効果や成果が大きく変わることもあるでしょう。
慎重な選定が必要になりますが、コンサルティング会社の選定に時間や工数がかかってしまう場合もあります。

採用コンサルタントの利用に向いているケース

ここでは、採用コンサルタントの利用に向いているケースとして、下記3つのケースを紹介します。

  • 採用を本格的に始めたばかりで社内にノウハウがないケース
  • 事業フェーズや採用市場が大きく変わったケース
  • 自社で採用に割ける人的リソースが足りないケース

採用を本格的に始めたばかりで社内にノウハウがないケース

採用を本格的に始めたばかりで社内にノウハウがない場合、採用コンサルタントを利用することで、自社の採用活動に素早く採用のプロの知見を取り入れられます。採用ノウハウがない場合、知識不足や手探りでの対応が原因で、採用ターゲットに対して適切なアプローチができず、採用活動が非効率になってしまうこともあるでしょう。
採用コンサルタントを利用することで、自社のノウハウ不足を補える可能性があり、採用に関する知見が乏しい場合に生じる課題の解決につながることもあるでしょう。
このようなケースでは、採用活動の軸となる戦略や計画の立案に強みを持つサービスを活用すると良いでしょう。

事業フェーズや採用市場が大きく変わったケース

事業フェーズや採用市場が大きく変わり、これまでの採用手法が通用しない局面などにも、採用コンサルタントは有用だと考えられます。事業フェーズや採用市場が大きく変わった場合には、変化に対応した採用戦略や採用計画の策定が求められます。
その点、採用コンサルタントは、さまざまな支援事例を知っていたり、最新の採用市場の動向について把握していたりします。採用の専門家から助言を得ることで、素早く最適な戦略を遂行できたり、より最適な計画に再設計できたりするでしょう。
本ケースでは、大きく事業を転換した企業などへの支援実績を持つコンサルティング会社の利用が適していると思われます。

自社で採用に割ける人的リソースが足りないケース

自社で採用に割ける人的リソースが足りない場合にも採用コンサルタントを利用することで、リソース不足を解消できることがあります。
採用活動に十分なリソースを割けない場合、応募者への対応がおろそかになるなど、採用活動を適切な状態で推進できなくなっている可能性があります。
このようなケースでは、採用業務の一部または全体をアウトソーシングできるサービスを探してみましょう。採用業務を外部に委託することで採用担当者の業務負荷が軽減されることが期待できます。その結果、本来リソースを割きたかった業務に注力できるようになるでしょう。

採用コンサルタントを選ぶ際のポイント

採用コンサルタントの選び方・見極め方として、下記3つのポイントを紹介します。

  • コストだけで判断するのは危険
  • 自社の採用課題・リソースを整理する
  • コンサルティング会社の成り立ちからある程度の強みが想像できる

ポイント1:コストだけで判断するのは危険

サービスの範囲や強みは、コンサルティング会社によって異なります。そのため料金体系もさまざまで、月額報酬制、サービスパッケージごとの課金、一定の成果に対する成功報酬制など多岐にわたるのが実態です。単純に金額の大小だけで判断するのは難しいでしょう。

ポイント2:自社の採用課題・リソースを整理する

採用コンサルタントを最大限有効活用するには、まず自社の採用状況や採用体制を整理して、できるだけ正確に把握することから始めましょう。社内に採用に精通した人材がいないのであれば、やはり採用戦略の立案から依頼できるパートナーに依頼するとよいでしょう。また、ある程度採用課題が明確なのであれば、その課題に強いコンサルティング会社に依頼することが望ましいでしょう。やみくもに複数社に声をかけて見積もりを取ると、どうしてもコスト優先で判断しがちです。解決したい課題や目的と選定基準を明確にしておきましょう。

ポイント3:コンサルティング会社の成り立ちからある程度の強みが想像できる

一般的に経営コンサルティングから派生した会社・サービスであれば、これまで培ってきたノウハウがあるため、戦略の策定が得意なケースもあります。同様に、人材サービスから派生したコンサルティングは採用プロセスや実務の各論に強く、採用活動の伴走者としての役割に力点を置いている場合が多いようです。このように、各社の成り立ちやグループ会社の構成を確認すると、その会社がどの分野に強いかの判断材料になります。中小のコンサルティング会社の場合は、経営者や役員のキャリア・出身会社も参考になるでしょう。

採用コンサルタントを利用するときの注意点

採用コンサルタントを利用するときは、下記2つの注意点に留意しましょう。

  • あくまでも採用主体は自社
  • 状況によっては採用担当者を採用したほうが良い場合も

注意点1:あくまでも採用主体は自社

コンサルタントに採用活動を支援してもらうことで、各プロセスに専門的な知見が加わります。実際の業務を担当してもらうこともあるため、採用担当者の負担軽減に大きな効果があります。その分、他の業務に時間を割くことも可能になります。しかし、注意すべきは、採用の主体はあくまで自社であり、最終的な責任は採用担当者にあるという点です。コンサルタントは契約範囲内でしか業務を行えないため、曖昧な判断や積極的な行動を求めるのは難しいケースもあります。アウトソーシングする場合でも、専門家に任せきりにせず、日頃からスムーズにコミュニケーションが取れる体制を整えることが重要です。

注意点2:状況によっては採用担当者を採用したほうが良い場合も

採用コンサルタントはあくまでも外部パートナーです。「部分的に知見を借りたい」「一時的に大量の採用ニーズが発生した」といった場合には外部のリソースを活用したほうがコストメリットは高いといえますが、「通年で一定数以上の採用ニーズが発生する」「新卒・中途問わず常に何かしらの採用活動がある」といった状況で、内部のリソースが不足しているのであれば、採用経験者を新たに採用する方法もあります。その意味でも自社の採用活動を一度整理して、コンサルタントに依頼・相談するか検討されることをおすすめします。

アドバイザー
組織人事コンサルティングSeguros / 代表コンサルタント
粟野 友樹(あわの ともき)氏
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。

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