目次
採用マーケティングとは?なぜ注目されているのか?
本章では、採用マーケティングについて、下記4つの観点から解説します。
- 採用マーケティングとは、「採用活動にマーケティング手法を取り入れる」こと
- なぜ採用マーケティングが注目されているのか
- 採用マーケティングと採用ブランディングの違い
- 採用マーケティングと採用広報の違い
採用マーケティングとは、「採用活動にマーケティング手法を取り入れる」こと
採用マーケティングとは、「販促などに用いられるマーケティングの理論・手法を、採用活動に取り入れること」です。しかし、一口にマーケティングといっても、「市場調査」のことを指したり、「広告宣伝」のことを指したりと、人によりその認識はさまざまです。最近ではデジタルマーケティング(Webマーケティング)という言葉も盛んに飛び交うようになりました。マーケティングが専門ではない採用担当者からすると「わかるようでわからない」ことも多いのではないでしょうか。
採用活動を販促活動に置き換えて整理してみましょう。
例えば、人材紹介や求人媒体(メディア)、ハローワークなどに出した自社求人に求職者から応募が来ることは、「自社商品を店頭に並べ、消費者がその商品に興味を持ち購入を検討している」に近い状態です。しかし、販促活動は店の中だけで、ニーズのある人にだけPRするものではありません。テレビCMやWeb広告などで商品の存在を知ってもらうこと(認知)や、興味を持ち好きになってもらうこと(ファン化)も必要です。さらに、お客さまの声を集めて商品を改良・開発することや、広告宣伝方法を改善していくことも必要です。
このような視点を採用活動に当てはめてみると、採用活動を募集や選考プロセスだけではなく、その前後のフェーズも含めて捉え直す必要があることがわかってきます。つまり採用マーケティングの基本的な活動は、求職者や転職潜在層など、自社を取り巻く多くの人々と良い関係を構築していくことだといえます。
なぜ採用マーケティングが注目されているのか
採用マーケティングが注目されている背景には、下記3つの要因があると考えられます。
- 少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少
- 採用手法の多様化
- 人材の多様化
少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少により、採用対象になる人材の数も減少しつつあります。多くの企業が限られた数の人材を採用し合うことから人材採用の難易度は高まっていると推察されます。そのため、ただ単に求人情報を公開しただけでは人材を採用できないこともあり、求人情報を公開する前の企業認知の段階から戦略的に取り組むことが求められるようになりました。このような背景から採用マーケティングへの注目が高まっていると考えられます。
また、採用手法が多様化していることも採用マーケティングが注目される理由といえるでしょう。各採用手法の効果を高めるためには、マーケティングの理論や手法を取り入れ、転職者視点の運用を実施することが求められるようになりました。
加えて、社会全体で働き方改革や業務のDX化が進む中、仕事に対する価値観や仕事選びの基準も多様化しています。求職者を正しく理解し、採用ターゲットに合わせて自社の魅力を伝えていくことの必要性が増している点も、採用マーケティングが注目される一因だと考えられます。
採用マーケティングと採用ブランディングの違い
採用マーケティングとは、求職者の関心を引き、応募を促すことを目的に置いた採用活動における施策の1つです。求職者のニーズや動向を分析し、適切な採用手法やアプローチ方法を用いて、求職者が自社の求人に応募するよう促します。
一方、採用ブランディングとは、一般的に求職者に「この会社で働きたい」と感じてもらえるよう、自社のブランド力を高めるための施策を指します。中長期にわたり広く自社の魅力を発信し、企業が掲げるブランドイメージを浸透させたり企業で働くことをブランド化したりすることを目的としています。
採用マーケティングと採用広報の違い
採用広報は、一般的に求職者が自社への認知や理解を促進するために、企業の魅力や文化、ビジョンなど自社に関する情報を発信する活動や施策そのものを指します。
一方、採用マーケティングは、採用ターゲットを定め、認知から応募に至るまでを分析します。その上で、採用ターゲットへのアプローチを適切に行い、自社への応募や内定を増やそうとする活動や施策のことです。
採用マーケティングのターゲット
今日の採用マーケティングは、従来よりも採用活動の範囲を広く捉えてアプローチする方法が主流となりつつあります。ここでは中途採用を例に、積極的に転職活動をしている人材以外の、採用マーケティングの対象となりうる下記4種のターゲットについて解説します。
- 転職潜在層
- 自社に就業中の従業員
- 選考参加者(辞退者/不採用者)
- 退職者
ターゲット1. 転職潜在層
転職活動を行っていない人材や転職に積極的でない人材(転職潜在層)にも、自社を認知してもらう活動は不可欠です。これらの人材の転職意向が高まった時に、想起される会社になるようアプローチします。
ターゲット2. 自社に就業中の従業員
自社の従業員も採用マーケティングの対象となります。人材育成や働く環境の整備、キャリア支援など、入社後の従業員のエンゲージメントを高める各取り組みも採用活動の一環と考えられます。採用を販促に例えるなら、従業員は企業という商品を購入・利用しているユーザーです。ユーザー満足度を高めることが自社のPRにつながるように、従業員エンゲージメントの向上はリファラル採用の活性化や、Web上の企業に対する口コミがよくなるといった効果につながります。
エンゲージメントに関しては、以下の記事をご参照ください。
ターゲット3. 選考参加者(辞退者/不採用者)
採用活動はその場限りではありません。入社に至らなかった候補者も採用マーケティングの対象であり、誠実な対応が必要です。
不採用者への対応が不適切な場合、友人やSNS、口コミサイトなどを通じてネガティブなイメージが拡散していくリスクがあります。「なぜ不採用だったか」「どのような点がミスマッチだったか」などについて、候補者と丁寧にコミュニケーションしながら伝えていきましょう。たとえ今は縁がなくても、自社のファンになってもらったり、再応募につながったりする可能性があることも忘れてはなりません。
また辞退者については、「なぜ辞退されたのか」「条件に合わない応募が多いのはなぜか」についてのコミュニケーション履歴を蓄積することで、採用活動の改善につなげることができます。
ターゲット4. 退職者
就業中の従業員同様、退職者は自社で働いた経験のある人材です。今日では求職者が元従業員の口コミを確認するのは一般的なこととなっています。退職者が自身の就業経験をどう語るかは、採用活動に大きな影響を与えます。また、近年では一度退職した従業員の再入社、いわゆるアルムナイ採用を行うなど、「出戻り社員」を歓迎する企業も増えてきています。自社の仕事内容やカルチャーをリアルに体験したことがある従業員は、即戦力として活躍しやすいというメリットがあります。退職者との関係性をより良くしていくことは採用活動にプラスに働きます。
採用マーケティングを取り入れるメリット
企業が採用活動に採用マーケティングを導入することで得られる主なメリットは、次の通りです。
- 自社に必要な人材が明確になる
- 離職などのミスマッチを防止しやすくなる
- 採用コストの抑制が期待できる
ここでは、上記3つのメリットについて解説します。
メリット1. 自社に必要な人材が明確になる
採用マーケティングの最初の一歩は、自社にとって必要な人材を明確にすることです。自社に必要な人材が明確になっていなければ、効果的に採用活動を進めることは難しいでしょう。採用マーケティングを導入することで、自社にとって必要な人材が明確になり、より採用につながりやすい層へアプローチが可能になります。
メリット2. 離職などのミスマッチを防止しやすくなる
採用マーケティングを取り入れることで、適切な人材層へのアプローチが可能になり、自社にマッチした人材の採用につなげることができます。そのため、離職につながってしまうようなミスマッチを防止できる可能性が高まります。
メリット3. 採用コストの抑制が期待できる
採用マーケティングを導入することで、採用活動全体を捉え直し、自社の採用活動の改善や効率化につなげることが可能です。こうした改善によって採用活動が最適化され、結果的に採用コストの抑制につながる可能性があります。
採用マーケティングを取り入れる上での注意点
企業が採用活動に採用マーケティングを導入する際の注意点は、次の通りです。
- 準備に一定の負担がかかるケースが多い
- 成果が実感できるまでに時間がかかることがある
ここでは、上記2つの注意点について解説します。
注意点1. 準備に一定の負担がかかるケースが多い
採用マーケティングは採用活動の質を上げる有効な手段の一つですが、慣れないうちは準備に時間がかかり、一時的には負担が増加する可能性があることは認識しておきましょう。採用にかかる工程を整理し、工程によっては外注の活用を検討しても良いでしょう。
注意点2. 成果が実感できるまでに時間がかかることがある
採用マーケティングを実行してから成果を得るまで、時間がかかる場合があります。採用マーケティングのフレームワークを理解し、工程ごとにプランを立てて実行していくことは簡単な作業ではありません。またSNSを活用した採用マーケティングを行う場合にも、拡散効果を高めるためには地道に発信を続ける必要があります。
採用マーケティングの導入によって望んだ成果を得るためには、長期的な視点に立って粘り強く取り組んでいくことが大切です。
採用マーケティングを取り入れる手順
下記は、自社の採用活動に採用マーケティングを取り入れる手順例です。
- 採用マーケティングを進める体制や方針を決める
- 競合・自社を分析し魅力を定義する
- ターゲットやペルソナを明確にする
- ペルソナに合わせたキャンディデイトジャーニー・マップ(※)を設計する
- ファネルごとにチャネルを選定し、適切にアプローチする
- アプローチ結果を基に改善を進める
本章では、上記流れに沿って採用マーケティングを導入するまでの手順を解説します。
(※)キャンディデイトジャーニー・マップ:マーケティングなどに利用されるカスタマージャーニーマップを採用向けにアレンジしたフレームワークであり、求職者が自社を認知してから入社するまでの過程を整理したもの。
STEP1. 採用マーケティングを進める体制や方針を決める
まず、採用マーケティングに携わるチームを編成し、方針や目標を設定します。例えば、採用人数や採用ターゲットに求めるスキル、どのようなメッセージを発信するのか、リソース(人員・予算)などを決めます。
体制を決める際は、各メンバーの役割を明確にするとともに、各メンバーが採用マーケティングを実施する目的やゴールを認知している状態を目指しましょう。各メンバーが自身の役割や方針、活動のゴールをしっかり理解することで、採用マーケティングをスムーズに進められるようになるでしょう。
STEP2. 競合・自社を分析し魅力を定義する
採用競合企業や自社を分析し、採用マーケティングでアピールする自社の魅力を定義しましょう。採用競合にあたる企業と自社の強みや企業文化、提供できるキャリアパス、福利厚生などを比較し、差別化できるポイントを明確にします。
差別化できるポイントは自社独自の魅力として訴求できるため、求職者にとっても「なぜこの企業に応募(入社)するのか」といった動機を形成しやすくなるでしょう。
STEP3. ターゲットやペルソナを明確にする
続いて、ターゲットやペルソナを明確にします。スキルや仕事への価値観など、具体的に定義することが大切です。
もし、ターゲットやペルソナの定義が曖昧だと、求職者に対してアプローチが響かなかったり、メンバー同士でも最良と考える採用マーケティングの在り方にブレが生じてしまったりする可能性があります。
STEP4. ペルソナに合わせたキャンディデイトジャーニー・マップを設計する
ペルソナに合わせたキャンディデイトジャーニー・マップを設計します。この際、求職者は各プロセスでどのような情報を求めるのかを考え、適切なタイミングで必要な情報を提供できるように設計することがポイントです。
キャンディデイトジャーニー・マップを設計し、求職者の導線を可視化することで、求職者の興味や入社意欲を段階的に高められるでしょう。
STEP5. ファネルごとにチャネルを選定し、適切にアプローチする
採用マーケティングでは、データや採用ターゲットの動向を調査し、ファネル内(認知から行動までを漏斗に見立てたフレームワーク)の採用活動の各プロセスに合わせてチャネル(アプロ―チの手段や方法)を選定することが重要です。チャネルの選定を誤ると、適切な採用ターゲットにメッセージが届かないかもしれません。適切にアプローチができれば、応募率が高まったり辞退率が低減したりすることが期待できるでしょう。
STEP6. アプローチ結果を基に改善を進める
アプローチ結果を基に改善に取り組むことも大切です。
どんなに綿密に事前分析をしたり、最適解を検討したりしたとしても、実施したアプローチが最適とは限りません。そのため、都度実施したアプローチの効果を分析し、改善点を探ったりボトルネックの改善に努めたりしましょう。
採用マーケティングの実施イメージ【ターゲット別】
採用マーケティングは、転職顕在層に対するアプローチが最も有効だと考えられます。しかし、転職顕在層に対してある程度の採用マーケティングに取り組んでいるものの思うように人材を採用できない場合、転職顕在層以外にも採用マーケティングの対象を広げる必要があるかもしれません。
そこで、本章では、積極的に転職活動をしている人材以外の、採用マーケティングの対象となり得る、下記4種のターゲット別に採用マーケティングの実施イメージを紹介します。
- 転職潜在層
- 自社に就業中の従業員
- 選考参加者(辞退者/不採用者)
- 退職者への採用マーケティング
転職潜在層への採用マーケティングの実施イメージ
転職潜在層とは、今すぐの転職は考えていないが、将来的に転職を視野に入れている層や条件さえ合えば転職したいと考える人材を指します。転職潜在層に対しては、転職を考え始めた際に、自社が選択肢に含まれる可能性を高められるよう、まずは自社を認知してもらうことが重要です。
具体的には、転職潜在層のペルソナを設定し、求めるスキルやキャリアへの展望、仕事への価値観や考え方などを分析します。その上で自社の採用ホームページやSNS、メールマガジンなどを通じて、ペルソナが求めると思われる業界動向やキャリア開発に役立つ情報、企業のビジョン・カルチャーなどの情報を発信し、自社の認知を広めましょう。
キャンディデイトジャーニー・マップ設計においては、転職潜在層が転職に関心を持ち始めるタイミングを想定し、段階的に転職を意識させる社員インタビューやキャリアプランの紹介といった情報を発信するのも1つの方法です。
自社に就業中の従業員への採用マーケティングの実施イメージ
社内の従業員に対しては、中長期的なキャリアパスや異動の選択肢を提供することで、人材の流出を防ぐことができるかもしれません。従業員に対してキャリアや働き方の選択肢を示すことで成長意欲や会社へのエンゲージメントが高まる可能性も期待できます。
採用マーケティングの実施例としては、職務や求められるスキルなどに応じて、キャリアステージごとのニーズや関心を分析し、従業員がどのようなスキル開発やキャリアアップに興味を抱いているのか把握に努めましょう。その上で従業員が求めるスキル開発やキャリアアップが実現する勉強会や研修を定期的に開催し、従業員が新しいキャリアに挑戦できる機会を提供するのも1つの方法です。
中長期的なキャリアアップビジョンを設計し、適切なタイミングでキャリアに関する情報提供や働き方支援につながるアプローチを実施しましょう。
選考参加者(辞退者/不採用者)への採用マーケティングの実施イメージ
選考参加者(辞退者/不採用者)への採用マーケティングは、過去に選考に参加したものの、辞退によって採用が叶わなかったり、ポジションの空き具合などを理由に採用を見送ったりした人材に対して、再び興味を持ってもらうための取り組みを意識することが大切です。
まずは、選考辞退者や採用を見送った応募者のプロフィールを分析し、どのような理由で辞退または採用を見送ったのかを把握しましょう。入社に至らなかった要因や採用を見送った理由の改善に努めた上で、再度興味喚起を促すアプローチを実施します。
この時、過去に応募した職種に再応募できる旨を周知することが大切です。
退職者への採用マーケティングの実施イメージ
退職者に対して採用マーケティングを実施する際は、退職者のプロフィールや退職理由、退職後のキャリアを分析し、再アプローチの可否や再度自社に興味を持ってもらうための動機を調べてみましょう。
同時に退職者に対して再度アプローチできるよう、良好な関係を構築しておくことも不可欠です。定期的にメールマガジンを配信する、アルムナイイベントを開催するなど、退職者と継続的に接点を持てる取り組みも実施しましょう。
退職者とのつながりを維持し、自社の魅力を発信し続けることで、退職者は自社への再就職に対して興味を示すかもしれません。
採用マーケティングに応用できるフレームワーク
本章では、採用マーケティングに応用できるフレームワークとして下記2種のフレームワークを紹介します。
- AIDMA・AISAS
- SIPS
フレームワーク1. AIDMA・AISAS
マーケティングで広く知られるのがAIDMA(アイドマ)と呼ばれる消費行動モデルです。AIDMAは、5つの行動プロセスの頭文字を取った言葉で、消費者が商品を購入するまでには以下のようなプロセスがあると言われています。このプロセスは、商品購入だけではなく、求職者の採用プロセスに置き換えることができ、Action(行動)は、応募を指すことが多いです。
- Attention…認知・注意
- Interest…興味・関心
- Desire…欲求
- Memory…記憶
- Action…行動
※4番目のMをMotive…動機とする場合もあります。採用活動に当てはめる場合は、Motive≒志望動機と捉えると馴染みやすいでしょう。
AIDMAは1920年代に登場した考え方ですが、インターネット時代の到来により人々の消費行動が変化し、新たに提唱されたのがAISAS(アイサス)です。
- Attention…認知・注意
- Interest…興味・関心
- Search…検索
- Action…行動
- Share…共有
AISASは、興味を持ったあとに検索(比較検討や情報収集)をする行動が念頭に置かれているのが特徴です。また、行動(体験)したあとにブログやSNSでのレビューや口コミの効果についても考慮されたモデルです。
どちらのモデルにおいても、まずは消費者に認知(Attention)されることがスタートです。採用活動においても同様に、候補者に自社のことを知ってもらうことが最も重要です。また、現代の採用活動においても、AISASモデルのSearchとShareという2つのSの存在は十分に配慮するべきでしょう。
フレームワーク2. SIPS
近年、リファラル採用やSNSを活用したリクルーティング活動、インターンシップのような就業体験プログラムを導入する企業が増えつつあります。これをマーケティング手法に当てはめると、SIPS(シップス)と呼ばれる消費行動モデルと共通点が見られます。
- Sympathize…共感
- Identify…確認
- Participate…参加
- Share & Spread…共有&拡散
SIPSは、共感ではじまり共有で終わる(それが次なる共感を呼ぶような循環型)ことが特長です。企業からの一方通行な情報発信ではなく、知人・友人を頼って人づてに話を聞く、SNSで評判を検索するなど、多面的な情報発信・情報収集が前提です。ユーザーの行動も購入や応募にとどまらず、「SNSでいいねを押す」「コミュニティに参加する」といった幅広いつながり方が意識されています。転職活動においては、求職者はIdentify(確認)を特に意識しています。友人・知人やSNS上で、その企業は自分にとって有益なのかその情報は正しいのか、きちんと確認を行うことが一般的です。
採用マーケティングを自社に取り入れる時のポイント
採用マーケティングを自社に取り入れる際は、下記2つのポイントに留意しましょう。
- 手法ありきで考えない
- 潜在層に幅広くアピールする機会が増えるからこそ、「見られ方」に配慮を
ポイント1. 手法ありきで考えない
採用の外の世界に目を向ければ、世の中にはさまざまなマーケティングの事例があります。多くの人の目を引くようなアイデアや採用活動を劇的に効率化するようなヒントも沢山あるはずです。ただ、その方法がいかに素晴らしいとしても、手法にこだわりすぎると自社にフィットせず、失敗するリスクが高くなります。採用マーケティングは手段であって目的ではありません。あくまでも自社の採用目的を実現するために効果的な手法を検討することが重要です。手段の目的化にならないように注意しましょう。
ポイント2. 潜在層に幅広くアピールする機会が増えるからこそ、「見られ方」に配慮を
マーケティング手法の1つに、従業員を巻き込んだSNS上での情報発信やいわゆる「バズる」ことを狙ったマーケティング(バズマーケティング)があります。採用活動にプラスに働くこともありますが、不特定多数の人に対して情報発信するため、発信内容に注意する必要があります。
人材紹介や求人媒体を通した通常の採用広報では、就活生や求職者を対象にすることを前提に自社の求人を訴求しますが、一般のWeb広告やSNS上ではそうではない多くの人の目にとどまります。一方的に自社の求人を伝えるだけでは、「自分には必要のない情報が繰り返し表示される」と感じさせ、かえって避けられかねません。また、採用広報は自社の採用基準を満たす人をターゲットに想定してメッセージをするのがセオリーですが、幅広い求職者を対象とした場合、さまざまな立場の人の目にとどまるため、多様性への配慮が欠けた表現が含まれていると炎上するリスクもあります。SNSやWeb広告の発信には十分なリテラシーを持つことが重要でしょう。
アドバイザー
組織人事コンサルティングSeguros / 代表コンサルタント
粟野 友樹(あわの ともき)氏
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。