目次
採用コストとは
採用コストとは、採用活動において発生する費用のことです。
人材募集、面接、選考、内定・内定後フォロー、入社の各々のプロセスにおいて生じる費用を合計した金額が採用コストです。採用コストは社内で発生した費用(内部コスト)と、社外へ支払った費用(外部コスト)とに分けることができます。
採用コストと採用単価とは
採用単価とは採用者一人当たりの採用コストのことであり、「採用コストの合計÷採用人数」で計算されます。
コストと得られる成果とのバランスから、最適な採用手法を選択する必要があります。
内部コスト
内部コストには、以下のようなものがあります。
(1)採用に関わる人件費
面接や選考、そのほか求職者とのやり取りのために費やした時間に該当する人件費などです。
(2)採用に関わる諸経費
求職者や採用者との連絡に要した通信費、内定通知書の発送や履歴書の返送に要した郵送費、内定者フォローの費用などです。
(3)そのほかの費用
面接者に支給する交通費、面接時に提供する飲食費用、リファラル採用(従業員からの紹介による採用)に関する従業員へのインセンティブ支給などです。
外部コスト
外部コストには、以下のようなものがあります。
(1)求人広告会社と人材紹介会社の利用に関する費用
求人広告会社へ支払う求人広告掲載費、人材紹介会社へ支払う成功報酬などです。
(2)求職者と接点を持つための費用
採用イベントへの参加費用、採用セミナーや集団面接の開催費用などです。
(3)その他の費用
インターネット上の採用サイトの制作費用、企業説明のための動画やツールの制作費用、採用管理システムの導入費用などです。
採用コストの平均相場
以下に、新卒採用、中途採用の平均採用コストについて解説します。
新卒1人当たりの平均採用コスト
株式会社リクルートが運営する就職みらい研究所は、新卒採用にかかわるコストについて継続的な調査を実施しています。同研究所が発表した「就職白書2020」によれば、2019年度の新卒採用1人当たりの平均採用コストは93万6,000円でした。
2018年度の新卒採用の平均コストは71万5,000円であり、31%の増加となっています。
このデータからもわかるように、近年、新卒採用に関するコストが増加傾向にあります。その理由としては、学生数の減少により企業間での採用競争が激しくなり、それにともなう採用活動に従事する社内人員数の増加、広告やイベントなどの学生へのPR費用の増加などがあげられます。
出典:株式会社リクルート「就職白書2020」
中途1人当たりの平均採用コスト
先に紹介した「就職白書2020」では、中途採用に関するコストについても調査しています。その調査によれば、2019年度の中途採用1人当たりの平均採用コストは103万3,000円でした。
先に解説した新卒採用1人当たりの平均採用コスト93万6,000円と比べて10万円ほど高い金額になっています。
中途採用に関しては即戦力を求める企業が多く、自社の人材要件にマッチした人材を見つけることが難しいため、採用者1人当たりの採用コストが高くなっていることが考えられます。
採用コストを削減する具体的な方法
それでは次に採用コストを見直し、削減していく方法を紹介しましょう。
自社の採用サイトでの採用を強化する
採用コストを削減するうえでまず考えたいのは、自社の採用サイトの強化です。自社サイトを通じて採用を行えば、求人広告などでは必要となる外部コストが発生しないからです。
自社の採用サイトの強みは、他の求人媒体のような制約がないため、経営に対する考え方や社風、事業内容や採用後の仕事の内容、労働条件といった求職者が知りたい情報を、じっくり丁寧に掲載することが可能な点にあります。まずは自社の採用サイトに、これらの要素がきちんと盛り込まれているかをチェックしていきましょう。
一方で、自社の採用サイトの強化には、サイトのリニューアル費用や社内の担当者の人件費、その後の運営費などが必要となります。そのため自社の採用サイト強化は、単年でコスト削減を目指すのではなく中長期的な計画を立て実施していくことが必要です。
従業員からの紹介で採用する
近年、従業員からの紹介による採用(リファラル採用)が注目を浴びています。
従業員からの紹介による採用は、自社サイトでの採用と同様に求人広告などのコストが発生しません。さらに、友人知人が同じ社内で働いていることによる安心感などにより、定着率の向上も見込めます。
一方で、リファラル採用では紹介者となる従業員にインセンティブを支給するのが一般的であり、その費用がかかります。また、制度の定着に時間がかかることも考慮する必要があるでしょう。
※リファラル採用に関しては、以下の記事をご参照ください
【人事必見!】リファラル採用とは?メリットや定着・促進させる方法を解説
無料求人サービスを活用する
世の中には、無料で求人情報を掲載できるサービスも存在します。
求人に関するアドバイスや対応フォローといったサービスを受けることはできませんが、求職者との接点を持つことは可能です。採用する人材によっては、これらの無料サービスを活用することで、採用コストを抑えることが可能になります。
Indeedは、初期費用、期間掲載費、採用成功費のすべてが無料で求人掲載ができるサービスです。(有料オプションもあります)
※利用規約、Indeedが定める掲載基準、及び使用制限が適用されます。
求人媒体の見直しを行う
高額な費用を支払っているのに、応募が全くないこともあります。
そのような場合、自社の採用ニーズと求人媒体とのミスマッチが生じている可能性があります。自社が必要としている人材が自社の利用している求人媒体にどの程度登録しているのかを確認し、少ないようであればほかの求人広告媒体に切り替える必要があります。また、職種によっては特定の時期に人の動きが生じやすいこともあるため、その時期を狙った募集を行うといった対応も必要です。
選考プロセスの見直しを行う
採用を行う場合、自社の人事担当者や経営陣が面接や選考に対応します。それに費やす時間が長くなればなるほど、採用に関わる内部コストが膨らみます。そのため、面接回数の見直しやオンラインツールの活用、選考評価の基準の統一化などを行い、面接や選考に費やす時間を短縮することが大切です。こうした時間短縮は、採用に関わる内部コストの削減につながるでしょう。
早期離職の防止に努める
早期離職の防止や採用した人材の定着率向上に取り組むことは、結果的に新たな採用活動にかかる費用を削減できるため、採用コストの削減につながります。
採用者の早期離職防止策として考えられる代表的な例は、以下の通りです。
- 採用者の不安を払しょくするために、社内コミュニケーションを強化する
- 採用者の職務遂行能力を高めるために、教育を強化する
- 採用者のモチベーションを高めるため、人事評価制度の見直しを行い、納得性の高い評価を実施できるようにする
- 採用者の働きやすさを向上するため、各種ハラスメント防止策を講じたり、柔軟な働き方を可能とする制度を導入したりする
採用は、コストをかければ必ず成果が上がるといったものではありません。自社に必要な人材の要件を明確にしたうえで、そのような人材を採用しやすい採用手法を選択し、採用のプロセスを最適化することで、採用コストの適正化と同時に、求める人材を確保するという成果につなげることが期待できます。こうした観点から、今後の採用活動のあり方を考えていきましょう。