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中途採用で即戦力の採用は難しいのか
ここでは、採用競争が激化する中途採用において、即戦力人材の採用は難しいのかどうか解説します。
中途採用で即戦力となる人の特徴とは
中途採用で即戦力となる人材は、次のような4つの特徴を持つと考えられます。
- 高い専門性・スキルを持っている
- 経験が豊富
- 課題解決能力に長けている
- 適応力が高い
即戦力人材は早期の活躍が期待されるため、期待値を超える働きぶりを示せる専門性やスキルの保有が前提になる可能性があります。さらに実務経験に富んだ人材であれば、類似業務にも応用を効かせ、即座に取り組めると考えられます。
また新しい職場では、前職と異なる点や新たな課題に直面することも多々あるでしょう。その中でも不明点や疑問点をそのままにせず、解決に動き出せる主体性や行動力、意欲的に学ぶ姿勢などが即戦力人材に求められる素養の例として挙げられます。
また、どんなに優秀な人材でも職場に馴染めず早期離職に至るケースもあります。即戦力として活躍してもらうためには、新しい職場にすぐ馴染める適応力の高さも大切といえるでしょう。
中途採用で即戦力を採用するために大切なこと
即戦力となる人材は、他の企業も強く求めていることもあり、採用難易度は高くなりがちです。
しかしターゲットに合わせて適切な手法・媒体を選定する、自社の魅力やビジョンをしっかり伝え動機づけを徹底する、入社前後のフォローに努めるなど、取り組みの改善によって即戦力となる人材の採用確度を高めることができるでしょう。
即戦力人材を中途採用する場合の3つの注意点
中途採用で即戦力人材を採用するにあたっては、次のような注意が必要です。
- 組織に馴染めない・成長意欲が低い人材を採用してしまう
- 過度な期待が膨らみがちである
- スキルのミスマッチが生じてしまう
1:組織に馴染めない・成長意欲が低い人材を採用してしまう
即戦力人材を採用する際、スキルや経験だけで合否を決めることは避けた方が良いでしょう。なぜなら、どんなに優秀な人材でも新しい職場に馴染む努力ができない場合、既存社員とのコミュニケーションに摩擦が生じ、早期離職に至る可能性があります。それだけではなく、既存社員と衝突するような事態に発展すれば、組織に混乱を招く懸念も考えられるでしょう。
また成長意欲が低い人材の場合、入社直後は活躍してくれるかもしれませんが、すぐに成長が停滞し、会社への貢献が乏しくなるケースもあるかもしれません。
学習意欲や適応力、人柄、人間性など、多角的な視点から合否を判断することが大切です。
2:過度な期待が膨らみがちである
即戦力として採用された人材に対し、過度な期待が膨らみがちになってしまう点にも注意が必要です。どんなに優秀な人材でも、新しい環境に馴染むまでの間や新しいルール・仕事の方法を覚えるまでは、本来の実力をなかなか発揮できないものです。しかし、即戦力採用では、過度な期待から周囲のフォローやサポートが手薄になってしまい、本来の力が発揮できなくなってしまっているケースが見られます。
3:スキルのミスマッチが生じてしまう
即戦力人材の採用では、スキルのミスマッチが生じる事象も発生します。
特に技術職など、専門性の高い人材を採用する場合、採用要件の粒度が細かくなる傾向があります。採用担当者ではスキルや経験の細かな違いを理解できず、現場が求めている人材とは違うスキルを持つ人材を採用してしまう可能性があります。
たとえ豊富な経験やスキルを持つ人材を採用できたとしても、スキルのミスマッチが生じてしまうと、期待する活躍が見込めなくなるかもしれません。
中途採用で即戦力を採用するには
中途採用で即戦力を採用するには、主に次の3つの環境を整えておきましょう。
- “即戦力”という言葉の定義を明確にする
- 必要最低限のスキルを明確にする
- 配属先部署の担当者も採用活動に携われる環境を作る
即戦力の採用1:“即戦力”という言葉の定義を明確にする
即戦力人材の採用に臨む際は、“即戦力”という言葉の定義を社内で明確にしましょう。即戦力と一口にいっていっても、社員同士で言葉の認識が異なるケースは珍しくありません。特に採用担当者と現場担当者との間で認識の齟齬が生じていた場合、求める人材とは異なる人物を採用してしまうこともあるでしょう。
また即戦力という言葉は、ポジションや職種によって定義が変わることもあります。採用するターゲットごとに以下のような項目について社内で認識をすり合わせておきましょう。
- 経験・スキル
- コミュニケーション能力
- 人脈
- 成長意欲
- ビジョンへの共感度
即戦力の定義を明確化することで、どの程度スキルや経験を重視し、どのくらいポテンシャルや人間性を評価すべきか、社内で “即戦力”という言葉に対する基準が揃うでしょう。
即戦力の採用2:必要最低限のスキルを明確にする
中途採用で即戦力を採用するには、必要最低限のスキルを明確にすることも大切です。例えば、ITエンジニア採用の場合、下記のようなスキル・経験において最低限の基準を明確にしておくと良いでしょう。
- 開発経験年数
- 扱える言語
- 前職(現職)でのポジション
- 前職での業務
即戦力というと、つい事業やプロジェクトの中核を担えるような人材を想起しがちですが、過度に即戦力を求める姿勢は控えた方が良いでしょう。理想や要求が高くなるほど、求める人材の基準にズレが生じやすくなります。
即戦力人材に求める必要最低限のスキルを整理することで、採用基準が明確になり、スキルのミスマッチが生じる採用を防止できるでしょう。
即戦力の採用3:配属先部署の担当者も採用活動に携われる環境を作る
可能であれば、配属先部署の担当者も採用活動に携われる環境を作りましょう。配属先部署の担当者が採用活動に携われる環境を作る方法としては、次のような取り組みが挙げられます。
- ダイレクトリクルーティングでスカウトを送付する対象を確認してもらう
- 1次面接に同席し、スキルや経験を確認してもらう
- カジュアル面談の担当になってもらう
配属先部署の担当者が採用活動に参加することで、スキル・経験のジャッジを正確に行えるようになるでしょう。また応募者との面談機会を設けることで応募者の不安払しょくや自社への理解を深めることも可能になります。
中途採用で即戦力人材となり得るかどうかを見分ける4つのコツ
中途採用で即戦力かどうかを見分けるにあたっては、主に次の4つのコツが考えられます。
- 経験やスキルが培われた背景を聞く
- 新しいことに挑戦した経験を問う
- ポートフォリオを提出してもらう
- 適性検査を活用する
ぜひ自社の採用活動に取り入れやすい方法から試してみてください。
コツ1:経験やスキルが培われた背景を聞く
応募者の持つ経験やスキルが前職でどのように培われてきたのか、その背景を聞いてみましょう。成長意欲があり、自らスキルアップに取り組んだ人材であれば、セミナーや勉強会に参加した、新しい経験が得られるプロジェクトへの参画を希望した、○○の経験が元になっている、など前向きにスキル習得に励んだエピソードを語ってくれるでしょう。
一方で日々の業務を通じて会得した、異動先でそのスキルが必要になった、など受け身要素の強い回答をする応募者もいるでしょう。そのような応募者は、入社後一時的には即戦力として活躍してくれるかもしれません。しかしその後は、会社が期待するほどの成長が見込めず、少しずつ活躍機会が減少してしまうこともあるかもしれません。
経験やスキルが培われた背景を聞くことで、成長意欲や入社後の更なる伸びしろを見定めることができるでしょう。
コツ2:新しいことに挑戦した経験を問う
新しいことに挑戦した経験を問うのも、即戦力となる人材かどうかを見分けるコツの1つです。転職も求職者からすると新しいことへの挑戦となります。新しいことに挑戦した経験をヒアリングすることで、過去の経験から入社後どのような行動・姿勢を示すのかを確認できるでしょう。
また当時の挑戦後の結果や心情も併せてヒアリングすることもおすすめです。成長意欲や業務に対する価値観、挑戦に向けて工夫したことなども見えてくるため、即戦力として活躍してもらうにあたって必要なポテンシャルの有無も判断できるでしょう。
コツ3:ポートフォリオを提出してもらう
特にクリエイティブ系やエンジニアなどの技術系職種を採用する場合は、ポートフォリオを提出してもらうのも良いでしょう。ポートフォリオとは、これまで携わった案件の作品集(実績集)です。現場の担当者にポートフォリオを確認してもらうことで、必要最低限のスキルが備わっているのか判断できるでしょう。
実務課題やインターンシップを設ける会社もありますが、即戦力採用の場合、課題やインターンシップに取り組んでいる最中に他の企業からの内定を承諾してしまうケースもあります。
スピード感が求められ、かつ正確なスキルジャッジが求められる即戦力採用においては、ポートフォリオの提出を求めるフローは効果的といえるでしょう。
コツ4:適性検査を活用する
即戦力人材の採用では、適性検査を活用する企業もあります。適性検査を用いることで、面接や選考だけでは測りにくい応募者の適性を数値化して評価できるようになります。中には、既存社員のデータから自社で活躍する人材の傾向を数値化できる適性検査もあります。既に自社で活躍している人材に近しい数値が出た場合、統計的に活躍してもらえる可能性が高いといえるでしょう。
ただし適性検査の結果ばかりにこだわると、有能な人材を振るい落としてしまう懸念も考えられます。適性検査の結果を踏まえつつ、スキルや経験、人柄、人間性など、多角的な視点から合否を判断しましょう。
即戦力となる中途採用後のフォロー施策 3選
即戦力となる中途採用後のフォロー施策としては、主に次の3点が挙げられます。
- 入社時研修(設備やツールの使い方研修)を実施する
- 採用担当者が率先してオンボーディングに取り組む
- 定期的に面談を実施する
即戦力人材だからと入社後に放置状態が続けば、活躍できる人材も活躍できなくなります。早期活躍につなげるためにも、会社側が即戦力として活躍できる環境を整えることが重要となるでしょう。
施策1:入社時研修(設備やツールの使い方研修)
会社設備やツールの使い方、社内のルールなどを伝える入社時研修を実施しましょう。可能であれば、入社時研修は入社日に実施するのがベストです。翌日から社内のルールを理解した上で業務にあたったり、行動できたりするため、入社時のストレス軽減にも寄与するでしょう。
なお入社時研修では、同じグループの社員や困った時に声を掛けられる社員と挨拶する場を設けるのもおすすめです。業務上関わることの多い社員や各社員との関係性を紹介しておくと、新入社員は困った時、周囲に助けを求めやすくなるでしょう。また周囲の社員もフォローに入りやすくなります。
施策2:採用担当者が率先してオンボーディングに取り組む
採用担当者が率先してオンボーディングに取り組むことも重要なフォロー施策です。オンボーディングとは新入社員の組織への順応を促進・サポートする施策のことをいいます。
オンボーディングには、次のような取り組みがあります。
- ランチ会
- 他部署社員との交流会
- 施設見学
- 同期会 など
ぜひ新しく入社する社員に対し、既存社員とのつながりを生み出せる機会を提供できているか見直してみてください。その際、配属先の部署やチームだけではなく、隣の部署や業務上関わることの多い部署にまで及ぶ人脈形成支援を提供できているか、という点に視点を向けることがポイントです。
人事担当者が積極的にオンボーディングに取り組むことで、新入社員は早く組織に馴染めるようになるでしょう。既存社員が新入社員の意見を受け入れやすくなる環境も整うため、新入社員が持つスキルや経験が発揮されやすくなるでしょう。
施策3:定期的な面談の実施
即戦力人材が入社した後は、定期的に面談を実施することも大切となるでしょう。
可能であれば、3ヶ月目頃までは1ヶ月単位で面談機会を設け、心境の変化や困りごと、悩みごとなどをヒアリングします。仕事に対し楽しみややりがいを感じているようであれば、短期の目標設定と達成までのサポートに徹しましょう。また実力を発揮できていないと感じる場合は、その原因と解決策を一緒に考えてみてください。
直接の上司には相談しにくい、上司がフォローしにくいなどの場合は、評価者ではない人事部門が入社後の状況などをヒアリングし客観的な視点でアドバイスするのも有効です。
即戦力になるスキルや経験を持っていたとしても、入社後の数ヶ月間は緊張が続く状態です。会社側から寄り添う姿勢を示し、悩みや不安の払しょくに努めることで、本来の実力を発揮できる環境が整い、期待する成果や活躍が見られるようになるでしょう。
即戦力人材の採用には転職エージェントの利用を
一般的に転職エージェントを利用すると、求人情報の作成や求人案内、候補者紹介、選考、入社から内定まで、さまざまなフェーズで専任の担当者がサポートします。「自社にとっての即戦力採用はどういったものか?」という上流部分の整理からアドバイスをもらえる可能性もあり、納得感のある採用を支援してくれるでしょう。ぜひ利用をご検討ください。
アドバイザー
組織人事コンサルティングSeguros / 代表コンサルタント
粟野 友樹(あわの ともき)氏
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。