CSRとはCorporate Social Responsibilityの略で、企業の社会的責任を意味しています。近年、さまざまな企業がCSRの一環として環境問題や貧困などの社会課題の解決のための社会活動に取り組んでいます。自社の強み・特長を活かし社会に貢献し、企業としてイメージアップや利益につながるメリットの多いCSR活動。そもそもCSRとは? メリット・デメリットなど、CSRについて改めてご紹介します。

CSRとは

CSRとは「Corporate Social Responsibility」の略で、企業の社会的な責任を意味します。企業が、利潤の追求のみならず、株主以外の従業員、地域社会などのステークホルダー(利害関係者)との対話を通じて社会的公正や環境などに配慮し、持続可能な社会の発展に貢献する取り組みのこととされています。CSR推進を政策メニューに掲げ、世界をリードしてきた存在である欧州委員会が2011年に発表した「CSRに関するEU新戦略2011-2014」の中で、CSRをそれまでの「企業の社会への影響に対する責任」という定義から、「企業が、社会や環境への配慮を自主的に事業活動およびステークホルダーとの関係構築の中に組み入れること」と再定義しています。

CSRが広まった理由

日本でCSRが広まった背景としては、食品の産地や賞味期限偽装問題、粉飾決算などが発覚し企業の責任が問われたことや、地球温暖化など環境問題が深刻化したことが背景にあります。また、グローバル化により、企業が影響をおよぼす範囲も広がっています。そのため、国際的な統一基準として、企業だけではなく広くあらゆる組織を対象にしたSR(Social Responsibility=社会的責任)の規格としてISO26000が発行。ISO26000が基準となり世界中でCSRの推進が加速していることも一つの要因として考えられます。

CSRの種類

欧州委員会の提言では、CSRは「株主、広くはその他ステークホルダーと社会の間で共通価値の創造を最大化すること」、「企業の潜在的悪影響を特定、防止、軽減すること」の2つを推進していくことを目指しています。CSRは大きく「社会との間で共通価値を創造する活動」と、「企業基盤を守る活動」に分類されます。

社会との間で共通価値を創造する活動

自社の特長を活かして社会と共通価値を創造したり、少子高齢化、地球温暖化など社会課題を解決したりする取り組みです。例えば、環境問題に配慮した商品の開発、植林など環境保護、地域の歴史的建造物や文化財の保全活動、人権問題や貧困など社会課題の解決に対する支援などがあげられます。

企業基盤を守る活動

社会の一員として活動する際に果たすべき法令順守や納税、企業倫理・コンプライアンス、リスクマネジメント、情報開示といった企業が存続していくために必要な活動です。

CSRのメリット・デメリット

CSRに取り組むことにより、どのようなメリットやデメリットがあるのでしょうか。東京商工会議所のアンケート調査によると、各企業がCSRに取り組んだことによるメリットとデメリットとして以下の項目をあげています。

出典:東京商工会議所「企業の社会的責任(CSR)」についてのアンケート調査 2005年7月12日

CSRのメリット

CSRのメリットについて考えてみたいと思います。アンケートの上位項目は、企業イメージの向上、販売先・納入先の関係強化、従業員満足度の向上があげられています。

企業イメージの向上

環境問題や消費者の安全性・利便性に配慮したCSRの取り組みは、企業イメージのアップにつながります。自治体や地域の企業と連携しCSR活動を行うことで、地域の方々に自社に対して理解を深めてもらえる場面も増え、活動を通じて自社の商品やサービスの価値を伝えていくことも可能です。

販売先・納入先との関係強化

企業の認知度やイメージが向上することにより販売先や納入先からの信頼が厚くなり、関係強化にも役立ちます。

従業員満足度の向上

従業員にとっても、所属する企業が社会に貢献していることにより、自社で働くことに誇りが持て、満足度の向上にもつながります。また活動を通じて社員同士の交流も生まれることで組織が活性化するメリットもあります。

CSRのデメリット

メリットの多いCSRですが、デメリットとして考えられることは何でしょうか。

コスト不足

CSR活動は長期的には企業イメージを高め利益に貢献しますが、成果がでるまでにはある程度の時間が必要です。短期的にみるとコスト面で損失となることもあります。CSRを経営戦略の一貫としてとらえ、社会貢献が自社の利益にもつながる体制をできるだけ早期につくっていくことが重要です。

人手不足

CSRに取り組むにあたっては専門部署やプロジェクトの設置や活動を推進するうえで従来の業務に加え人手が必要となってきます。ヒューマンリソースを確保し、継続的に活動できる体制をつくっていくことが必要です。

CSRの最新事例

では各社のCSRの最新事例についてご紹介しましょう。

KDDI

「豊かなコミュニケーション社会の発展に貢献する」という企業理念を掲げるKDDI。「安全で強靭な情報通信社会の構築」「エネルギー効率の向上と資源循環の達成」など6つの重要課題を定めています。
体制として2019年2月よりサステナビリティ委員会の位置づけを見直し、委員長を代表取締役社長、委員会のメンバーを全事業・統括本部長、KDDI財団理事長、監査役に再編成。サステナビリティ推進の達成度を担当役員ならびに全社員の賞与に連動させる仕組みを作っています。
災害時においても通信サービスを確保できるよう充電設備の設置や大規模災害時用の公衆無線LAN、車1台に基地局の機能を搭載した「車載型基地局」の活用など、通信インフラを支える企業として、災害対策・通信基盤の強靭化を推進しています。本業を通じた社会課題解決にも積極的に取り組んでいます。

また高齢化や後継者不足など農業における課題解決に向け、岐阜県飛騨市で「スマート農業」を2019年から実施。ICT技術を活用し、水田センサーと自動水門機で水管理の作業時間を71%削減するなどの取り組みも行っています。
出典:KDDI「KDDIのサステナビリティ」

富士フイルムホールディングス

富士フイルムグループは CSR を「誠実かつ公正な事業活動を通じて企業理念を実践することにより、社会の持続可能な発展に貢献すること」と位置づけ、「環境」「健康」「生活」「働き方」を重点課題として取り組んでいます。
2030 年度までにグループによるCO2 排出を 30%削減(2013 年度比)という重点課題を、2019 年度に達成したため、より高い目標を設定しました。健康分野では、メディカルシステム事業の医療AI技術を活用した製品・サービスを世界中に提供することで医療アクセスの向上という社会課題の解決に貢献する目標を掲げています。

また働き方の分野では、ビジネスパーソンのリモートワークを支援する個室型ワークスペース「CocoDesk」提供開始、クラウドサービス「Smart Workstream」の機能を強化し、企業間のセキュアな文書共有を実現するなど、働き方改革をサポートしています。

出典:富 士 フ イ ル ム ホ ー ル デ ィ ン グ ス 「 サ ス テ ナ ビ リ テ ィ 」

セブン&アイ・ホールディングス

セブン&アイ・ホールディングスは、すべてのステークホルダーに「信頼される、誠実な企業でありたい」という社是に基づき、持続可能な社会の実現と企業の持続的成長を目指しています。2019年には環境宣言「GREEN CHALLENGE 2050」を発表。脱炭素社会」「循環経済社会」「自然共生社会」を目指すべき社会の姿として掲げ、CO2排出量削減、プラスチック対策、食品ロス・食品リサイクル対策、持続可能な調達の4つを具体的な取り組みテーマとしました。CO2排出量削減の取り組みでは、グループの店舗運営に伴うCO2排出量を2013年度と比較して、2030年には50%削減、2050年には排出量実質ゼロとすることを定めています。

また社会と自社グループにとって重要性の高い重点課題(マテリアリティ)として、①高齢化、人口減少時代の社会インフラの提供、②商品や店舗を通じた安全・安心の提供 ③商品、原材料、エネルギーのムダのない利用 ④社内外の女性、若者、高齢者の活躍支援⑤お客様、お取引先を巻き込んだエシカルな社会づくりと資源の持続可能性向上の5項目を掲げ、社会課題の解決と企業価値向上の両立を図っています。

出典:セブン&アイ・ホールディングス サステナビリティ

CSRの手順・進め方のポイント

では実際にCSRをどのように社内で進めていけばよいのでしょうか。大きくは以下の手順で進めていくことが考えられます。

活動内容の検討

内容についてはISO26000で設定されている主な7つのテーマ「組織統治」、「人権」、「労働慣行」、「公正な事業慣行」、「消費者課題」、「環境」、「コミュニティーの参画/コミュニティーの発展」に沿って検討を行い、推進にあたっては日本経済団体連合が作成したCSR推進ツールを活用するのも方法の一つです。

出典: (社)日本経済団体連合「CSR推進ツール」2005年10月作成
内容の検討にあたっては、自社の企業理念や事業戦略を再確認し、自社の特徴・強みをビジネスや社会活かせる内容にすることが大切だと思います。

社内での意思決定

経営層だけでなく、全社員で取り組んでいくことが必要です。CSRの内容、推進することの意義を全社員で共有していきましょう。

社内体制・運営方法の検討

各部門よりメンバーを選出するなどして、これから活動を推進していく核となるプロジェクトチームを設置、CSRに関するあらゆる情報を管理・発信し、活動を推進していきます。社内の体制をどのように構築し、運営していくかを検討します。

具体的な取り組みの実施

決定した活動内容に基づき、取り組んでいきます。

ステークホルダーへの情報開示

取り組み内容やその成果を、CSRレポートとしてHP上で発信したり、時にはステークホルダーにも自社の活動やイベントに参加してもらったりすることで、CSR活動の情報を随時開示し、意見交換していきます。

改善

情報開示を行い、そこで得た指摘や意見を踏まえ、常に改善を繰り返しながらレベルアップしていきましょう。CSR活動を継続して向上させるためにも、PDCA サイクルを回しながら見直すことが大切です。

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