目次
チームビルディングとは
「チームビルディング(team building)」とは、チームの構成メンバーの一人ひとりが個性や能力を最大限に発揮し、それぞれの力を結集させることで一人では成しえない成果を生み出すチームを作ることです。個人の価値観が多様化し、強いリーダーシップだけではチームの統率やパフォーマンスの向上が難しい状況になっています。会社は部署(チーム)の集まりです。単に個人の能力を伸ばすだけではなく、多様なメンバーの能力を最大限に発揮できるチームビルディングの重要性は、ますます高まっています。
チームビルディングの目的
ではチームビルディングの目的は何でしょうか。大きなポイントとしては以下の2点が考えられます。
1.コミュニケーションの活性化
職場のチームは、役割も経験も考え方も異なるメンバーで構成されることが多くあります。チームビルディングを行うことにより、チームのメンバーがお互いの能力や考え方を知るためにコミュニケーションをとる場面が多くなるなど、コミュニケーションの活性化につながります。
2.パフォーマンスの向上
チームビルディングを行うことにより業務プロセスの可視化や相互理解が進み、
メンバー間に信頼関係が構築されます。チームワークが発揮されることで組織全体のパフォーマンスの向上につながります。
チームビルディングの効果
では実際にチームビルディングによって、どのような効果が得られるのでしょうか。
一体感の醸成
チームビルディングは、前述のとおりコミュニケーションの活性化を促すものです。そのため、メンバー同士の会話や報告・連絡、相談などが増え、チームの一体感が生まれます。コミュニケーションも上司から部下という上下関係だけでなく、同僚同士といった横のつながりや他部署とのコミュニケーションの機会が増え、何でも言い合える相談しやすい土壌が作られます。
厚生労働省の調査によると、「仕事や職業生活に関する強い不安、悩み、ストレスを感じる」とした労働者のうち、その内容の上位は「仕事の質・量」、「仕事の失敗・責任の発生等」、「対人関係」となっています。コミュニケーション量の増加は良好な対人関係を築き、ストレスの軽減や離職防止にもつながります。
出典: 厚生労働省 「令和元年版過労死等防止対策白書 第1章2 職場におけるメンタルヘルス対策の状況」
モチベーションの向上
仕事へのモチベーションは給与、ポジション、やりがいなどさまざまですが、チームビルディングを通じて「チームに貢献したい」「メンバーから信頼されたい」というモチベーションも生まれやすくなります。また一人では成しえなかった成果をチームとして残すことがメンバーの自信になり、さらなるモチベーション向上につながります。
アイデア・イノベーションの創出
多様な価値観を持つメンバーの意見をまとめて目標を達成する過程で、さまざまな価値観に触れることで相乗効果が生まれ、創造力を磨くことが可能です。ナレッジやノウハウの共有も増え、組織や社内でイノベーションが生まれることも期待できます。
チームビルディングの5つの段階
【タックマンモデル】とは、心理学者ブルース・タックマンが1965年に提唱した組織(チーム)の成長段階を示したものです。チームは単に構成メンバーを集めただけで機能するものではなく、各段階をクリアしていくことでチームとして機能を高め理想的な成果をもたらすという考え方に基づいています。1965年に提唱した時点ではチーム形成の段階を4段階としていましたが、1977年に「Adjourning 散会」を加え現在では5段階とされています。
・形成期/Forming(フォーミング)
・混乱期/Storming(ストーミング)
・統一期/Norming(ノーミング)
・機能期/Performing(パフォーミング)
・散会期/Adjourning(アジャーニング)
ではそれぞれのプロセスを簡単にご紹介します。
形成期/Forming(フォーミング)
チームを構成するメンバーが決まり、チームができてまだまもない状態が「形成期」。メンバーがお互いのことをよく知らず遠慮や緊張感が見られます。チームの目標や個人の役割もまだ決まっていない状態です。この時期はメンバー同士がお互いを理解することに注力していきましょう。
混乱期/Storming(ストーミング)
チームとしての活動がスタートすると、メンバー間でチームの目標に対する考え方の違い、業務の進め方、具体策をどう決めていくかなどさまざまな場面で、メンバー同士の意見の対立が起こってくるのが「混乱期」です。お互いに本音のコミュニケ―ションを心がけ、チーム内の対立を建設的に解決していく努力が求められます。
統一期/Norming(ノーミング)
「混乱期」で生じたメンバー間の対立を乗り越えて、それぞれの個性や価値観を理解することでメンバーの役割が明確になり、チームの方向性や目標に対する一体感が生まれる段階が統一期です。
機能期/Performing(パフォーミング)
メンバー一人ひとりが役割を果たし、相互にサポートし合う体制ができ、チームとしての結束力が高まっている時期が「機能期」です。チームとして最もパフォーマンスを発揮できる時期とされています。
散会期/Adjourning(アジャーニング)
目的の達成や時間的な制約などにより、チームとして活動を終了するのが「散会期」です。メンバーはまた次の役割を果たすべく違うチームでの活動を開始します。
タックマンモデルによると、どのようなチームも上記5段階のいずれかにあるとされており、チームの状況を見極めて現状に合わせた対応が必要になってきます。
チームビルディングを成功させるポイント
チームビルディングを成功させるポイントには、どういったものが考えられるでしょうか。
目標の明確化と浸透
チームとして目指す目標が不明確、またはメンバーに浸透していないと、チームとしての方向性を見失い、チームとして力を発揮することが難しくなります。目標は誰もが理解できるように明文化し、チーム内で常に目標を確認し合い、浸透させていくことが大切です。
メンバーの役割の明確化とリーダーシップ
チームとして成果をあげるためには、メンバーの個性や強みを活かした役割分担が重要です。リーダーはメンバーのスキル・経験を見極めて、各自が最大限パフォーマンスを出せるよう適切な役割を与え、メンバーが自主的に業務を遂行していける環境づくりを行う必要があります。
※リーダーシップに関しては、以下の記事をご参照ください
【人事必見】リーダーシップとは?種類や高める方法、研修を紹介
多様な価値観の共有
チームには異なる価値観、バックグラウンドを持つメンバーが集まっています。お互いの価値観を理解できないとメンバー間の対立や不和につながり、チームとして機能できません。メンバーが互いに違いを理解し合い、多様性を受け入れられる土壌・風土を作ることが、チームビルディングの成功につながります。
チームビルディングの手法
ここまで、チームビルディングの目的や効果、成功させるポイント等についてお伝えしましたが、チームビルディングの手法にはどのようなものがあるのでしょうか。
代表的なものをいくつかご紹介します。
ゲームを活用する
メンバーの緊張を解消し、チームを活性化させたい場合にはゲームが有効です。チーム創設初期の段階では、メンバーが緊張していて何かと周囲の顔色をうかがいがちです。緊張を解くためにはゲームを活用しましょう。
ゲームをうまく活用できれば、メンバー同士の緊張や遠慮も薄れ、親睦も深まっていくでしょう。物事を戦略的に考える力も養えるのも、メリットの一つといえるかもしれません。
ワークショップを活用する
メンバーに自主性を促し前向きに行動させたい場合には、ワークショップが有効です。
ワークショップとは、参加者の主体性を重視した作業や活動のことを指します。メンバーが自主的かつ活発に行動できるよう、リーダーは環境づくりをしていくことが必要です。ワークショップを通じて、チームとしてまとまっていき、将来的な高いパフォーマンスが期待できるでしょう。
アクティビティを活用する
メンバーをリラックスさせ、親睦を深めたい場合には、アクティビティが有効です。アクティビティの例としては、社内のスポーツサークルや運動会等が挙げられます。
メンバーが汗をかきながら、一丸となってアクティビティに取り組んでいく、チームは一致団結しやすくなります。
また気分転換も図られ、コミュニケーションが良好になることも期待できます。
チームビルディングの取り組み事例
ここでは、チームビルディングのなかで「ゲーム」と「ワークショップ」を取り上げ、具体的な取り組み例についていくつか紹介します。
ゲームを使ったチームビルディング
チームビルディングに有効なゲームの例を紹介します。いずれもルールはシンプルで、短時間でも取り組むことができます。メンバーの緊張を解き、距離を縮めるには有効だと考えられます。
(例1)ジェスチャーゲーム
ジェスチャーゲームは、出題者が声を出さずに身振り手振りだけで「お題」を表現し、解答者はそれを見て「お題」を当てていくゲームです。
場所も取らず、用意するものもほとんどありませんので、手軽に楽しむことができます。
(例2)ピンポン玉リレー
ピンポン玉リレーは、スプーンなどにピンポン玉を置いたまま、所定のコースを移動して運ぶという、チームリレーです。ピンポン玉を落とした場合はその地点から再開し、最終的に一番早くゴールしたチームが勝利します。
非常にシンプルですが、軽いピンポン玉を不安定な状況下で受け渡すため、メンバー同士のチームワークが求められます。
(例3)伝言ゲーム
伝言ゲームは、ある題(言葉や文章等)を用意して、先頭の人から順番に耳打ちで伝言し、最後の人まで正確に題を伝えられるかを競うゲームです。
単語程度であれば簡単ですが、まとまった文章になると正確に理解して伝えにくくなるので、難易度は高くなります。
伝言ゲームは、実際のビジネスの場面でも役に立つ要素を秘めています。
「人に正確に物事を伝達する」ことは、業務遂行に欠かせませんので、その観点からもよいトレーニングとなるでしょう。
ワークショップを使ったチームビルディング
ワークショップを使った事例として、下記があげられます。ゲームによるチームビルディングよりも、まとまった時間を確保したなかで行う必要があります。
(例1)新規事業創出ワークショップ
概ね4~5名のチームに分かれて、新規事業に関するディスカッションを行うものです。
あらかじめ期限は設けますが、特に制限を設けることなく、チーム内で自由に議論して一つの結論を見出します。
そして、チーム内で完成させた新規事業を発表します。その際、優秀なものを表彰してもよいでしょう。
(例2)職業体験ワークショップ
近隣の小中学校と連携し、子どもたちの職業体験ができるような企画をするのも、ワークショップの一環となります。
子どもたちの興味をそそり、職業に関心を向ける方法を考えることは、メンバーの仕事観や自社事業を見つめ直すきっかけになるかもしれません。
(例3)清掃活動
あらかじめ日程を定め、社内外の清掃を行うという取り組みも、ワークショップの一つといえるでしょう。環境美化の一環にもなりますし、社員が一丸となって清掃してきれいになった職場は気持ちよいものです
ここで大事になるのは、メンバー全員が強制されることなく主体的に行うという点です。
チームビルディングを行う際の注意点
チームビルディングを行う上での注意点にはどのようなものがあるでしょうか。
ここでは以下の3点を取り上げて説明します。
目標設定を無理なく行い、強制しないようにする
上述の通り、チームビルディングの目的はメンバーのコミュニケーションを活発化させ、パフォーマンスを向上させることです。
そのため、目指すべき目標設定に無理がないようにすることが重要であり、また、メンバーが主体的に取り組める目標かという点にも、注意する必要があります。
チームが機能しているかチームリーダーが確認する
度が過ぎた統率は問題ですが、かといってチームリーダーがメンバーに丸投げしてよいわけではありません。メンバーに裁量を与えすぎてしまうと、統率がとれず、あとで軌道修正することになるため、非効率的です。
チームビルディングは、チームとして効率的に機能させることも目的の一つです。
そのため、リーダーは常にチームに機能不全が起こっていないかを確認し、上手にコントロールしていくことが必要でしょう。
メンバーを適材適所に割り当てる
目標に向かって行動するのはチームであっても、その構成員は一人ひとりのメンバーになります。
メンバーは個性もあり、得手不得手もあるでしょう。一人ひとりのメンバーの特性に配慮せず、闇雲にタスクを与えてしまった場合、メンバーが自身の力を発揮できずに埋もれてしまう可能性があります。
メンバーの実力や能力にできるだけ沿い、仕事を割り当てることは、全体のパフォーマンス向上につなげるコツといえそうです。
チームビルディングを上手に活用していくことにより、従業員はのびのびと自分の力が発揮でき、自社の生産性の向上につながります。
一度、自社の組織の現状や問題点を見つめてみてもよいでしょう。もし自社に何らかの問題点があれば、今回紹介した手法を参考にしてみてはいかがでしょうか。