年代別転職理由の本音

更新日:2024年5月14日

世の中の転職者は、何をきっかけに転職を決めるのか。今回は、実際に1年以内に転職した人を対象に、「転職のきっかけ」と、実際に「面接で語る転職理由」を、それぞれ聞いてみました。年代別での「転職のきっかけ」と「面接で語る転職理由」それぞれのランキングも掲載しています。

サマリ

「転職のきっかけ」の1位、「面接で語る転職理由」の1位はともに「労働時間・環境が不満だった」でした。しかし、2位以下を比較してみると、「転職のきっかけ」は給与や仕事内容などに対する不満なのに対し、「面接で語る転職理由」は自身の経験・スキルを身につけるためのキャリアアップや新たな仕事への挑戦であることが多いようです。また、年代によっても「転職のきっかけ」・「面接で語る転職理由」は、それぞれのライフサイクルに応じて異なるようです。

1. 転職のきっかけランキング

a. 総合ランキング

まずは、1年以内に転職した人たちに聞いた「転職のきっかけ」のランキングについてご紹介します。

「転職のきっかけ」ランキングは、「労働時間・環境への不満」「給与が低い」といった労働条件での不満が上位を占めました。トップ10全体を見ると、「会社の将来性」「会社のビジョンや方向性」など、会社に対する不安や疑問、「仕事内容」に対する不満、「同僚・先輩・後輩」との人間関係の不和も挙げられています。 

一方で、「年収を上げたかった」「自身の働き方を見直したかった」といった自身のキャリアアップを意識した理由も挙げられていました。待遇とともに自身が成長できる環境というのも重要な要因であるようです。 

また、労働環境や条件、組織内の人間関係やコミュニケーションが、社員の満足度や離職率に大きな影響を及ぼしていることがわかります。また、仕事内容が自身の目指すキャリアと異なっていたり、モチベーションに対する影響が出ていたりします。 

こうした結果から、求人募集をしている企業は魅力的な労働環境の提示や適切な人事評価システムの導入など、多角的なアプローチが求められると言えるでしょう。 

順位 理由 割合
1 労働時間・環境が不満だった26.7%
2 給与が低かった26.1%
3 上司・経営者の仕事の仕方が気に入らなかった24.0%
3 年収を上げたかった23.1%
5 会社の将来に不安を感じた21.9%
6 自身の働き方を見直したかった18.2%
7 仕事が合わなかった17.9%
8 仕事内容が面白くなかった17.3%
9 同僚・先輩・後輩とうまくいかなかった16.7%
10 会社のビジョンや方向性に疑問を感じた14.9%
10 休日が少なかった14.9%
10 キャリアアップがしたかった14.9%
転職者の声
1位 労働時間・環境が不満だった
  • 「仕事内容が自分に合っておらず、ミスをして上司に怒られ、落ち込むといった繰り返しだったため環境を変えたかった」(20代 女性)
  • 「仕事の環境を変えて、自分自身のレベルを上げたかった」(20代 男性)
  • 「勤務時間も不規則で、上司も合わなかった。仕事内容も時間に追われている感じで自分に合わなかった」(20代 女性)
  • 「育休復帰後、仕事のシステムや人間関係が変わり、日曜も仕事があるため、ライフスタイルと合わなくなり転職した」(30代 女性)
2位 給与が低かった
  • 「自分より経験年数が少なく技術もない新人と自分が同じ給料だった」(20代 女性)
  • 「経営者の一方的な感情や思い込みで、給与額を大幅に下げられた」(40代 女性)
  • 「家から遠く、給料低く上がる見込みもない、個人的にはそこまで給料にこだわりはないのでもはやその会社である必要がない」(30代 男性)
  • 「リモートワークを含めた働き方を変えることで報酬を上げたい」(30代 男性)
  • 「慣れたと思ったら全く違う内容の仕事へ異動させられ、自身の処遇からこれ以上の給与アップが見込まれないため」(40代 男性)
3位
  • 「上司が話を聞かずに決めつけて、仕事内容を変えられ、放置された。  対応すると口ばかりで環境変わらず、残る意味を感じられなかったから」(40代 女性)
  • 「会社の経営が思わしくないのに、社長が何の策も講じず、長年勤務してきた社員の減俸や働き方を変えるよう言ってきたため」(50代 女性)
  • 「古い体質&忖度の業界であり、上層部がひどかったから」(30代 男性)
  • 「会社のビジョンが明確でなく、定型業務でコロナ禍でも職員の健康と安全について経営者が全く考えておらずに、フル出勤を命じた」(30代 男性)
  • 「新しい上司が知り合いを入社させいきなり役職付きにした。  実績を上げていたのに突然他部署に異動させられた、  経営者に誰も意見できなかった」(50代 男性)
キャリアアドバイザーの声

20代の「転職のきっかけ」トップ3となった「労働時間・環境が不満だった」「仕事が合わなかった」「キャリアアップしたかった」はよくある内容です。入社前に想定していた労働条件や仕事内容が違っていたからというのは、社会人経験も浅く入社前の情報確認不足やワークライフバランスを重視する近年の20の代転職のきっかけとしては、多い傾向があります。 

30代・40代になると結婚して家族ができる人も増え、「現在の給与では生活が厳しい」「今後の年収アップが難しそう」といった状況から、「給与が低かった」「年収を上げたかった」といった報酬面が転職理由になってくる人も出てきます。 

また、こうした労働条件や報酬などの定量面に加え、「上司・経営者の仕事の仕方が気に入らない」、「同僚・先輩・後輩とうまくいかない」職場のチームでの人間関係などの環境面や、「他の仕事に挑戦したかった」「キャリアアップしたかった」といったキャリアの定性面などは、年代に限らず挙げる人が少なくありません。 

転職のきっかけは1つだけの人はほとんどいません。いくつかが重なり、退職を決断するきっかけになることが多いようです。きっかけや理由は複数あったとしても、納得感のある転職をするためには、全て当てはまる企業を探し出そうとするのではなく、自分が一番何を変えたいのかを考え、それが叶うかどうかで企業を判断していくとよいでしょう。

b. 年代別で見た転職のきっかけランキング

続いては、年代別で見た場合、「転職のきっかけ」のランキングはどう変化するのか見てみましょう。

20代の転職のきっかけランキング

20代の退職理由1位は「労働時間・環境が不満だった」(26.6%)で総合ランキングと同じく、割合も同率の26.6%でした。

特徴的だったのは、2位の「仕事が合わなかった」(22.0%)、「キャリアアップしたかった」(22.0%)、4位の「自身の働き方を見直したかった」(21.1%)といった今後のキャリアアップを意識した理由がランクインしていたことです。現職では難しいと判断し、新たな環境を求めて転職を決意した人が少なくないのでしょう。

順位 理由 割合
1 労働時間・環境が不満だった26.6%
2 仕事が合わなかった22.0%
2 キャリアアップしたかった22.0%
4 給与が低かった21.1%
4 自身の働き方を見直したかった21.1%
30代の転職のきっかけランキング

30代の転職理由1位の「給与が低かった」(29.0%)、3位の「労働時間・環境が不満だった」(25.8%)、5位の「年収を上げたかった」(24.7%)と、報酬や労働時間・環境などの労働条件に対する不満が多いようです。また、「会社の将来に不安を感じた」(28.0%)「上司・経営者の仕事の仕方が気に入らなかった」(25.8%)と、会社の経営や仕事内容などに対する不満も高い結果となりました。

順位 理由 割合
1 給与が低かった29.0%
2 会社の将来に不安を感じた28.0%
3 労働時間・環境が不満だった25.8%
4 上司・経営者の仕事の仕方が気に入らなかった25.8%
5 年収を上げたかった24.7%
40代の転職のきっかけランキング

40代の転職理由1位は「労働時間・環境が不満だった」(36.1%)と労働条件に対する不満が他年代と比較してかなり高い数値が出ました。また、「会社の将来に不安を感じた」(30.6%)「上司・経営者の仕事の仕方が気に入らなかった」(29.2%)と、会社や上司・経営者への不満・不安、「給与が低かった」(29.2%)「年収を上げたかった」(27.8%)と報酬に対する不満・不安も多く見られました。

順位 理由 割合
1 労働時間・環境が不満だった36.1%
2 会社の将来に不安を感じた30.6%
3 給与が低かった29.2%
3 上司・経営者の仕事の仕方が気に入らなかった29.2%
5 年収を上げたかった27.8%
50代の転職のきっかけランキング

50代の転職理由1位は「上司・経営者の仕事の仕方が気に入らなかった」(34.5%)が圧倒的に高く、同年代となる上司・経営者とうまくいかなかったことが伺われます。2位以下は、「給与が低かった」(27.3%)「年収を上げたかった」(27.3%)「昇進・評価が不満だった」(18.2%)と、労働条件・報酬に対する不満が挙げられました。

順位 理由 割合
1 上司・経営者の仕事の仕方が気に入らなかった34.5%
2 給与が低かった27.3%
2 年収を上げたかった27.3%
4 昇進・評価が不満だった18.2%
5 労働時間・環境が不満だった16.4%
5 雇用形態に満足できなかった16.4%
5 仕事内容が面白くなかった16.4%

2. 面接で語る転職理由ランキング

a. 総合ランキング

「面接で語る転職理由」ランキングの1位は、「転職のきっかけ」ランキングと同様「労働時間・環境が不満だった」なのですが、その比率は「転職のきっかけ」の26.7%と比較すると、14.6%とかなり少なくなりました。 

「転職のきっかけ」の多くが労働条件や報酬への不満だったのに対し、「面接で語る転職理由」ランキングでは、「キャリアアップしたかった」「他の仕事に挑戦したかった」「仕事の領域を広げたかった」「自身の働き方を見直したかった」といった前向きな理由が半数を占めています。この結果から、転職者は転職のきっかけは不満だったとしても、自己分析をしたりキャリアについて改めて考えたり、色々な企業を見る中で、不満の奥にあった理想の姿や自分の本当にやりたかったことが見えてきて、それらを面接では伝えているということがあるのかもしれません。

転職活動においても、転職理由として不満や不安を述べるよりも、自身のキャリアやスキルアップを目指す理由を伝える方が応募先企業の担当者に好印象を与える効果があると言えるでしょう。 

順位 理由 割合
1 労働時間・環境が不満だった14.6%
2 キャリアアップしたかった14.3%
2 他の仕事に挑戦したかった14.3%
4 給与が低かった13.1%
5 仕事の領域を広げたかった11.9%
5 自身の働き方を見直したかった11.9%
7 年収を上げたかった11.6%
8 会社の将来に不安を感じた11.2%
9 仕事が合わなかった8.5%
10 上司・経営者の仕事の仕方が気に入らなかった8.2%

b. 年代別で見た転職理由ランキング

転職理由についても、年代別で見てみましょう。

20代の「転職理由」ランキング

20代の転職理由は、「他の仕事に挑戦したかった」(17.4%)「労働時間・環境が不満だった」(15.6%)「キャリアアップしたかった」(13.8%)「自身の働き方を見直したかった」(13.8%)「仕事の領域を広げたかった」(12.8%)と、自身のキャリアアップに対して非常に前向きな姿勢が感じられます。 

順位 理由 割合
1 他の仕事に挑戦したかった17.4%
2 労働時間・環境が不満だった15.6%
3 キャリアアップしたかった13.8%
3 自身の働き方を見直したかった13.8%
5 仕事の領域を広げたかった12.8%
30代の「転職理由」ランキング

30代の転職理由は、「キャリアアップしたかった」(18.3%)「他の仕事に挑戦したかった」(18.3%)が1位を占めるものの、3位・4位は「給与が低かった」(14.0%)「年収を上げたかった」(12.9%)「労働時間・環境が不満だった」(12.9%)と、労働環境や報酬に対する不満がランキングしました。 

順位 理由 割合
1 キャリアアップしたかった18.3%
1 他の仕事に挑戦したかった18.3%
3 給与が低かった14.0%
4 年収を上げたかった12.9%
4 労働時間・環境が不満だった12.9%
40代の「転職理由」ランキング

40代の転職理由では、キャリアアップを目指す「キャリアアップしたかった」(16.7%)「仕事の領域を広げたかった」(16.7%)といった内容は4位とトップからははずれます。上位を占めたのは、1位「会社の将来に不安を感じた」(20.8%)2位「給与が低かった」(19.4%)3位「労働時間・環境が不満だった」(18.1%)と、労働環境や報酬に対する不満となりました。 

順位 理由 割合
1 会社の将来に不安を感じた20.8%
2 給与が低かった19.4%
3 労働時間・環境が不満だった18.1%
4 キャリアアップしたかった16.7%
4 仕事の領域を広げたかった16.7%
4 自身の働き方を見直したかった16.7%
50代の「転職理由」ランキング

50代の転職理由は、1位「給与が低かった」(16.4%)2位「会社の経営方針・経営状況が変化した」(10.9%)「労働時間・環境が不満だった」(10.9%)「雇用形態に満足できなかった」(10.9%)「上司・経営者の仕事の仕方が気に入らなかった」(10.9%)と、不満のみが並びました。 

順位 理由 割合
1 給与が低かった16.4%
2 会社の経営方針・経営状況が変化した10.9%
2 労働時間・環境が不満だった10.9%
2 雇用形態に満足できなかった10.9%
2 上司・経営者の仕事の仕方が気に入らなかった10.9%

解説

転職理由は、本当に人それぞれで様々な理由があり、複合的なものであることがほとんどです。一見すると「労働時間に不満」でも、よくよくその方のお話を聞くと、実は「こういうことにチャレンジしたいのに時間がとれない」「今は家族との時間を優先にしたいものの、休日勤務が突発で発生したり、恒常的に深夜帯の稼働が発生している」など、理由は様々です。企業側も、そういった「転職で本当に実現したいこと、解消したいこと」が自社で叶うのか、希望とマッチするのかをみています。転職を考えたきっかけはどのようなことでも、本当に自分が得たいものが何なのかはしっかりと言語化することが重要です。何が叶えば自分が納得できる転職となるのかを知っておくことは、企業を調べる場面でも、面接の場でも、実際に入社するかどうかを考える場面でも重要となります。  

また、面接官とのコミュニケーションでは、何かを隠すよりはオープンに話したほうがミスマッチを防げる可能性が高くなりますが、伝え方には一定注意が必要です。企業も、必要な人材をみつけるために採用活動をしています。どういう方が自社にマッチするのかという目線を持っているため、企業の情報をよくみて、転職理由も含め自分がどのように貢献できるのかという視点でコミュニケーションをとるとよいでしょう。もしわからないことがあれば、第三者視点で信頼できる友人やキャリアアドバイザーに相談してみるというのもいいかもしれません。  

■解説者:株式会社リクルート HR統括編集長 藤井薫
1988年
リクルートに入社
『TECH B-ing』編集長、『Tech総研』編集長、『アントレ』編集長などを歴任。
2014年
リクルートワークス研究所Works兼務。
経済指標の推計手法設計や景気判断など、マクロ経済・金融領域における統計分析業務に携わる。
2016年
『リクナビNEXT』編集長就任
2019年
より現職。
著書に『働く喜び 未来のかたち 転職市場の最前線から「未来のはたらく」が見えてくる』(言視舎)がある。

調査概要

【調査方法】インターネットによるアンケート調査
【調査対象】20歳〜59歳の男女のうち、過去1年以内に転職経験がある正社員
【調査期間】2024年1月30日〜2024年2月2日
【有効回答数】329名